特集 - ゼロからわかるマイニング
図解! マイニングの基礎知識
「鉱山」をなんとなくイメージできても、実際に鉱山や採掘現場を見る機会はなく、知らないことも多いだろう。
鉱物はどんな国で、どのように掘り出されて製品の生産に活用されているのか。ここではマイニングの基礎知識を紹介していく。
文/斉藤俊明 監修:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
人々の暮らしに役立つ鉱物資源を掘り出す
鉱山とは、簡単にいうなら「鉱石」を掘る場所だ。いわゆる自然の山だけでなく、平らな土地であっても鉱石を採掘する場であれば鉱山と呼ばれる。
それではそもそも鉱石とは何か? 鉱石は、人々の暮らしや産業に役立つ価値を持った金属に富む鉱物を含み、掘って経済的に成り立つことが可能な岩石のこと。たとえば金を含む金鉱石、鉄を含む鉄鉱石はもちろんのこと、銀、銅、すず、亜鉛、アルミニウムや、近年話題のレアメタル(マンガン、ニッケルなど)を含むものも鉱石と呼ばれる。
鉱石が分布する鉱床から鉱石を掘り出す作業が「採掘」だ。銅の場合、採掘対象となる鉱石中の銅はわずか0.3~1%ほど。掘り出した鉱石には、有用な鉱物を分離する「選鉱」という作業が必要になる。選鉱し、有用な鉱物が集められたものを「精鉱」と呼び、この精鉱をトラックや鉄道、パイプライン、船などで製錬所まで輸送したあと、不要な元素を取り除く「製錬」という工程がある。それを経て金属がつくられ、初めて建築物や乗り物からスマートフォンまで、身近に使用されているさまざまな製品の素材や電線などのインフラに活用される。
そして、鉱石を掘る方法には、大きく分けて「露天掘り」と「坑内掘り」がある(右図参照)。かつては人力に頼る手掘りが主流だったが、技術が発達した近代以降は機械を使った大規模な採掘が一般的になった。技術の進歩が、鉱石の採掘に大きなインパクトを与えたといえる。さらに近年では、海底熱水鉱床をはじめとする海底資源を採掘するための技術開発やパイロット試験も行われている。
一方、世界の主要鉱業国を見ていくと、国によって特徴があり、中国は鉛や亜鉛、チリは銅、オーストラリアは鉄やボーキサイト、ウランの産出が多い。中国ではマンガン、タングステンといったレアメタルが多いのも特徴だ。また、近年注目度が高まっているのが、ザンビア、南アフリカといったアフリカ諸国。とりわけザンビアでは銅が国の経済を支えており、日立建機も現地に製造・販売・サービス拠点を設置するなど力を入れている。
近年のマイニング業界では、持続可能な開発・利用法が模索されている。閉山後のリハビリテーション(緑化・安定化)や観光スポットとしての活用など、周辺の生活環境に与える悪影響を最小化し、新たな価値を生み出すための取り組みが行われている。また、採掘の効率や生産性、作業の安全性を向上させるため、鉱山ではたらく機械の無人化や集中管理システムによる運行も進み、日々進化を遂げている。