拝啓・現場小町 - 興津螺旋株式会社 森田知世さん
各方面の現場でイキイキと輝く活躍する女性にその醍醐味や将来の目標などを伺いました。
文/編集部 写真/三川ゆき江
南三陸町産のエネルギー資源の活用で、“自給自足”のまちづくりをめざします
千葉県生まれ。宇都宮大学農学部、東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程で森林科学を専攻。卒業後、大手飲食チェーンを経て、2018年12月から南三陸町地域おこし協力隊員に就任。
復興事業以降の産業創出に貢献したい
震災から約9年。訪れた宮城県南三陸町の湾岸部には新しい建物が多く、いまだ至るところで大規模な工事が続いていた。1軒のログハウスの前で手を振って迎えてくれたのが、今回の主人公、佐野 薫さんだ。大学で林業や木材業を学んでいた佐野さんは、「地域おこし協力隊(総務省)」の「エコタウン推進員」として、2018年12月から南三陸に移住。現在は、エコタウン推進員を務めながら、合同会社MMRの非常勤職員として、町内産の森林資源をペレットとして活用する仕組みづくりにあたっている。
「地球温暖化対策が叫ばれるなか、木質エネルギーに注目が集まっています。低質の木材が薪やチップ、ペレットとしてエネルギー活用されますが、特にペレットは形状、含水率が一定で扱いやすく、輸送もしやすい。さらに保存もしやすいなど、メリットの多い燃料なんです」(佐野さん)
籍を置く合同会社MMRは、地元の林業会社と土木会社と運送会社で成り立つ合同会社。地域の森林を切るのは林業会社、それを運ぶのは運送会社。ペレットストーブやボイラーの設置、メンテナンスは土木会社が担当する。「製造から普及まで、一貫して町内業者でできるのが大きな特長ですね。震災復興の土木事業が終わりに向かい、公共事業が少なくなるなかで、仕事の確保は死活問題。新しい仕事を地域につくらなくてはいけない。そこに何か少しでも貢献したいと考えています」。現在使っているペレットは他県産。「『地域おこし協力隊』の3年間の任期で、南三陸町内での生産・運用体制を整えることが私に課せられた使命です」
現在、ペレットストーブやボイラーは、役所や保育園、病院など公共施設を中心に普及しつつある。「保育園ではお子さんたちにペレットがつくる火が喜ばれているようです。大人の方にも『火がある生活っていいね』と言っていただけるとうれしいですし、焼き芋がつくれるタイプのストーブもあり、プラスアルファの楽しみ方も広がっています」
取材中、合同会社MMR代表のうちの2人が加わり、明るくテンポのよい会話が繰り広げられた。共に働く2人は「彼女が来てから急速に事業が動き始めたんです」と話す。「この地域の人は震災以降、よそから来た人を積極的に受け入れるようになったそうです。地域のイベントに参加したり、町の誰かをお手伝いしているのをきちんと見たりしてくれる。そんな町の人たちに助けられています」(佐野さん)。将来的にも南三陸を拠点に森林事業に関わりたいと今後を語ってくれた。
イベント大好きな町内で地域の人とも交流
休日は大好きな料理を延々とつくったり、コンサートや美術鑑賞でリフレッシュしたりするという佐野さんだが、実は地域イベントに参加することも多いそう。「毎週何らかのイベントがあるんですよ(笑)」。写真は2019年の地域運動会。手前が佐野さん。
合同会社MMR 山藤運輸
佐藤克哉さん
頼むと何でもパーフェクトにこなす。人の話を丁寧に聞き、理解してアウトプットするのがとても上手です。専門的な知識もあるから、私たちの思いも町のエネルギーのあり方も見える化してくれます。