見たくなる!日本のすごいインフラ Vol. 03
地下約70m、階段486段! 日本一のモグラ駅
土合(どあい)駅構内土合斜坑(どあいしゃこう)
群馬県利根郡みなかみ町
宮沢 洋(みやざわ・ひろし)
画文家、BUNGA NET代表兼編集長。1967年生まれ。1990年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日経BP社入社。2016年~19年、日経アーキテクチュア編集長。2020年独立、建築ネットマガジン「BUNGA NET」を運営。著書に『隈研吾建築図鑑』『日本の水族館五十三次』など
1967年、JR上越線の地中深くに土合駅下り線ホームが開業した。新清水トンネル(延長1万3,500m)の途中にあり、地上の駅舎や上り線ホームとの間を長い斜坑が結ぶ。2017年、「JR上越線清水トンネル関連施設群」の一部として土木遺産に認定された。
何も知らずにホームに降り立った人はどう思うのだろうか。斜坑(斜めのトンネル)内に続く階段を見上げても、地上らしき光は点にしか見えない。階段は計486段。深さ約70m。金刀比羅宮(香川県)の1,368段に比べれば半分以下だが、こちらは一直線で、かつ薄暗い地下空間。衝撃度は想像以上だった。
上越線・土合駅の地上駅舎があるのは、川端康成著『雪国』で知られる清水トンネルの出口(東京寄り)のすぐ近く。上越線開業5年後の1936年に完成した。当初は上り・下りとも地上ホームを利用していたが、戦後になって列車本数が増加。1967年に新清水トンネルの開通によって複線化され、その時に生まれたのが、下り線のみが利用する地下ホームだ。
斜坑は新清水トンネル掘削時に、土砂の搬出や資材供給などの役割を担った。幅員7m、高さ5mの半円柱形。平均勾配14度で約300m続き、上りきるには10分ほどかかる。当初はエスカレーターを設置する計画があったが見送られた。地上駅舎は現在無人だが、使われなくなった駅務室が2020年にカフェとなり、話題を呼んでいる。店の名は「駅えきっさ茶mogura」。
下り線で斜坑を体験し、上り線で東京方面に折り返す人は、駅茶moguraでひと休みがお薦めだ。