特集 - 専門家に聞いた! 5G5つのギモン
私たちの生活を一変させる技術として期待が膨らむ5G。
4Gとの違いや、気をつけるべきポイントなど、本格的な普及を前に知っておきたい基本的な知識から心構えを亀井氏に取材した。
A. 超高速・大容量・低遅延 多数同時接続がカギ
5Gのメリットとして筆頭に挙げられるのは、4Gと比較して「10倍以上の超高速・大容量」や「10分の1となる超低遅延」です。一般のユーザーがスマートフォンで動画を楽しんだりする分には、これほどのスペックが絶対に必要というわけではありません。しかし、つながる先が「人」ではなく「機械」となれば、5Gのハイスペックが大いに生かされます。
前の記事で紹介したMRグラスや高性能なスマートフォンのように、5G時代には各種センサーから取り込んだ情報をクラウド上でやりとりするデバイスが増えていきます。膨大な量のデータが行き来するため、通信はより大容量で、高速であるほど望ましいのです。
もうひとつ、5Gの大きな特徴が「多数同時接続」。1万台程度の端末が同時にアクセスできます。これも、一般ユーザーの利用というよりは、あらゆる場所に埋め込まれたセンサーから通信でデータを収集するという用途を想定していますが、スポーツ観戦やライブ会場などでも力を発揮。別視点から撮影した映像をユーザーの手元のデバイスに配信することで、その場の価値をより高めるといった取り組みが注目されています。
A. 大容量プランがお得に 端末はますます高額化
日本に先駆けて5Gがスタートした韓国で、いち早く5Gプランに移行したユーザーは、莫大なデータ通信を行うヘビーユーザーでした。彼らが5Gに乗り換えた理由は、5Gでしかできないサービスがほしいからではなく、料金が安いから。通信キャリアもそれを狙っているため、5Gがスタートしてしばらくは、ヘビーユーザーをターゲットにした大容量プランがプッシュされていくでしょう。ライトユーザーには5Gに移行する魅力が乏しく思えるかもしれませんが、将来的には多様なサービスやプランが出揃うはず。また、5G時代には端末から「アップロード」されるデータ量が増えるため、自分ではあまりデータ通信を使わないと思っていても、それなりのデータ量が必要になってくるかもしれません。
昨今は、10万円を超えるスマートフォンも珍しくありませんが、ハイスペック化が進む中、端末はますます高額になるでしょう。もっとも、外部ディスプレイやプロジェクションキーボードと組み合わせれば、いまやスマートフォンはノートPCと同等の仕事をしてくれます。一度「携帯電話」という捉え方をリセットすることも必要なのではないでしょうか。
A. 「専門性」を持つことが組織の中で求められる
テレワークが主流になる時代は、もうすぐそこまで来ています。ナスダックに上場している米国の不動産仲介会社eXp Realtyの場合、従業員の大半は、営業マンや建設業者、不動産エージェントといった「現場のプロ」。彼らはそれぞれの持ち場で活動し、バーチャルな空間でアバターを操作して会議や研修を行っています。こうした働き方はこれからのトレンドになるでしょう。
組織のあり方が、プロ同士がコラボレートしてひとつの目標を達成する「プロジェクトチーム制」に移行するなか、専門性を持たない「社内の調整役」のようなホワイトカラーは、次第にその存在意義を問われるようになっていきます。「会社に行くのが仕事」のような働き方は、もはや成立しない時代になったのです。
A. 持ち運べる基地局で手軽に5G環境を構築
総務省は、大手通信キャリア各社に5Gの電波を割り当てる際に、国土の隅々までエリアが構築されるような条件を課しています。
また、5Gでは特定のエリアや建物内という限定的な環境において、誰もが「通信事業者になれる」という仕組みも用意しています。この仕組みは「ローカル5G」と呼ばれ、工場、商業施設、病院、オフィス、マンションなどでの活用が見込まれています。
さまざまな現場で手軽に5G環境を構築できるように、「持ち運びできる基地局」も、通信キャリア各社が開発を急いでいるところです。これらが普及すれば、リモートワークはさらに加速することになるでしょう。どこからでも働けるようになる分、現場で作業をする人々の付加価値は高まっていきます。
A. プライバシーは「自分で守る」時代
スマートフォン・PCの指紋認証やフェイスロックに抵抗を感じる人も減ってきていると思われ、生体情報を事業者に提供する心理的負荷が以前と比べると格段に下がっています。生体情報に限らず、ネットバンキングを経由した資産に関する情報、SNSへの書き込み、位置情報など、膨大なデータがあなたの端末から事業者の手に渡っています。こうしたパーソナルデータは、従来は「知らないうちに抜き取られているもの」というイメージがありましたが、個人情報保護の厳格化やパーソナルデータの活用が進む昨今、データの管理はユーザー本人に委ねられることになります。誰に対して、どういう目的ならパーソナルデータを提供してもいいのか、一人ひとりが自ら理解を深め、判断しなければならない時代なのです。