インフラを支える日立建機 - ハードな採石現場が活躍の舞台! 鉱山機械が抜群の威力を発揮
栃木県佐野市に本社を構える株式会社藤坂は、本社工場をはじめ同県内や福島県に5つの工場を擁し、7つのグループ会社を束ねる昭和48年から続く国内有数の大手砕石メーカーだ。
同社は2021年7月、超大型油圧ショベルEX5600-7と、リジッドダンプトラックEH3500AC-3を2台導入。
最新機種の組み合わせで砕石の掘削、運搬業務を効率化。
安全性と生産性の飛躍的な向上を実現した現場をリポートする。
取材・文/太田利之 撮影/関根則夫
“若い人たちに砕石業の魅力をアピールしていきたい”
藤坂グループ 社主
山野井祥二氏
われわれ砕石業の課題の一つは人財確保です。今回当社は、国内最大級の日立建機の超大型油圧ショベルとリジッドダンプトラックを導入しました。ここで獲得した「掘削、積み込み、運搬」を貫く大きなパワーを追い風としながら、目下、現場の労働環境向上や働き方改革を大きく前進させることをめざしています。私たちは、これを契機に業界全体のイメージアップにも貢献し、社員一人ひとりが誇りをもって働ける環境整備を進め、さらに将来を担う若手の採用拡大にもつなげていきたいと考えております。
国土建設の礎を築く使命を帯びて
私たちの生活になくてはならない道路や橋、建造物。これらの社会インフラ整備に必要な原材料が砕石である。株式会社藤坂は、国内でも有数の生産量を誇る砕石の専門企業だ。栃木県佐野市を中心とする砕石工場で生産した石を加工し、コンクリートやアスファルトの材料として供給している。同社オーナーの山野井祥二氏は、砕石業について次のように語る。
「砕石業は国土建設に貢献する、必要不可欠な基盤産業です。一方で山の開発を進める私たちは自然環境に手を入れる仕事である点を、十分認識しなければいけません。都市部の建設残土の受け入れ、産業廃棄物のリサイクル分野にも力を入れています。社会貢献と事業の両立を図りながら、循環型社会実現の一翼を担いたいと思っています」
同社は、2000年度から建設廃材のがれき(コンクリート、アスファルトなど)を原料とした、再生砕石の生産にも着手。すでにその取扱比率は、バージン材と同程度となり、循環型社会の実現を推し進めている。
「1964年開催の東京五輪で整備された首都圏の社会インフラが、一斉に再構築の時期を迎えている現在、建築廃材も拡大しており、リサイクルは事業の大きな柱に成長しています」
鉱山機械が社内の士気高揚にも貢献
「砕石現場は高低差が大きく、周囲は強固な岩盤。だからこそ、安全管理には細心の注意を払っている」と語るオーナーのポリシーに沿って、同社は現場の安全管理とともに、社員の健康管理にも気を配っている。
「今回、超大型油圧ショベルEX5600-7とその相番機となるリジッドダンプトラックEH3500AC-3を2台導入した背景には、もちろん生産性や効率を上げる狙いがあります。一方、一度の仕事量が大きく、掘削現場の作業頻度や人数、火薬を使った発破も削減できるので安全性が高められ、現場勤務の時短も進められるという思いがありました」
同社はこれまで、事故対策のために社員を他企業の見学にも派遣して研修を行ってきた。しかし、今回の鉱山機械導入によって逆に他社からの見学依頼が殺到しており、積極的に受け入れている。テレビや雑誌で取り上げられた影響もあり、大型機械のファンや一般の方からの反応も大きいという。
「1999年にも、当時の国内最大クラスの超大型油圧ショベルEX5500Eを導入し、生産性向上とコスト削減、安全性アップを進めました。世界の鉱山現場で活躍する大型機はオペレータの憧れであり、社員の誇りの源泉ともなる」とオーナーは力説する。事実、鉱山機械導入で、社員が自社を誇りに思う気持ちがいっそう高まったという。会社への愛着の高さも同社の特徴で、親子二代、三代と勤める社員も多く、60歳の定年後も本人が希望すれば、全員再雇用しているという。
「とはいえ、当社も高齢化や技術の継承性という悩みを抱えています。今回の鉱山機械導入によって働き方改革を進め、若い人たちにもより魅力ある会社にしていくことで、次代を担う人財の採用を加速させていきたいと考えています」
そう語るオーナーの意思のもと藤坂は新時代へ向けた力強い歩みを続けている。
飛躍的に向上した生産性を背景に働き方改革も進行
今回、新たな鉱山機械が導入された藤坂の音坂工場は、栃木県佐野市の南部、東北自動車道の岩舟ジャンクションにもほど近く、交通の便が良いロケーションにある。代表取締役の髙橋和雄氏は、今回の鉱山機械導入について以下のように語る。
「目下、音坂工場では新たな砕石プラントを構築中です。今回のプラント新設を機に、超大型油圧ショベルEX5600-7とリジッドダンプトラックEH3500AC-3をこの現場に導入しました。私たちは、大型マシンによる生産性アップを武器に、10年かかると目されていたこの山での採掘を、今後約5年間で終了させたいと考えています」
同社では音坂工場での採掘終了後、マシンを分解して、より大規模な本社工場に運び再構築を予定。鉱山機械ならではのパワーをさらに発揮させようと計画している。音坂工場の所長兼工場長の大出耕一氏も、超大型油圧ショベルとダンプトラックの導入効果を力説する。
「導入前に比べて一度に運搬できる土量が4~5倍に増えたという実感があります。まだ新プラントが完成していないので、現在は加工処理量に沿って、従来と同じ採掘量にとどめていますが、今まで2班体制で1日8時間かかっていた作業が、1班で午前1時間/午後1時間の計2時間で完了します」
実際にEX5600-7を操作するオペレータの松島和男氏も、働き方が変わったと語る。
「私の父も、当社でショベルに乗っていましたが、やはり『大きなマシンに乗ってみたい』というのは、オペレータの夢なんです。今回EX5600-7に乗ることになり、誇らしい気持ちでいっぱいですね。現場での作業時間が減った分、別の仕事の段取りをしたり、書類作成をしたりと、残業をしなくてもさまざまな仕事をこなせるようになりました」
新プラント完成を機に、万全の増産体制を追求
現場で活躍する大型マシンを目の当たりにして、社内でも「自分も乗ってみたい」と希望する声が多いという。また、今回の鉱山機械導入は業界内でも大きな話題を呼び、さまざまな媒体で紹介された。同社は、そんな評価や知名度アップを追い風に、今後若い人財の採用も期待できるものとみている。
自身も油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダを自在に乗りこなす採鉱部門長の吉田幸男氏は、今後の人財育成戦略を以下のように説明する。
「新しい大型機は、まずベテランから乗ってもらいますが、今後は本人の希望に沿って、若手もどんどんトライしてほしいと考えています。ショベルとダンプではそれぞれ勘所も違い、別々のセンスが求められます。そこで各自の資質を見極めながら、適材適所を基本に配属していきたいと思っています」
2022年12月に新プラントが完成すれば、大型鉱山機械もいよいよフル稼働を開始する。ハードな環境下でも、常に万全の働きを担保する鍵は、日常的な保守点検や予防保全的視点に立った細心のメンテナンス体制だ。
「日立建機は、現場の問い合わせやちょっとした要望にもすぐ駆けつけてくれて、改善要求に沿ったカスタマイズにも応えてくれるので、大いに頼りにしています」(髙橋社長)
「ベテランオペレータは、日常的な始業・終業点検を徹底。さらに、操業中のエンジン音や振動、マフラーからの煙の色などで、機械の状態を把握しています。その一方で日立建機は遠隔からも機械の状態を見守り、『そろそろ通算運転500時間に達するので、オイル交換を』など、データに基づいたこまめなアドバイスの提供やメンテナンスに対応してくれるのもうれしいですね」(大出所長)
藤坂は、これからも日立建機との二人三脚体制を強化し、現場の安全対策と効率生産、人財育成を追求していく。
積載質量180tクラスのリジッドダンプトラックEH3500AC-3は、超大型油圧ショベルの相番機にふさわしい性能だ。車体の状況を把握するセンサ類と、制御機器の高性能化を追求。凹凸や高低差が激しく足場の悪い鉱山でも「高度車体安定化制御技術」が機能する。車体のスリップやタイヤロック、前後方向の揺れ、ステアリング時の横滑り緩和機能によって安全な走行性能を実現する。巨体を支えるタイヤのサイズも直径3.7mと超ビッグ。