日立建機の「信頼の証」
建設機械に求められる重要な価値、それは「信頼」。日立建機の製品は、施工現場の安全に配慮し、生産性の向上を支える大切な役割を担っている。
厳格な品質評価は、その信頼を形にする上で最も欠かせないものである。今回は、確かな品質を生み出す現場の姿を、取材をもとに描き出す。
文/斉藤俊明(p4-5)、斎藤睦(p6-11)
写真/関根則夫
厳しい目で良い製品を世の中に送り出す
製品への信頼を維持していくうえで不可欠な、品質保証という業務。日立建機は建設機械メーカーとしてどのように向き合い、製品の品質を守り続けているのか。
品質保証本部の二人の社員に、その考え方や実際の取り組みを聞いた。
先輩社員たちのモノづくりの姿勢が
現在の“品質”のベースに
田中 栄治
品質保証本部 開発・市場品質統括部
開発試験部 部長
独立した品質保証体制で
失敗から学ぶ取り組みを徹底する
坂本 祐一
品質保証本部
品質企画部 部長
日立建機の品質評価の特色 |
田中:私は入社後、当時はまだ製造していたクローラクレーンの部署に配属され、さまざまな試験を担当しました。その製品が、試験に対して用意された細かな基準を守れているかどうか判断するのが、若手としての日常業務でした。そうした基準が生まれたのは、当時の上司が知るところによると、その10~20年前だと聞きました。納品先で起きたトラブルへの反省を基準に反映していったとのことで、先輩社員たちのモノづくりの姿勢が現在の“品質”のベースになっていると捉えています。日立建機の品質保証に対する考え方の基準は、長い歴史の中でそれほど変わらず、そこに時代に即したアレンジを加えてきた形なのではないでしょうか。
坂本:その歴史に加えて、組織構造も日立建機の品質保証の大きな特徴だと考えます。当社の品質保証に関する体制は少々珍しく、古くから開発評価部門が品質保証部門に属しており、設計開発部門から独立しています。他業種のメーカーでは設計開発部門の中で開発評価を行うことが多いようですが、私が入社する以前からこの体制でした。その点で、設計開発側の視点ではなく第三者的に、あくまでお客さま目線で、妥協することなく評価できる組織構造になっていると思います。ですから試験の基準も、設計開発側ではなく品質保証部門独自に決めたものが数多くあります。
お客さまの声を地道に拾い、 失敗から学ぶことが 製品価値を高める |
田中:品質の評価は試験計画を立てたうえで実施していくのですが、大きく分けると性能試験と信頼性試験があります。性能試験は、設計通りの性能が出るかどうかについての試験で、一方の信頼性試験は、例えば何千時間稼働といった想定のもとで負荷を掛けて行うものです。それに加えて、操作性を判定する試乗評価というプロセスもあります。これは専門の評価者が乗りやすさや動かしやすさを試すもので、その評価が合格にならなければ市場には出しません。日立建機の製品が以前から操作性を高く評価いただいているのは、そうしたこだわりが背景にあるからかもしれませんね。とはいえ、今の時代はお客さまが求める価値も多種多様ですので、そこは毎回悩みながら評価に取り組んでいます。
坂本:当社の品質保証の考え方に、お客さまの声を地道に拾い集め、失敗から学ぶ姿勢が根付いています。完成された製品をいつまでもつくり続けるのであれば、トラブルが起きることも少ないでしょう。でもやはり新しい技術には常にチャレンジしているため、そこには必ず一定のリスクが存在し、残念ながらトラブルが起きてしまうこともあります。だからこそ、失敗から学ぶ姿勢はいつも忘れず大切にしていますし、そこで得られた不具合の再発防止策などはグループ内に水平展開しています。それに加えて、社長も出席する製品改善会議を毎月1回の頻度で実施しています。このあたりも、品質第一に徹し、お客さまに喜ばれ信頼される製品をつくろう、という日立建機独自の取り組みかもしれません。
基本となるベースマシンが 新技術の品質を支える |
田中:今、日立建機は“真のソリューションプロバイダー”をめざして事業に取り組んでいます。ICT建設機械や遠隔操作など新たなソリューションも登場していますが、お客さまにどのようなソリューションをご提供するにしても重要なのはベースマシンであり、私たちは信頼性の高いベースマシンをしっかりつくるところに重きを置いて品質保証の仕事に臨んでいます。新しい技術に基づく機能が加わったとしても、品質管理の考え方や手法自体は根本的に変わりません。そのうえで品質保証本部としては、2030年にお客さま満足度で業界No.1になるという目標を立てているので、そこに向けてより良い製品を世に出していくため最大限力を尽くしたい、というのが私が今思っていることです。
坂本:お客さま目線で考えた時、何より避けたいのは、お客さまが不満足を感じてしまうこと。ですから、例えば製品に不具合があった場合、その根本原因を徹底的に分析し、不具合を二度と出さないようにする、というところにはこだわっています。試験や検査というのは、客観的に見れば直接的に収益を生む仕事ではありませんが、その大切さをきっちり理解している会社だと日々感じます。“お客さまの安全と安心は私たちが守る”という気概で、これからも厳しい視点で製品を評価し、品質保証という業務に取り組んでいきたいと考えています。