特集 - 若手社員ディスカッション SDGsで未来をつくる
2030年を担う若い世代にとって、社会課題や環境問題は、当事者意識を持って取り組まなければならない重要なテーマだ。
ではSDGs達成のために、自身の仕事を通してどんな貢献ができるのだろう―。
日立建機の20代~30代の若手社員6名が集まり、語り合った。
冨髙隼一
顧客ソリューション本部
ソリューション事業センタ 戦略企画部
2018年入社
大和田将史
営業本部 製品流通企画部
2004年入社
チェサー・ジェイク・リチャード
営業本部 企画部
2018年入社
寺田莉紗
ライフサイクルサポート本部 カスタマーサポート事業部
販売促進部 アフリカ・中東・インドグループ
2015年入社
谷垣絢太
パワー・情報制御プラットフォーム事業部
開発設計センタ コンポーネントグループ
2012年入社
福島脩
開発・生産統括本部 生産・調達本部
生産技術センタ 工場IoT 推進プロジェクト
2014年入社
SDGsと自分たちのシゴト
ジェイク 私は日立建機オーストラリアの営業・エンジニアと日本本社の間で、問題解決や情報共有のファシリテーションにあたっています。個人的に関心を持っているのが気候変動問題です。実はオーストラリアは先進国でありながら、シドニー以外では日本とは違い排ガス規制がないのです。日立建機の環境性能に優れた油圧ショベルを、この土地でも魅力を感じてもらうにはどうしたらいいか、普段の業務で考えています。
冨髙 私はICT建機の海外展開の際の販促や教育体制の企画、構築といった仕事をしています。建設業界全体では、人手不足や若手人材の確保、生産性の向上という課題がよくいわれますが、省人化を可能にするICT建機にはさまざまな可能性があります。女性の働きやすさの向上や環境負荷の低減など、さまざまに貢献できることがありますね。
寺田 私は南アフリカ地域での部品サービスの売り上げ拡大支援に取り組んでいます。仕事の中で社会貢献できている実感がなかなか持てなかったのですが、アフターサポート体制を向上させることは、機械を長く使っていただき良好なパフォーマンスを維持できるという点でSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に貢献しているんじゃないかと思いました。
谷垣 確かに当社の場合、目標12に貢献する部分は大きいですね。私は電動ショベルやハイブリッド油圧ショベルの開発に携わっています。これらの製品開発は目標13に当たるのですが、開発を進める上で「ライフサイクル」は1つの重要なキーワードになっていて、寺田さんのアフターサポートと同じくSDGsの目標12も意識しています。
福島 私の場合、普段は工場の生産過程での省エネルギー推進・CO2排出削減に関わっています。SDGs の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」に関する取り組みです。ただ、製品を売った後まではそれほど意識していませんでした。皆さんの発言を聞いていてCO2排出削減も、つくる責任だけでなく「つかう責任」の部分が重要だというのに気付きました。
大和田 なるほど。自分は海外での中古車拡販の仕事をしていますが、SDGsについてあまり意識していませんでした。でも確かにICT建機や電動ショベルといった最新技術とSDGsの関係を知っておくことは、リセールバリューにつながるかもしれませんね。
日立建機がやるべきこと
大和田 日立建機の強みは、バリューチェーン全体に一気通貫で取り組めることですが、SDGsの取り組みは現時点では部門ごとにとどまっているように思います。先ほど話題になったように、機械が生まれてから役目を終えるまで、一体で取り組めるよう部門間連携の流れをつくることが必要だと思います。
寺田 同感です。ただSDGsに限らず、全社で一体的に取り組むべきだと分かっていながら、経営規模が大きいために組織が縦割りにならざるを得ない面はありますね。
谷垣 僕はその意味でSDGsが全社的な共通目標としてあるのはいいことだと思いました。
冨髙 確かにSDGsはテーマが非常に大きいので、全社的に取り組むゴールにしやすいかもしれません。他部門を巻き込む際も、SDGsという共通目標があった方がまとまりやすくなると思うので、上手に活用したいですね。
谷垣 われわれが開発している電動ショベルやハイブリッド油圧ショベルでは、電動システム搭載のため、従来にない運用が必要となります。そのため、関係部門間の協力が不可欠です。SDGsという大きな共通目標に向かい全社的な理解が生まれれば、こうした新しい取り組みも加速していくのではないかと期待しています。
寺田 自分たちがほかの部門を巻き込むという発想だけでなく、「ほかの部門が自分たちをどう見ているのか」「どんな連携を求めているのか」を意識しながら日々の仕事をしたいと思いました。開発担当者がライフサイクルを視野に入れビジネスを考えてくれている。だとしたら私自身は日頃、ほかの部門のことをちゃんと考えられているだろうかと、今回反省しました。
冨髙 全社的な取り組みにする上では、新たな評価軸を取り入れることも必要ではないでしょうか? 当社の機械を導入した場合、そのライフサイクル全体でどれだけお客さまの「生産性向上」と「コスト削減」ができるかが注目されます。それだけでなく「環境への貢献度」「SDGsへの貢献度」も評価してお客さまにお伝えする。当然全社的な取り組みになりますし、明快な評価軸がつくれれば、メディアなどを通じてアピールしやくなるかもしれません。
福島 例えば新規の投資案件に対し、いくら投資したら何年で回収できるのかというだけでなく、どれだけCO2削減に貢献できるのかも金銭的な価値に置き換えて評価する。カーボンプライシングというんですが、こういう指標を本格的に取り入れていけば環境投資もされやすくなっていくのかなと。環境以外でも、パートナーシップとか働き方とかジェンダー平等なども数値化して投資計算できるようにする。女性が働きやすい職場にするための投資をすると、ジェンダー平等に対する投資効果が年間でどのぐらい生まれるとか、そういう幅広い取り組みが可能になると思います。
ジェイク 確かに評価軸は重要ですね。個人的にも今お話に出た「ジェンダー平等」はぜひもっと取り組むべきだと思います。日立建機としてSDGsに対してさまざまな努力をしているし、成果もたくさん出ています。ただ、本社をみると、女性社員の方々がまだまだ少ない。役職が上にいけばいくほど少ないですよね。建機業界は世界的にみても女性が少ない傾向はあるのですが、皆さんの意見を聞いて、日立建機なら「ジェンダー平等」についてももっと頑張れるはずと感じました。女性が働きやすく、リーダーになれる環境をつくってほしい。
冨髙 評価軸や数値化の仕組みを積極的に取り入れれば、もっと幅広くSDGsに取り組みやすくなると思います。今後も全社的にSDGsに真摯に取り組んで、「日本でSDGsに取り組んでいる企業を挙げるとすればどこ?」と聞かれたら真っ先に「日立建機」と言われるように。2030年に向けてそんな企業になれたら理想的ですね。
パートナーシップでSDGsを加速
福島 普段取り組んでいる工場の省エネ化でいうと、例えば当社にはショベルの稼働状況をリアルタイムで把握できるシステムがありますが、生産設備には導入できていません。ショベルの技術を活用して、稼働状況の見える化や故障予知などができたら、CO2の排出量もおのずと減るので、そういうスマート工場化も検討できないかと考えました。それに、SDGsはもっと日常的な場面でも活用できると思います。SDGsへの理解が全社に浸透すれば、空調や照明の省エネも地球環境だけでなく、自社の持続可能性につなげて考えられます。まずはそういった「自分ごと化」が重要ですね。
冨髙 自分ごと化した上で、社外との関係に活用したいです。今、欧州やオーストラリアでのICT建機の展開を企画しているのですが、現段階ではICT建機がどうSDGsにつながるかは明確にできていません。生産性向上だけでなく、CO2削減をはじめSDGs目標達成にこれほど貢献できるのだとぜひアピールすべきですね。お客さまに対し、よりポジティブな動機付けを与えられるような販売促進策やマーケティングをめざしたい。
寺田 アフターサポート体制の向上を通じて、当社の機械をより長く使っていただくとともに、「お客さまが“つかう責任” を果たすために、メーカーができること」を今後考えていきたいです。そのためには目標17のパートナーシップの推進が重要です。私の担当する南アフリカでは、エンドユーザーとの間に地域統括会社や代理店が関わります。各拠点とパートナーシップをしっかり築いてはじめて、エンドユーザーを意識した活動ができると思うので。
大和田 私は今まで「中古車を仕入れて、売る」という部分に注力してきたので、もっと各部門とのつながり、特に売った後の使用段階でのサポートなどを意識して仕事しないといけないと痛感しました。中古車として機械を長く使っていただき、そこから得られる収益を最大化していくことが主要命題ですが、それを達成するためには買い手のことを深く考える必要があります。販売先の利用状況を詳しく分析し、より良い提案をする。サービス部門と協業して、サポート体制もしっかりと構築していかなければいけないですね。
ジェイク そうですね。最初にも言いましたが、規制がないオーストラリアでは厳しい排ガス規制をクリアした日立建機の製品を買わない人が多い―。
谷垣 SDGsの目標にもあるように、世界では低炭素化が求められていて、電動ショベルやハイブリッド油圧ショベルのニーズは高まりつつあります。現状では、リチウムイオンバッテリーなどの電動部品の価格の高さが普及のネックになっているんです。
ジェイク そうした中で、お客さまとのコミュニケーションは非常に重要だと考えています。パートナーシップを推進することで日立建機ならではのバリューを提供し、現地経済にも好循環を与えていきたいと思いました。
谷垣 開発を進める上でも、ライフサイクルを考えたビジネスモデルが重要だと思っています。例えば電動部品が故障したときにすぐ交換できるサポート体制を整えるなどですね。それには、いろいろな部門の方の協力が不可欠なので、その意味でも他部門との連携をますます意識していきたいです。