Solution Linkage 通信簿 - 【Solution Linkage Compactor編】小澤建設株式会社【長野県駒ヶ根市】
【Solution Linkage Compactor編】
小澤建設株式会社【長野県駒ヶ根市】
日立建機のICT・IoTソリューション「Solution Linkage」を導入したことで
現場はどう変わったか、経営にどんな影響を与えたか――。お客さまの評価をレポートする。
取材・文/斎藤 睦 撮影/関根則夫
今回のポイント
クラウド型ソリューションで
離れた場所からの状況把握が可能に
やりたいこと、気になることの
共有が製品の改善につながる
ICT施工が普及拡大しても
施工管理の基本は変わらない
専務取締役 福澤 康男氏
当社では早くからICT施工に取り組んでいますが、すべての現場がICTというわけにはいきません。広く活用していくためには建設機械メーカーとの協働は不可欠ですね。
建設機械メーカーと二人三脚で取り組めば
建設現場のICT活用の本質が見えてくる
長野県南部、伊那市を流れる三峰川は南アルプスに源を発し、天竜川にそそぐ一級河川で、天竜川水系としては最大の支流である。その流域の多くは山岳地帯で降水量も多いことから、古くから暴れ川として知られ、幾度となく甚大な洪水被害をもたらしてきた。
そうした洪水による被害の軽減だけでなく、農業用水等の確保や発電への利用などを目的に建設されたのが「美和ダム」だ。しかし流域の地形の特性からダム湖に大量の土砂が流れ込み、長期的にはダムの治水・利水機能への影響が懸念された。そこで貯砂ダムや土砂バイパスを設けるなどして堆砂の減少を図るとともに、堆積した土砂の掘削・搬出が進められている。
駒ヶ根市に本社を置く小澤建設は、この土砂搬出事業を2023(令和5)年より手掛けている。ダム湖の底に堆積した約6万㎥の土砂を、伊那市を中心に10カ所ほどの指定場所に運び込む。指定場所のひとつ、伊那市内で造成中の工業団地では、約6haの土地に土砂を搬入し整地・転圧も担っている。この整地・転圧作業のためにICT施工の一環として採用されたのが日立建機のSolution Linkage Compactorだ。
これはクラウド型の転圧管理ソリューションで、従来は人の目と手でチェックしてきた転圧状況を、リアルタイムでクラウドに記録するというもの。これにより転圧回数の確認や施工管理の手間を大幅に削減できる。さらに遠隔地からでもPCやタブレットでリアルタイムに状況を確認できるため、オペレータだけでなく管理者の負担も減らすことが可能だ。
「これを導入したことで作業工数は劇的に減りましたね」と語るのは、小澤建設専務取締役の福澤康男氏。現場監督を務める小澤建設土木部部長の古瀬渉氏も「施工情報をデジタル化し、離れた場所から複数の現場の施工管理が可能になり、工事全体で生産性向上が図れます」と声をそろえる。美和ダムの現場事務所から造成地までは片道20㎞ほど。その往復が不要になるのも、導入による大きな効果のひとつである。
勉強するより相談を
それがICT活用の第一歩
「ICT導入の動きもあり、まずはやってみようと日立建機の提案に乗ったことが転機。課題であった施工管理の効率化の観点からの提案が合致しました」(福澤氏)。以来、日立建機のさまざまなICTソリューションを導入しているが、製品を指定したことはないという。「こんなことがしたいんだけど、と伝えると日立建機側からいろいろ提案してくれるので、非常に心強いですね」(古瀬氏)。今回も「広大な造成地の整地・転圧の管理を省力化したい」という古瀬氏のリクエストに日立建機が応えた格好だ。
中小規模の建設工事でもICTの活用が進み始めている今、建設会社としてもICT施工への取り組みは課題のひとつでもある。「社内でICTの活用を推進するためのカギは人。そのための人材の育成や採用にも注力していますが、まずは興味を持ってもらうこと。効果が見えれば意識も変わります」(福澤氏)。
ICT施工を手掛ける建設会社では、「勉強しなければ」と考えている現場の担当者も少なくない。古瀬氏は「ある程度の知識は必要かもしれないが、まずは相談してみて」とアドバイスする。建設機械メーカーもその相談先のひとつ。古瀬氏のように、何がしたいのかを伝えることがICT施工への第一歩となり、その効果も実感できるだろう。言い換えれば、そうした相談に親身になってくれるか否かは、建設機械メーカーを選ぶ基準のひとつとも言える。
「やってみたいこと、気になっていることなど、わがままばかり言ってます。もちろん無理と断られるものもあります。それも大事」と古瀬氏。日立建機側としても、要望や使い勝手、課題などを聞くことは、製品の改善や開発につながるのは間違いない。
一方、ICT施工が普及・拡大する中で、古瀬氏は少し気になっていることがあるという。それは施工者側、発注者側双方の管理スキルだ。「我々は手作業の時代から現場を見ているので、万が一データに誤りがあってもどこかで気付きます。ICT施工が当たり前の世代にも、そこに気付いてもらえるよう育てていきたいです」(古瀬氏)。施工の基本を身に付けること――、それは先進技術や最新のノウハウを学ぶよりも、ICT施工の普及には重要であると言えるかもしれない。
土木部 部長 古瀬 渉氏
日立建機の製品で特筆すべきは操作がシンプルなこと。例えば転圧管理システムでは、他社なら10以上の操作が必要なところを日立建機製品はたった3つで済みます。わがままを聞いてもらうだけでなく、使う側に立つという姿勢に好感が持てますね。