Solution Linkage 通信簿 - 【ICT施工ソリューション編】寺尾運輸興業株式会社[神奈川県横浜市]
【ICT施工ソリューション編】寺尾運輸興業株式会社[神奈川県横浜市]
日立建機のICT・IoTソリューション「Solution Linkage」を導入したことで現場はどう変わったか、経営にどんな影響を与えたか――。
お客さまの評価をレポートする。
取材・文/太田利之 撮影/関根則夫
今回のポイント
現場目線を大切にお客さまとの協創で機能を改良
運搬履歴から日報を自動作成 現場と事務の働き方改革を支援
都市部の大規模な民間工事で一気通貫のICT工事を実現
寺尾運輸興業株式会社は土木工事から一般貨物自動車運送を中心に、大手ゼネコンからの請負工事で活躍を続けている。「コンプライアンスを徹底し、適切な施工管理と現場の安全性を確保することにより、お客さまとの信頼関係を積み重ねています」と、代表取締役社長の出村輝彦氏は強調する。
同社は常に車両の動きに責任を持つために、8年ほど前から、無線機にGPSを組み込んで地図ソフトと連携した運行管理システムを導入している。しかしリアルタイムに状況を把握できないなどの問題が生じていたという。「そんな時、長い付き合いでもある日立建機からモバイル端末を活用した運行管理システムを一緒につくりましょうという提案を受けました」(出村社長)
Solution Linkage Mobile(ソリューション リンケージ モバイル)は、スマートフォンなどのモバイル端末で車両や作業員の位置情報や、施工現場の進捗を確認できるアプリケーションだ。寺尾運輸興業では、これを34台導入。25台の自社保有のダンプトラックと協力会社を含めた全車両においてIoTを活用した管理を進めた。「導入の目的は運行状況を把握して、ダンプトラックへの積み込みタイミングなどの現場の段取りの合理化を図ること。さらに、ダンプトラックの運搬履歴と積み込んだ土量から日報を自動的に作成するという機能の充実もめざしました」(出村社長)。4年前の導入以来、日立建機との二人三脚で、現場でのトライアルを繰り返し、機能を拡充させていった。
寺尾運輸興業株式会社 代表取締役社長
出村輝彦氏
ICT施工を通してコンプライアンス意識の向上をめざし、お客さまや地域社会の信頼の基盤を築いてまいります。
現場では写真のように複数の機械がそれぞれの作業を行っているが、Solution Linkage Mobileを導入するとダンプトラックの運行状況が各種建設機械からもリアルタイムに把握でき、積み込みタイミングを見計らいながらスムーズな作業段取りを立てられる。
ICT・IoT活用の旗振り役になり現場の省人化と安全性向上を実現
しかしICT機器に不慣れな現場従業員は「本当に使いこなせるか」といった不安があったのも事実だ。運輸部部長の池田裕通氏は、現場への浸透を図るための経緯をこう説明する。「業務がスムーズになると共に安全管理も徹底でき、一日の終わりの日報業務もラクになると従業員に対してのメリットを訴えました。一旦理解してもらえれば、皆思いのほか協力的でしたね」
Solution Linkage Mobileに加え、寺尾運輸興業と日立建機とで、さまざまな施工プロセスにICT・IoTを活用したビッグプロジェクトが進んでいる。現場は都市部の広大な敷地に広がる民間の大型開発案件。省人化と安全をテーマに積極的にICT施工を活用する姿勢は、同業他社からも注目が集まっているという。
レーザースキャナの現況測量で3次元設計データを作成したのち、マシンコントロール搭載のブルドーザと、日立建機のICT油圧ショベルが施工にあたる。「危険なのり面の丁張にかかわる人員や時間がカットでき、機械周辺の安全管理も万全になりました」(出村社長)。さらにスマートフォン撮影で土量を計測できるSolution Linkage Survey(ソリューション リンケージ サーベイ)の導入で、盛土の量を把握する作業も1人で完結できる。
今後は、荷重判定装置「LOADRITE™※」とダンプトラックとの連携を図り、運搬回数と荷重判定に基づく実際の運搬量把握までの一気通貫体制をめざし目下進行中だ。これによりドライバーだけでなく事務スタッフの負荷も軽減できる。「現場とオフィスを貫く働き方改革につながりつつあります。またICT・IoTを活用したプロジェクトは、新時代に対応したビジネスモデルへの挑戦にもなりました」と語る社長のもと、その先進的な姿勢は大きな成果を結び続けるだろう。
※LOADRITE™はTrimble Inc.の商標です。
運輸部 部長
池田裕通氏
ICT戦略を成功させるカギは、従来の手順になれた現場のドライバーやオペレータに受け入れられ、喜んで協力してもらう環境を築くことです。そのために「現場にどんなメリットがもたらされるのか」を明確に提示し、現場の要求をくみ上げながら「共に築き上げる」姿勢を大切にしています。