FUTURE 日立建機が思い描く施工現場の未来
建設機械の操作を離れた場所から行う遠隔操作、さらには現場における作業を機械に任せる自動化が実用段階に入っている。
日立建機が遠隔操作や自動化を通じてめざす未来とその取り組みについて、取材をもとに描き出す。
文/斉藤俊明 イラスト/いわた慎二郎 写真/関根則夫
日立建機がめざす遠隔・自動化の世界観
従来の建設機械は、人が搭乗し操作してきた。現場が街中から離れた場所ともなれば移動時間を要し、環境によっては身体的・精神的な負担も生じる可能性がある。機械が稼働する際の安全確保も人に委ねられる部分が多く、ヒューマンエラーが起きる可能性をゼロにすることはできないだろう。
昨今は生産労働人口の減少により、人財確保が厳しい上に、操作に習熟したベテラン技術者のノウハウを若手に伝えるのも決して簡単ではない。そのような施工現場のさまざまな課題に対し、日立建機は建設機械メーカーの立場からサポートしようとしている。
日立建機が思い描く将来の施工現場は、現場における「人、機械、現場環境」に関する情報を相互に連携させ、安全性と生産性の向上を自律的に図った「協調安全」を実現する現場である。そして、今、開発を加速しているのが、建設機械の遠隔操作と自動運転による省人化だ。
日立建機は、遠隔操作や自動運転のニーズに素早く対応するため、オペレータが作業時に行う「認識・判断・実行」を、建設機械自身が行うためのシステムプラットフォーム「ZCORE(ズィーコア)」を開発した。
人と機械が情報を共有する未来
これまでにもリモコンで遠隔から指令を与え、操作できる機械は存在した。ただそれは、一方向から情報を提供するにすぎない。遠隔・自動化の実現には、「人、機械、現場環境」が相互に情報を共有することが必要だと、先行開発センタの井村進也は話す。「機械側からも稼働データなどを発信することで、人と機械の双方向での情報連携が可能になります。よりスピーディで精度が高く、安全性も向上できる施工が実現します」。日立建機では、双方向の情報共有が可能な遠隔・自動化の建設機械を、個別に開発するのではなく、遠隔・自動化の専用機として製品ラインアップに加えた。
建設機械が遠隔操作や自動で作業できる現場が増えれば、安全性や生産性の向上に寄与する。他にも人財不足や環境問題などさまざまな課題への解決策にもなりえる。「例えば1人のオペレータが複数の現場にある機械を1つの場所から稼働させることが可能になります。作業効率の向上はもちろん、働き手を十分確保できない現状の課題解決にもつなげられるでしょう」と、ソリューションキャリア製品開発部の小高克明は話す。
また、顧客ソリューション事業部の境和樹は、「労働人口の減少によるオペレータの負担や現場環境から受ける影響を減らすためには、オペレータの働き方改革や生産性を確保することも考えなくてはなりません。例えば、移動時間を省く、待機中に他の現場の機械を遠隔操作するなど、時間を有効に使うことが可能になります」と、遠隔操作が生むであろう価値を説明する。
現場で建設機械に人が搭乗していないことが珍しくない時代が訪れようとしている。施工現場の姿が大きく変わることは容易に想像できるだろう。それは決して夢物語ではなく、すでに日立建機は着実な一歩を踏み出している。