拝啓・現場小町 - 日本機械土工協会 水谷幸子さん
文/編集部 写真/鈴木暁彦
主婦から建設の世界へ─がむしゃらに進んできた経験が今に生きる
2011年8月、三重県の建設会社に入社。総務部長、常務を経て18年から副社長に就任。同年立ち上がった日本機械土工協会女性部会の会長に就任。建設業界で、女性が働きやすい環境づくりを推進する。
「現場を見て知る」ことで業務が円滑に
2年前に女性部会を設立した日本機械土工協会。設立時から会長を務めるのが、三重県にある建設会社の副社長である水谷幸子さんだ。
主婦だった水谷さんが事務スタッフとして入社したのは11年8月。立ち上がったばかりの会社で、体制は完全には整っていなかった。「整備・改善しなくてはいけないことだらけ。業界の先輩に教わったり他社の良いところをこっそりまねしたりしながら、必死でやるしかありませんでした(笑)」(水谷さん、以下同)。結婚前に会社勤めの経験はあったが、ブランクは約20年。進化したパソコンを使いこなすべく、自ら教室にも通った。
東日本大震災の直後で復旧・復興事業が急増中の折。従業員も十数人規模から3ケタに。仕事が増えるばかりの怒涛どとうの日々だったと振り返る。「知識も経験もないことに負い目を感じましたが、引き受けた以上はやるしかない。あっという間の10年でした」。
その間、肩書は総務部長、常務、そして現在の副社長へ。設立初期から会社の屋台骨となり自らも経験値を積み、また女性社員が働きやすい環境づくりにも積極的に取り組んできた。現在は、経営全般と各地の現場への指揮命令を担当している。
そんな活躍が目に留まり、日本機械土工協会の女性部会長に就任。女性部会の目的は、建設業界で女性を活躍させることにより人材を確保すること。また、女性が活躍することで「汚い」「つらい」のイメージを拭い去り、明るい環境づくりをめざすこと。現況はまだまだ課題ばかりにも見えるが、水谷さんはより良い未来を真剣に考えている。その1つの鍵が「現場」だ。
「私自身、やればやるほど建設という事業の広大さと“創造” の世界に魅力を感じています。ただ、それは現場に実際に入って視察し、山や土を動かす機械と人間に興味を抱くようになって初めて感じられるものだと考えています」。女性部会でも現場の視察とパトロールを実施。普段デスクワークに従事する女性社員にも“現場” を知ってもらう機会をつくり、自社でもそれを推進する。「現場の労働環境や任務の厳しさを知ることで、総務系の社員の意識は大きく変わり、現場とのコミュニケーションも円滑になりました。何より相手の立場や仕事に想像力を働かせられるようになったことが大きな収穫です」。
実際に建設業界で女性が活躍するには、宿泊施設やトイレなどの設備面、出産や育児に関する制度の整備を含めたキャリアプラン面など、課題も多い。任期はあと2年。「異業種も含めて、女性が活躍する企業の事例や意見を聞く機会を増やし、在任中に少しでも女性が働きやすい建設業をめざして取り組みたいと考えています」。
出張ついでの“立ち寄り”が自分だけの小さなお楽しみ
仕事と家庭で多忙な水谷さんにとって数少ない自分の時間が、出張時に「道の駅」に立ち寄ること。買い物をしたり、イチゴ狩りをしたり。「短時間ですが、ちょっとしたリフレッシュです」。写真は奄美大島にて。
水谷さんの部下
櫻井美咲さん
物事の判断が早く、いつもテキパキ。男性が多い業界ですが、行動力と明るさ、優しさで活躍されているんだなと、いつも感じ、私のお手本です。仕事以外でも気さくで、料理のこつやレシピも教えてくれます。