特集 - 所有から利用へ レンタル最前線
必要な建設機械を必要な時に使う今、世界で広がる建設機械のレンタル市場
世界全体で建設機械のレンタル市場が伸びを見せている。
背景にはコスト軽減や利便性のニーズに加えて、持続可能な循環型経済への対応もある。
グローバルにレンタル事業を展開する日立建機の取り組みにフォーカスする。
大和田 将史
営業本部
製品流通企画部
部長代理
井上 大輔
営業本部
製品流通企画部
レンタル市場の見通しは良好 新興国に成長拡大の余地
日本、欧州、北米などの先進国を中心に、今、建設機械のレンタル事業が拡大している。その市場は日立建機調べによると、2018年には欧州が約2.9兆円、北米が約4.9兆円、そして日本は約1.4兆円に達しており、推定市場規模は10兆円を超える。過去30年で先進国では全建設機械に占めるレンタルの比率が約50%まで上昇。近年は中国市場も急拡大していると見られ、今後30年で中国やインド、東南アジアなどの新興国でもレンタル比率が先進国並みに上昇すれば、その市場規模は約30兆円に成長すると見込まれる。
ここまで建設機械のレンタル化が進んだ背景として、製品流通企画部の大和田はこう指摘する。
「先進国では短期間の都市型工事が多く、大規模土木等の通年での工事確保が難しくなっています。建設機械の稼働時間も多くないことから、必要な時に利用できるレンタルが資金面で効率的だというマインドに変わってきました。とりわけ欧州では排出ガス規制が年々厳しくなり、それに合わせて建設機械の最新モデルも入れ替わりが激しい状況です。しかし機械を頻繁に買い替えるのは現実的ではないため、レンタルを好むお客さまが増えていったという事情もあります」
また、国土が広い米国では機械の輸送費用がかさむため、レンタルが浸透してきた。近年北米ではオンラインで建設機械の予約や申し込み、決済ができるシェアリングサービスも広がりを見せ始めており、これから拡大していく可能性がある。
一方、新興国の事情はどうだろうか。製品流通企画部の井上は次のように語る。「現状、新興国では長期貸し出しが多い傾向にあります。レンタルの形態は、先進国では機械のみを貸し出すドライレンタル方式が中心ですが、新興国はオペレータの操作スキルが成熟していないケースが多いため、オペレータ付きのウェットレンタル方式が主流です。今後、新興国では人口増に伴い工事量も増えていくので、ウェットレンタルの需要は一層増えると見ています」
■レンタルを通じて、お客さまに最適なソリューションを提供
きめ細かな整備が行き届いたメーカーならではのサービスを提供
そうした需要を見越して、日立建機がレンタル事業を本格スタートしたのが1996年。日本国内では「REC」ブランドで展開し、お客さまとともに成長してきた。その後、海外でもレンタル事業に本腰を入れるため、英国でSynergy Hire Ltd.という新会社を設立。米国ではACME Lift Companyをグループ化し、レンタル事業を強化してきた。
さらに日立建機ヨーロッパでは2017年度から「PREMIUM RENTAL」ブランドを展開している。これは日立建機グループが定める一定基準を満たしたうえで、グループおよび正規新車代理店がレンタル資産保有者となり、直接・間接的にレンタル運営と機械整備を行うものだ。レンタル終了後は「PREMIUM USED」(保証付中古車)として「PREMIUM RENTAL」と同タイプのロゴを付け再販する。
「レンタルで日立建機の機械を試してもらうことは、新車販売のみでは接点のないお客さまとの貴重なタッチポイントになります」(井上)。さらに大和田はレンタル事業に注力する狙いについて、こう説明する。「レンタルした建設機械を、数年後に適切なメンテナンスを経て比較的新しい中古車として販売することで、部品再生、ファイナンスなども含めバリューチェーンがつながっていき、お客さまに幅広いソリューションやサービスを提供いたします。同時に、1台の機械のライフサイクルをより長くして、製品の長寿命化につなげられる点において、地球環境対策にも貢献していく考えです」
■世界に波及、日立建機のレンタル事業