見たくなる!日本のすごいインフラ Vol. 06
倒れない理由はレンガ壁の中に
犬吠埼灯台
(千葉県銚子市犬吠埼)
宮沢 洋(みやざわ・ひろし)
画文家、BUNGA NET代表兼編集長。1967年生まれ。1990年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日経BP社入社。2016年~19年、日経アーキテクチュア編集長。2020年独立、建築ネットマガジン「BUNGA NET」を運営。著書に『隈研吾建築図鑑』『日本の水族館五十三次』など
関東最東端の犬吠埼の岬にそそり立つ白亜の塔。99段のらせん階段を登ると雄大な景色が広がる。
2020年、国の重要文化財に指定。同じく重要文化財の「旧霧笛舎」(1910年)などが展示施設となっている。
建設の仕事に関わる人は、この塔がレンガ造だと聞くとびっくりするのではないか。
1874年(明治7年)に完成した「犬吠埼灯台」はリチャード・ヘンリー・ブラントン(1841〜1901年)の設計。高さ約31m。レンガ造の建造物としては、同じくブラントンが設計した青森県の「尻屋埼灯台」(1876年、現存、高さ約33m)に次ぐ高さだ。
ブラントンは1868年にスコットランドから来日。もともとは鉄道建設が本業で、灯台設計一家として名高いスコットランドのスティヴンソン一家のもとで研修を受けた。来日後もスティヴンソン一家が技術情報の提供や灯器の設計、資材の調達などをサポートした。
一方で、ブラントンが工夫したと思われる点もある。それはレンガ造の構造形式。二重の円筒形にレンガを積み上げ、8カ所の放射状のレンガ壁で両方をつないだ。レンガ造日本一の尻屋埼灯台も二重壁構造。これは、塔の剛性を高めるための対策と考えられる。
ブラントンは約8年間に26基の灯台を建設した。灯台技術者を育成するための「修技校」の開校に尽力し、教育にも力を注いだ。“日本の灯台の父”と呼ばれるのも納得だ。