医者が教える働くカラダにいい食べ方 - Vol.01 “糖質”を制する者は“健康”を制す
暑い夏も寒い冬も屋外で作業をされる方、建設機械やダンプトラックを運転される方、一年中パソコンに向かって作業をされる方──。
さまざまな仕事場で忙しく働かれているみなさまが毎日最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、“カラダにいい食べ方”をお伝えしていく新連載です。
構成・文/編集部 イラスト/丹下京子
Profile
AGE 牧田クリニック院長/医学博士
牧田善二先生
1979年、北海道大学医学部卒業。米国ロックフェラー大学などで、老化(シワ、シミ、たるみ)の原因として注目されるAGEの研究を行う。96年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授。03年に東京、銀座でクリニックを開業し、延べ20万人以上を診る。80万部突破の『医者が教える食事術最強の教科書』(ダイヤモンド社)など著書多数。
Vol.01 “糖質”を制する者は“健康”を制す
丼ものやラーメンをモリモリ食べて、仕事の合間に甘い缶コーヒーをゴクリ。忙しいときは甘い菓子パンでおなかを満たす。そんな方も少なくないのではないでしょうか。ただ、未来の健康を作るのは、日々のその食生活です。
AGE牧田クリニック院長の牧田善二先生は「血糖値をコントロールすることは健やかな毎日の基本」と強く説きます。
では、なぜ血糖値をコントロールする必要があるのでしょうか。第一に、血糖値が高い状態だと、肥満になりやすくなります。肥満は糖尿病をはじめ、脳疾患や心疾患、がん、認知症にもつながりかねません。第二に、血糖値が高い状態では免疫力が低下しやすく、また「AGE」という悪玉物質がカラダの中で作られて老化を促進するという研究結果があります。第三に、血糖値が安定していないと、イライラ、眠気、倦怠感などの不快症状を招きます。
血糖値と結びついているのが「糖質」。糖質はごはんやパン、麺類、果物、ケーキ、清涼飲料水などに多く含まれます。
「特に注意すべきは、血糖値を急激に上昇させる『血糖値スパイク』の状態。加糖の缶コーヒーや清涼飲料水など、急激に血糖値を上げる「液体」は要注意です。急激な血糖値の変動がカラダにも仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします」(牧田先生)。
血糖値が急上昇すると、カラダは血糖値を急速に下げようとします。そして、血糖値が下がるとまた糖質を摂りたくなる…という状態が「糖質中毒」。そのメカニズムを下図で解説します。
あなたは大丈夫? 「糖質中毒」チェックリスト
1. 朝食をしっかり食べたのに、昼食前に空腹感をおぼえる | はい・いいえ |
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2. ジャンクフードや甘い物を食べ始めるとやめるのが難しい | はい・いいえ |
3. 食後でも満足感を時々感じないことがある | はい・いいえ |
4. 食べ物を見たり、匂いをかいだりすると、食べたくなる | はい・いいえ |
5. おなかがすいていないのに、夕食後も食べたくなることがある | はい・いいえ |
6. どうしても夜食を食べたくなる | はい・いいえ |
7. 食べ過ぎた後、何かだるい感じがする | はい・いいえ |
8. 昼食後、何となく疲れや空腹感を感じる | はい・いいえ |
9. おなかがいっぱいなのに食べ続けてしまうことがある | はい・いいえ |
10.ダイエットして、リバウンドした経験がある | はい・いいえ |
「はい」はいくつありましたか?
0~2個→「中毒」ではない
3~4個→軽い「中毒」
5~7個→中等度の「中毒」
8~10個→ひどい「中毒」
糖質のメカニズム
─「糖質中毒」はこうして起こる─
血糖値コントロールのためのポイント
Point01 過剰な糖質は“太る原因”と心得よ
摂取した糖質は、消化酵素によってブドウ糖や果糖に分解され、血液中に放出されます。糖質を摂るとすい臓からインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖をグリコーゲンに変え、肝臓や筋肉の細胞に取り込みます。しかし、グリコーゲンとして細胞内に取り込める量には限りがあり、余ったブドウ糖は中性脂肪にかたちを変え、脂肪細胞に取り込まれ、肥満へと導くのです。
カロリーは気にしないでOK!
「カロリー制限は苦労の割には痩せません」と牧田先生。「消費カロリーより摂取カロリーを減らせば痩せる」が定説ですが、脂肪を作る主な原因は過剰な糖質摂取。糖質をコントロールすることが痩せる近道です。
脂肪とコレステロールはOK!
脂肪とコレステロールも気にしないで大丈夫。「脂肪は36兆個ある細胞膜を作るのに必要で、不足気味。食べすぎても便として出てしまう。コレステロールも食事が原因になるのはたった2割程度。食事で大幅な改善は望めません」
フルーツは要注意
ビタミンやミネラルが豊富なフルーツですが、実は糖質もたっぷり。しかも、エネルギー源として使われるブドウ糖ではなく、すぐに脂肪に変えて貯蔵される果糖が豊富なため、太りやすい食べものでもあるのです。
Point02 “ちょこちょこ食べ”をする
基本は1日3食といわれていますが、実は血糖値の観点からいうと5~6食に分ける方がさらに理想的です。「空腹時に糖質を摂取すると、血糖値は急速に上昇します。これを避けるためには、空腹感を感じたらちょこちょこ食べましょう」。ただし、1日に食べる食品の分量は増やさないように。少しずつ、ゆっくり食べましょう。
Point03 運動は「食後すぐ」が効果的
糖質摂取後の血糖値の上昇を抑えるには、食後すぐの運動が効果的です。「『食後は消化のためにゆっくり休め』といわれますが、休息が必要なほどの量を食べることが問題。空腹時の運動も、その後のドカ食いにつながりがちです」。ウォーキングや、職場でのスクワットやストレッチなどでも、血糖値上昇を抑えられます。
明日からこれだけやってみませんか!?
「加糖缶コーヒー」「清涼飲料水」「菓子パン」を控える
糖質を多く含む食品の中でも、特に気をつけたいのが、現場でのリフレッシュ時間に飲みがちな加糖の缶コーヒーや清涼飲料水などの飲料です。ごはんやパンなどの固形物は、胃での消化に時間がかかりますが、液体の場合は胃を通り抜け、あっという間に小腸に吸収されるため、血糖値も一気に急上昇と急下降のカーブを描きます。スポーツ飲料やプロテイン飲料などカラダに良さそうな飲み物も、大量の糖質が含まれていることが多いので注意しましょう。
また、間食として気軽に食べてしまいがちな甘い菓子パンも、血糖値を急速に上げる糖質のかたまり。さらに菓子パンには防腐剤や添加物が含まれていることが多く、摂りすぎるとカラダの正しい働きを阻害しかねません。小腹が空いたときには、ナッツやチーズ、魚の缶詰などがおすすめ。ナッツ類などはデスクの引き出しにも常備できます。
この新連載では、現場やオフィスで働く方々を「食べ方のアドバイス」で応援します。