<マイニングビジネスユニット>スペシャル座談会
お客さまの困りごとに寄り添うソリューションを
中期経営計画で経営戦略の柱の一つになる「顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供」について、マイニングビジネスユニットのメンバーが話し合った。
AHSで培ってきた実績で、もっとソリューションを前進させたい。
廣渡信芳
マイニングビジネスユニット
デジタルソリューション推進統括部
AHS ソリューション推進部
AHS サポートグループ
部長代理
1998年入社。ショベルの設計を経て、日立製作所の研究所と共同でマイニング機械の故障予兆などデジタルを活用した開発に取り組む。カナダの子会社Wencoに3年駐在。帰国後はAHSのソリューション開発に加わり、オーストラリアでの現地支援、サポート部隊立ち上げに携わる。
ビジネスユニット制で風通しがよくなり、夢が簡単に広がるのではと感じています。
三宮直人
マイニングビジネスユニット
販売・サービス統括部
販売企画部
部長代理
1998年入社。入社後、工場の設計部門で設計を担当。その後、営業技術サポートとして顧客への提案営業を手掛ける。シンガポール駐在を経て帰国後、オーストラリアに技術営業で赴任し、技術視点でダンプトラック拡販等をサポート。現在はマイニングの販売企画を担当。
お客さまが機械を長く使えるようデジタルでサポートしていきたい。
山下貴司
マイニングビジネスユニット
販売・サービス統括部
プロダクトサポート部
オペレーションモニタリンググループ
部長代理
1999年入社。一貫してプロダクトサポートに携わり、マイニングの技術的サポートや製品改善の窓口対応を手掛けてきた。2002〜07年の米国駐在から帰国後、マイニングのプロダクトサポートを担当。11〜12年マレーシアに駐在し、帰国後はConSite Mineをはじめとしたデータ活用業務を担当。
豊かな社会の実現に貢献する部分にも事業を広げていきたい。
伊東英明
マイニングビジネスユニット
開発・生産統括部
イノベーション技術開発部
DMS グループ
主任技師
1999年入社。油圧バルブの設計をひと通り経験。その後、マイニングショベルの油圧システム設計、EX2000-7開発取りまとめを担当。2020年イノベーション技術開発部に移り、ConSite Mineやショベルの遠隔システムの開発を取りまとめる立場にある。
喜んでもらえる製品を作ることがお客さまに寄り添うことになる。
糸賀悠介
マイニングビジネスユニット
開発・生産統括部
臨港製造部 製缶課
課長
2007年入社。入社以来、大型機の生産技術を担当する。11年土浦工場から臨港工場に移ってマイニングの超大型ショベルを担当。16年からインドネシアに出向。その後、インドネシア工場の生産技術を担当して工場を支援し、22年帰国。現在は臨港工場で管理職を担う。
提供サービスの選択肢を増やして、お客さまに寄り添っています。
伊藤功士
マイニングビジネスユニット
事業戦略部
部長代理
2007年入社。プロダクトサポートからスタートし、アフターサービスに配属。12〜15年インドネシアでマイニングショベルを担当。19 年から部品サービスビジネスに携わり、BradkenおよびH-E Partsと連携してソリューションを推進。グループとしてのシナジー創出に取り組んでいる。
―「ソリューション」や「お客さまに“寄り添う”」ことをどう意識して仕事に取り組んでいるのでしょうか。
廣渡 日立建機ではさまざまな鉱山向けのソリューションを提供していますが、中でもAHS(ダンプトラック自律走行システム)は社内ではパイオニアの立場です。お客さまが望むことと製品の仕様や機能の間には必ずギャップがあるので、納入後もお客さまと会話をしながら提案を行い、困りごとをいかに解決していくか。それを実践するのが、中期経営計画でめざす「社会やマイニング顧客の成功に貢献するソリューションプロバイダー」であると日々実感しています。
三宮 会話から要望や困りごとを引き出し、提案を行う活動は営業の段階から始まっており、それは昔も今も、そして今後も変わりません。ただこれからは、お客さまからのご意見やディーラーからの情報を早期に見える化し、どの時点でどの機械が必要になるか予測を立て、それを生産に伝えて納期に間に合わせることが大事になると考えています。
山下 プロダクトサポートとして常に意識することは“顧客の機械を止めない”ことです。不具合発生時に原因を調査し、状況に応じて関連部門から技術対策を得たうえで、お客さま対応をしています。ですからお客さまの苦情や懸念に寄り添い、真摯に対応することが大前提。今後はお客さまの声を拾い上げるシステムやセンシングの仕組みなどデジタルを活用し、より迅速な対応を実現することが、お客さまが求めるソリューションプロバイダーだと思っています。
伊東 ソリューションを事業として成立させるための技術やツールを提供するのが開発設計の仕事。ニーズが明確なお客さまの困りごと解決はもちろん、明確にはわからない状態でも対応することがまさに革新的なイノベーションであって、仮説を基に新しいテクノロジーを使った技術開発を行うアプローチも当然あり得ます。
糸賀 製造の現場としては、やはりお客さまに喜んでいただける製品を作ることが最大のポイント。マイニング機械の製造には時間がかかるのですが、例えばその製造リードタイムを少しでも短くすることが、お客さまに寄り添うことになるのではないでしょうか。
伊藤 私の部門はソリューションの選択肢を増やすのが役割です。例えば新車販売においては、純正品のバケットだけでなく、グループ会社で消耗部品を供給するBradkenのバケットも提供できますといった形で、お客さまの立場に立って選択肢を提示する。また、お客さまの鉱山には当社製だけでなく他社製建設機械もありますが、当社ならH-E Partsとの提携で他社機の修理という選択肢も提供できる。こうした取り組みがCIF(Customer Interest First:顧客課題解決志向)、つまり顧客に寄り添うソリューションの提供につながると考えます。
―山下さんの話に出てきた通り、これからのソリューション事業にはデジタルが不可欠。デジタル活用、DXの観点では今後どう変わっていかなければならないとお考えですか。
山下 先ほど話したデータ活用による不具合の早期解決が一つ。そしてもう一つは、予防保全につながるデータ活用です。デジタルやICTは、機械をより長く使えるようにするための重要な手段であると考えています。
廣渡 私たちも不具合を初期段階でつかまえ、お客さまにご迷惑をおかけしないようにするため、プロダクトサポート部門との情報共有や協業を日々行っています。鉱山でシステムが止まるのは家庭に電気がこないのと同じことで、1時間止まるとお客さまには多大な損害が生じます。ですからデジタルを活用して不具合を未然に防ぎ、もしも起きてしまったら少しでも早く復旧させることが非常に重要な使命です。
伊東 開発設計としても、以前からプロダクトサポート部門の協力でお客さまの現場からデータを集め、設計に生かしています。DXは今後の課題で、AIやロボティクスなど最新技術に対応できる人財、開発するためのプロセス、そしてデータを効率よく扱えるプラットフォームの3つを揃えていくことが必要です。
糸賀 工場側としては、生産性の向上のみならず、モノづくりに関わるあらゆる数値を見える化する取り組みが製造部門全体で現在進行中です。生産進捗状況について、営業部門や生産管理部門の担当者が注文を受けた機械の状態を即座に把握できれば、お客さまへの回答が早くなり、日立建機に対する安心感もより高まるでしょう。
また、各種製造記録の見える化も重要です。現在もさまざまな情報を取れるようになっていますが、そこにトレーサビリティとしての品質記録をはじめ多くの情報を紐づければ、現場に出ているサービス部門の社員がより具体的な提案をしやすくなると思います。
三宮 現場の見える化は営業・マーケティングにも大いに役立ちます。マイニング機械の故障や停止は大きな損害につながるので、お客さまも製造現場には関心を持っており、今は工場を実際に見て安心していただく取り組みを行っています。製造を見える化する仕組みがお客さまに対してもオープンにできれば、当社製機械の安心感をさらにアピールできるでしょうね。
―ビジネスユニット制が導入されましたが、どういったところにメリットを感じていますか。
伊藤 私の事業戦略部では、製造原価や販売売上をはじめとしたコストや収益などの見える化を推進しています。ビジネスユニット制の導入により、収益の責任がより明確になり、課題を見つける足がかりにもなっています。収益を生み出し、さらなる事業の成長につなげたいと考えています。
廣渡 何より大きなメリットは、これまでそれぞれ別々に活動してきたサポート部隊や営業部隊が、タッグを組んで一緒に活動できること。ビジネスユニットによる一体化で、さまざまな取り組みが従来より加速することを期待しています。
三宮 AHSは一つのシステムを中心に油圧ショベル、ダンプトラック、サービス・サポート、遠隔データ活用をはじめ多彩な要素が含まれるソリューションなので、ビジネスユニット制でマイニング事業が次のステップに進めると感じています。
伊東 デジタルでコミュニケーションがよくなる一方、いい意味で属人的な部分が失われるところもあるはず。デジタルと属人的な部分をうまく組み合わせた落としどころはまだつかみ切れていませんが、それがビジネスユニット制で進むことを期待しています。
マイニングはユースケースがシンプルで、掘ってダンプに積んで運んでの繰り返しなので、お客さまの課題を定義しやすい部分があります。ですから、ソリューションの力を最も発揮できるのがマイニングであると考えています。
三宮 営業・マーケティングの視点から言うと、隣にプロダクトサポートがいたり、製造がいたり、開発設計がいたりするので、風通しがよくなり、夢が簡単に広がるのではと感じています。
―最後に、皆さんの今後の展望を教えてください。
伊藤 アンテナを高くし、スピード感を持って、内部リソースだけでなく外部パートナーへの投資も惜しまず進んでいくことが、将来の成長に向けて最もなすべきことだと思います。
糸賀 工場はお客さまにとって魅力ある製品を生み出す母体です。建設機械をワクワク感をもって使ってもらえるよう、働く環境としても、活気のある楽しい製造現場であり続けたいですね。
伊東 日立建機としては豊かな社会の実現が究極の目的。それには資源が必要ですが、採掘を最低限に抑え、インフラを効率よく維持・更新していくためにも、異常を検知する技術やデータ活用プラットフォームが貢献できます。そうしたところにも事業を広げられる余地があるのではないでしょうか。
山下 まず3年後には、遠隔モニタリングをもとに予防保全やトラブルシューティングができるようにしたいですね。そして2030年頃には石炭以外の鉱種にフォーカスし、新しい分野として最終工程の選鉱までのプロセスにも入り込んでいくという道筋が見えてきています。
三宮 今販売した機械は、2030年にはまだ動いています。営業としては、その時点で何がお客さまにとって価値になるかをアピールしなくてはなりません。お客さまの関心は「廃棄物0」「危険作業0」、そしてデータ活用によって勘やコツに頼らない「勘・コツ0」。この関心に沿う将来像を描き出せれば、当社の未来も明るくなるでしょう。
廣渡 安全確保はやはり大きなテーマ。その意味でも採掘現場の省人化に向け、課題を一つひとつ解決していくことが当社のマイニング事業に課されています。またサポートにおいては、AIなどの技術を活用したモニタリングを今後進化させていかなければならないと考えています。
文/斉藤俊明 写真/関根則夫