TODAY 遠隔・自動化 油圧ショベル大解剖
日立建機が志向する施工現場の未来を実現する上で不可欠なのが、遠隔・自動化に対応した建設機械である。開発に込めた思いや流儀について紹介する。
2024年5月、遠隔・自動化に対応し、将来の自律運転への発展も見据えた油圧ショベル「RBTシリーズ」が発売された。特別な改造を加えることなくロボット化できる“READY TO BE ROBOT”の意味が込められており、RBTはそのROBOTから取っている。
シリーズ第1弾となる中型油圧ショベル2機種(20tクラス、30tクラス)は、遠隔操作に用いるリモコンとセットで発売されている。ZAXIS-7シリーズのZX200X-7をもとに開発された20tクラスの「ZX200A-7」から日立建機が遠隔・自動化において重視する設計思想やこだわりポイントを紐解く。
日立建機の遠隔・自動化5つの流儀
穴原 圭一郎
コンストラクションビジネスユニット
開発設計統括部 ソリューションキャリア製品開発部
山田 紫萌野
コンストラクションビジネスユニット
開発設計統括部 ソリューションキャリア製品開発部
STYLE 1:通信・外部システムとの接続
従来のシンプルな遠隔機は、リモコンからの一方通行の指令に応じて動作を行う仕様。対してRBTシリーズは機械側からも稼働データを発信できるほか、リモコン以外の外部信号での操作にも対応する。お客さまが利用するシステムと接続して動かすことも可能だ。「機能面では従来と2世代違うほどの差があります」(穴原)
STYLE 2:自律運転への第一歩
自律運転に対して準備ができている(「READY」である)のがRBTシリーズの大きな特徴だ。ZX200A-7は遠隔・自動化のベース機という位置づけになっており、現状の機能にとどまらず、新たなシステムを組み合わせての拡張が可能。高度な自動運転、物理的に離れた場所からの遠隔操作など、お客さまの多様なニーズに対応できることを目標に開発されている。
STYLE 3:車体の工夫
従来機から、停止スイッチや遠隔、搭乗運転切り替えスイッチをオペレータが扱いやすい位置に配置したり、振動の影響を受けにくい位置にセンサ類を設置したりなど、車体構造に工夫を施している。「今後も機能面と安全面の双方でさまざまな工夫を検討し、コストと照らし合わせながら実装していきたいと考えています」(山田)
STYLE 4:操作性の追求
日立建機は“動かしやすい機械”や“思った通りに動く機械”を常に追求している。その思想はもちろんRBTシリーズにも注入されている。「実際の運転席での操作と極力変わらない操作感となるようパラメータを設定するなど、遠隔操作であっても搭乗運転時と同様の感覚で使えるような“味付け”を意識しました」(穴原)
STYLE 5:安全への配慮の徹底
現状では無人エリアでの使用を想定しているが、今後は有人機や他社機、あるいは人がいる現場で使われるシーンも考えられる。そこで特に重視したのは、安全面の徹底である。機体の周辺で動く人や機械などとの接触回避はもとより、サイバー攻撃による機械の不正操作を防ぐ設計や、万が一に備えて機械を確実に停止できるような仕組みを用意するなど、万全の体制を敷く。