ConSiteでかなう“新しい当たり前”
お客さま先でConSiteの活用が広がることで、建設機械のメンテナンスやライフサイクルコスト、さらにはビジネスをめぐる状況はどのように変わっていくのだろう。
ConSiteの開発やサポートに携わるメンバーたちの話から見ていく。
ライフサイクルコストを減らして、機械をより長く使う
建設機械はそれ自体が高価な製品であるのはもちろんのこと、消耗・劣化等に際して交換する部品も決して安いものではない。そうした部品代や燃料・オイル代、作業費などを含めた、新車から廃車に至るまでに要する維持・管理費用、いわゆるライフサイクルコストは、コンストラクション機械は7年で新車価格とほぼ同じ、マイニング機械では10年で新車価格の2倍以上といわれる。そのためライフサイクルコストを可能な限り減らし、機械をより長く使うことは、お客さまにとってきわめて重要度の高いテーマだ。
「現場では、機械の稼働を止めないだけでなく、コストを下げることも強く求められます。ConSiteでは、オイルの状態を監視して分析するConSite OILをはじめとして、機械のライフサイクルコスト低減に貢献するさまざまなツールを提供しています」と、データレポートサービスの機能を開発している栗原亮が話す。オイルは機械の健康状態を判断するバロメータでありながら、データから状態を判断するのが非常に難しい領域である。ConSite OILには日立建機の技術が十分に生かされているが、その開発には何年もの時間がかかったと栗原は振り返る。
今後のライフサイクルコスト低減に関する展望について「オイル状態や機械の状態監視機能をさらに進化させ、代理店やお客さまが活用できる仕組みを構築することが急務。結果的にお客さまの機械のライフサイクルを10年から15年に延ばすことに貢献したい」と栗原は力強く語る。
栗原 亮
部品・サービスビジネスユニット
カスタマーサポート事業部
ConSite開発推進部 アラーム開発グループ
部長代理
点検を容易にしてトラブルの兆候をつかむ
ライフサイクルコストの観点からだけでなく、そもそも故障による機械の稼働停止を防ぐためにも点検を適切に実施することは重要だ。ConSite Shot/Mine Shotは、スマートフォンのカメラで写真を撮ってレポートを生成し、共有することで、点検を行いやすくするアプリである。
「特に鉱山現場ではマシンダウンがお客さまの経営上の損失に直結するので、何としてもマシンダウンを避けなければなりません。ConSite Mine ShotはConSite Shotを鉱山現場向けにカスタマイズしたもので、実際にお客さまからは点検しやすくなったと好評です」と、開発・展開を担う立川貴博が説明する。
一方、東南アジア、オセアニア、ロシア、アフリカでConSite導入とサポートを担当する永井春奈はこう語る。
「以前は機械が故障してから電話が入り、対応していましたが、今はConSite Shotで状況把握までの時間が短縮でき、よりスムーズな対応が可能になりました。写真付きレポートをつくる文化がなかった国でも、問題のある箇所の写真とデータが共有され、お客さまに納得感ある説明ができるようになりました」
レポート生成により“点検する文化”を形成できるだけでなく、「『ConSite Shotを使う』ことが共通化されることで、蓄積されたデータが共有できて次の提案にも生かすことができ、全体がつながった」と栗原。ConSiteの活用は、日立建機の提案力やサービス活動が高度化されるなどのメリットをもたらしている。「その結果、利用する代理店とお客さまの関係も良好になり『次の機械も日立建機で買いたい』というような声も挙がっています」(栗原)。
永井は今後、予防保全の観点から「種々のデータを統合し、独自のアルゴリズムでトラブルに関する兆候をつかみたい。将来は日常的に使われるツールとなり、ConSiteが提案するタイミングで点検を行っていれば“ダウンタイムゼロ”が当たり前になる世界をめざしたいですね」と先を見つめる。
永井春奈
部品・サービスビジネスユニット
カスタマーサポート事業部
ConSite開発推進部 地域サポートグループ
主任
立川貴博
部品・サービスビジネスユニット
カスタマーサポート事業部
ConSite開発推進部 IoTビジネス開発グループ
主任
機械の状況を遠隔で把握
代理店の担当者が現場まで赴くことなく、遠隔からの状態診断やモニタリング、ソフトウェアアップデートを可能とするConSite Airも、ダウンタイムゼロ達成を支援するツールだ。ConSite Air以前は、機械からのデータは1日分がまとめて届けられ、翌日に確認する形だった。それが、7型機以降の携帯通信対応車体に搭載されたConSite Airでは、車体のセンサ情報をリアルタイムで確認できるため車体の状態を迅速に把握できるのも大きなメリットである。
開発に携わる山岸駿太は、導入先の活用方法と評価について「オフィスにいながらにして診断やアップデートを行えますし、アップデートについては進捗状況も管理しやすくなったと喜びの声を聞いています」と話す。また、同じく開発担当の菅野皓介は「リアルタイムの遠隔診断が可能になったことで、現場サイドも車体を診断することへのハードルが下がります。遠隔診断を行うケースが増えることでリアルタイムのデータも蓄積され、日立建機はそれらのデータを活用し、アラームの精度向上や新規開発に生かせます」と説明する。永井は南アフリカの代理店に紹介しているところだが、その代理店から「ConSite Airの機能があれば、オフィスでの遠隔診断をもとに部品を持って現場へ向かえるので、お客さまにとっても一回の訪問で問題解決できるメリットがあり、ゲームチェンジャーになり得る」との反応も得ている。
実際にノルウェーの代理店では、現場へ行く前に必要な部品を把握するなどトラブルシューティングに役立てているという。「欧州も人手不足の課題は共通しているので、その点でも効果を感じているようです」と話す山岸は、今後の需要増加に向け多くのユーザーからフィードバックをもらい、データをしっかり検証して、より求められる機能を開発していきたいと意気込む。
山岸駿太
部品・サービスビジネスユニット
カスタマーサポート事業部
ConSite開発推進部 ICTサービス開発グループ
データ連携を広げてビジネス最適化を支援
日立建機では、お客さまを中心に据え、その周りに代理店や日立建機がいる世界を未来像として描き、お客さまの建設機械の“ダウンタイムゼロ”実現を目標に掲げている。
その道筋には、ConSiteに代表されるソリューションによってお客さまが現在直面する課題を解決するにとどまらず、それぞれのお客さまのビジネス最適化に向けた付加価値の創出まで追求していく未来を「ソリューション3.0」として描いている。その未来について菅野は「お客さまの機械のダウンタイムゼロを達成するためには、他社機だとしても日立建機として対応する。一方、何らかの理由で日立建機が対応できない場合には、他社に対応いただくなど、パートナーとの連携を活発にしていく必要がある」と語る。
また栗原は、お客さまのエコシステムに対して柔軟なソリューションを提案できる体制を整える必要性を指摘し、次のように話す。
「日立建機だけですべてをつくり上げるのは難しいので、スタートアップも含めたパートナーと組んで、当社のシステムとデータ連携することが必要です。そのうえで、これから普及していく建設機械の遠隔操作や自動運転に対応できるソリューション、修理・メンテナンスの効率化など少子化・人手不足への対応を実現するツールの提供もめざしたい。電動化建設機械の普及も今後進んでいきますが、その点ではパワーバンクが必要になるので、そういったプレイヤーとの連携も必要になるでしょう」
菅野皓介
部品・サービスビジネスユニット
カスタマーサポート事業部
ConSite開発推進部 ICTサービス開発グループ