拝啓・現場小町 - 興津螺旋株式会社 森田知世さん
各方面の現場でイキイキと輝く活躍する女性にその醍醐味や将来の目標などを伺いました。
文/編集部 写真/三川ゆき江
工程をマスターして、もっと作業の精度を上げるのが目標です
静岡県清水市生まれ。静岡大学工学部物質工学科を卒業して2014年に興津螺旋に入社。住宅メーカーにもねじを納品する同社。「この家に私のねじが使われてる!」と感じる瞬間が幸せ。
自分が作ったものが目に見えるカタチに
創業80周年を迎えた静岡県静岡市の興津螺旋は、日本でトップクラスの生産量を誇るねじメーカーだ。同社には、製造部に6人、管理部に2人、男性と肩を並べて働く「ねじガール」がいる。森田知世さんも製造部で日々ねじの製作に当たる「ねじガール」の一人。
「実は大学では化学を専攻していました。でも化学って、何かと何かを合わせても、見た目には違いがわからないものになるんです(笑)。もっと新しい何かを作る世界に進みたいと、就職時に“ものづくり” の業界を志望しました」。
興津螺旋の就職説明会に行ったのは「実家から通いやすいから」。当時、同社ではすでに製造の現場で女性が働いていたが、それは知らなかったという。「ただ、とてもアットホームな雰囲気の中、みんなが楽しそうに働いているのが印象的でした」(森田さん)。入社後は自ら製造現場を希望した。
ねじは、コイル線材を機械にセットし、ヘッダー加工で頭部を成形。さらにねじ山を形成する転造加工を行い、必要があれば熱処理やメッキ加工した後、検査を経て出荷するのが一連の基本フロー。森田さんは主に転造加工を担う。また、ピンチポインターと呼ばれる機械で、ねじ部先端を加工する工程や、円形の頭部を六角形に加工するトリーマーの工程も任されている。「最初は0.1mmと0.2mmの差が目で見てもわからず、機械の調整にも苦労しましたが、経験を積んで任される作業が増えました」と森田さんはうれしそうに笑った。「転造加工は作る人によって尖っていたり丸みを帯びていたり、ねじの表情が変わるんです。なかなか自分のお気に入りのカタチにならずモヤモヤすることも多いですけど(笑)」。その心意気に、ねじガールの名にふさわしい志の高さも垣間見えた。
製造現場の女性の増加によって、女性にとって働きやすい環境づくりも進んだ。力が弱くても使いやすいメガネレンチ、20kg以上のコンテナが運びやすくなるライトリフター、さらにソファを備えた女性用トイレも整った。同社の柿澤宏一社長は「ねじガールは信念を持って入社してきた女性ばかり。良いものづくりのために積極的に提案をしてくれます。女性の視点が加わったことで、いろいろな気付きがありました。女性にとって安全で快適な環境は、男性にとっても同じこと。結果、全社員にとっての環境改善につながります」と語る。
森田さんの夢を尋ねると「今、担当している工程を完全にマスターし、作業の精度をさらに上げること」とストイックな答えが返ってきた。ものづくりの現場の厳しさを見た思いがした。
「工場見学に来た子どもたちに作業をみせて『すごい』って言われるのが一番うれしい(笑)」と森田さん。
週末のライブがリフレッシュ方法
ロックが大好きで、静岡、浜松、名古屋などへライブに出かけるのが一番のリフレッシュ。週末はほぼライブだ。好きなアーティストはsumikaやCRAZY HiTMANなど。「ここでもお酒は欠かせませんね(笑)」(森田さん)。
製造部
青木剛さん
仕事ぶりは真面目で熱心。納期もしっかり守ってくれる優秀な後輩です。特に、ピンチポインターは森田しか担当していない重要な作業。素顔は明るい酒豪で、飲み会ではいつも中心的な存在ですね(笑)。