Solution Linkage 通信簿 - 【ICT施工ソリューション編】水谷建設株式会社[三重県桑名市]
【ICT施工ソリューション編】水谷建設株式会社[三重県桑名市]
日立建機のICT・IoTソリューション「Solution Linkage」を導入したことで現場はどう変わったか、経営にどんな影響を与えたか――。
お客さまの評価をレポートする。
取材・文/二村高史 撮影/関根則夫
今回のポイント
ドローンやGNSSの活用で測量にかかる時間を大幅に削減
Wi-Fiを利用することで山間部でもICT施工が可能に
工程ごとのサポートにより建設会社の技術力向上に貢献
水谷建設は、600台以上の建設機械を所有し、グローバルに工事を手がける建設会社だ。ICT施工にも力を入れており、現在ICT仕様の建設機械は48台。うち油圧ショベルが37台である。
「操作やメンテナンスの利便性を考えて、建設機械ごとにメーカーを統一する方針をとっており、現在100台以上ある油圧ショベルは、ほとんどが日立建機の製品です」と、常務執行役員で事業本部機械部長の一村敏金氏は説明する。
現在、水谷建設が山口県内で施工しているメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設工事では、そうした経緯から日立建機のICT建機が採用された。「 この工事では、約350万㎡の広大な山間部の土地を対象に、17カ月という比較的短い工期で切土、盛土、整地工事を完了させなければなりません。ICT施工でなければ、短期間でこれだけの大規模工事を完了させることはできないでしょう」と語るのは、事業本部工事部長の名和太一氏だ。
現場には30台以上の建設機械が投入され、うちICT施工には、ZX225USR(マシンガイダンス)、ZX200X(マシンコントロール)などの油圧ショベル4台、ブルドーザー1台が使用されている。 実は、この現場では、沢地や窪地などでネットワークにつながらない場所があるために、通信環境を改善・拡張するソリューションとして、Solution Linkage Wi-Fiを導入している。
ICT施工の導入による最大の改善として一村氏が強調するのは、測量の待ち時間が少なくなったことである。
「 以前は、工事前の測量や丁張に時間や手間がかかっていただけでなく、工事が進んで小段を設ける際などの測量に1、2時間ほどかかり、そのたびに作業が止まっていました」
こうした問題に対し、ICT施工ならば、測量にかかる人員を減らせるだけでなく、オペレータの待ち時間を減らすことができ、工事全体の時間が削減され、トータルコストの低減につながる。
水谷建設株式会社 常務執行役員
事業本部 機械部長
一村敏金氏
ICT施工は、オペレータ1年生でもベテラン並みの施工ができることにメリットを感じています。日立建機には、今後ともいろいろな提案を期待しています。
1. ICT施工に対応した日立建機の油圧ショベルZX225USRが稼働している。のり面形成はもちろん、傾斜のある土地の整地で大きな効果を発揮している。
ICT施工担当者や専門家による素早いサポート体制
水谷建設では、ドローンやGNSS測量機から取得した測量データをもとに自社内で3D点群データを作成し、データの加工を施してICT建機に入力している。その際にも、日立建機によるSolution Linkageを導入したメリットがあるという。
「 データ作成から入力まで一括して任せきりになる方式の提案もあったのですが、それでは当社の技術が育ちません。その点、日立建機のICT施工はデータ処理を自社でできるようになれば、技術力の向上が当社の強みとなる利点があります」(一村氏)
ICT施工の技術向上をめざし、日立建機のサポートスタッフも奮闘中だ。「キャリブレーションが必要になったときや故障が発生したときなど、遠方からICT施工担当者や専門家が駆けつけて、早い段階で対応してくれるのはありがたいですね」(名和氏)
名和氏は、今後のICT施工について、レーザースキャナを積んだドローンの改良を期待している。
「木を切る前と後とでは山のイメージが違うことが多く、事前の想定通りに作業が進まないことがよくあります。そうしたことを減らすため、レーザースキャナを高性能化して、木が生えた状態でも山の現況地盤がわかるようになればいいですね。もちろん、低価格化も望みます」
現場からの要望を取り入れて、ICT施工の進化は止まることがない。
水谷建設株式会社 事業本部 工事部長
名和太一氏
今後はICT施工がさらに普及し、価格が下がって使いやすくなることを期待しています。人件費が抑えられるアジア諸国の工事にも活用できるようになればと考えています。