見たくなる!日本のすごいインフラ
Vol. 07 魚も人も喜ぶダム脇のロング水路 白丸ダム魚道 (東京都西多摩郡奥多摩町白丸)
白丸ダムは白丸湖(調整池)からの放流水を利用して発電する発電所を備えたダム。JR青梅線の白丸駅か鳩ノ巣駅から徒歩約10分。魚道(地下の水路)の見学は無料だが、曜日限定なので、奥多摩町公式サイトで確認を。
東京の奥多摩にある「白丸ダム魚道(ぎょどう)」は、日本最大級の魚道だ。恥ずかしながら、「魚道」という言葉を初めて知った。
魚道は、魚の往来が妨げられる場所において、それを助けるために川に設ける工作物を言う。高低差が小さいものは自然石を敷いたスロープ状だが、高低差が大きいものは、階段状となる。段差を乗り越えるのは魚も疲れるため、途中で休憩できるようにコンクリートの壁を複数立てるのが一般的だ。
白丸ダムは1963年に運用を開始した。90年代になると自然環境への意識が高まり、アユやヤマメなどの往来を復活させるべく魚道の計画がスタート。建設技術研究所が水理模型実験や魚道設計を行い、2002年に完成した。ダム完成の約40年後だ。
下流の入り口と上流の出口の高低差は約27m。ジグザグに続く幅約2m・長さ約330mの水路でこの高さを上る。休憩用の小さな壁が連続して立つ。
地下部分の水路は見学できるようになっている。ダムを見下ろす展望台の近くに管理棟があり、そこかららせん階段で地下に下りる。20m以上吹き抜けとなったこの階段はスリル満点。水路の長さもさることながら、冒険心をかき立てる魚道施設だ。
宮沢 洋(みやざわ・ひろし)
画文家、BUNGA NET代表兼編集長。1967年生まれ。1990年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日経BP社入社。2016年~19年、日経アーキテクチュア編集長。2020年独立、建築ネットマガジン「BUNGA NET」を運営。著書に『隈研吾建築図鑑』『日本の水族館五十三次』など