有史以来、人類と密接にかかわり文明や産業の発展に大きな役割を果たしてきた鉄。日本においてはかつての高度経済成長を支え、「産業の米」とまで呼ばれました。現代社会でも缶飲料やスチール家具、自動車など身近なところから、ビルや橋梁、船舶などまで、人々の暮らしと経済のためにはなくてはならない存在になっています。
そんな金属材料の代表格である鉄は、他の金属に比べて不純物の除去が容易であることから、役割を終えた後も回収・再生され、何度でも新たな製品としてよみがえることができます。そのリサイクル率はほぼ100%。それゆえ鉄は「リサイクルの優等生」として、古くから再生利用されてきました。
そうした循環の起点となる鉄スクラップの加工・販売を担うのが、山口県宇部市に本社を構える株式会社山原商会です。「持続可能な資源循環型社会への貢献」を最大の目的として掲げる同社の、サステナブルな取り組みをご紹介します。
資源の循環と脱炭素への貢献に期待
金属全般のリサイクルを手掛ける山原商会ですが、主力となるのは鉄。工場やプラントの設備更新、あるいは建物の解体で発生する配管や鉄筋などの鉄スクラップを買い取り、切断や破砕、プレスといった加工を経て、県内や近県の鉄鋼メーカーに納品しています。
鉄をつくる方法、いわゆる製鉄には大きく分けて、鉄鉱石を原料とした高炉法と鉄スクラップを主原料とする電炉法の2つがあります。世界の生産量の比率は高炉法が7割で電炉法が3割程度と言われていますが、近年、電炉法による生産量が増えています。
その背景にあるのは環境問題。CO2の排出量が4分の1に抑えられる電炉法による製鉄に、温暖化対策としても注目されています。つまり、「循環型社会」の形成と「脱炭素社会」の実現の両面から、鉄スクラップのリサイクルへの期待が高まっています。
山原 一紀氏
株式会社山原商会 代表取締役社長
経営を引き継いでまず決意したのは、「スクラップ屋らしくないスクラップ屋になること」でした。持続可能な社会の実現には資源のリサイクルが不可欠であることをより広く知ってもらいたい、そのためには業界のイメージアップも重要です。社員と共に改善を重ねながら、社会から求められる企業をめざしたいと考えています。