動かして、感じて、確かめる
さまざまな稼働現場で求められる性能を確かめるため、昼夜を問わず厳しいテストが繰り返し行われる、日立建機の品質評価の試験。
製品の信頼性を追求する、とある日の試験の裏側を、迫力の写真と現場スタッフの生の声で伝える。
“「不具合が出て残念」ではなく「見つかって良かった」”
浦幌試験場で副所長を務めています。ここでは、国内の日立建機の工場や日立建機ティエラなどの拠点からの依頼で、建設機械の試験・評価を行っています。どんな試験を行うか、その内容は各拠点から依頼としてほぼ固まっていますので、それをオペレータに指示したり、スケジュールや方法を確認しながら実際に試験するというのが我々の役割ですね。試験では、どこに着目して評価するのか、何を重点的に見ればいいのかなど、設計や工場と事前に共有しながら進めています。
浦幌試験場に持ち込まれる機械は市場に出る直前の製品が多く、特に最近は設計精度が上がり完成度も高くなっているので、大きな問題や致命的なトラブルが起こることはほとんどありません。それでも設計段階では分からない、実際に使ってみなければ気づけないような不具合が発生することもあります。こうした不具合が出たということはお客さまのところに行く前に対処することができるわけですから、「不具合が出て残念」ではなく「見つかって良かった」という思いの方が強いですね。
ここでの試験を終えて市場に出た機械が故障もなく評判がいいと聞くとうれしいですし、この仕事でやりがいを感じる瞬間です。
富田 直哉
品質保証本部
開発・市場品質統括部
開発試験部 浦幌試験グループ
主任(浦幌試験場副所長)
宮地 ひかる
日立建機ティエラ
開発設計センタ
“お客さまも私たちも「安全と健康」が第一”
日立建機ティエラの開発設計センタでコンパクトホイールローダの設計を担当しています。設計と言っても2023年入社でまだ社歴が浅いので、今は部品の設計などがメインです。私は試験中の機械のメンテナンスや不具合が出た際の対応だけでなく、オペレータとして乗り込んで走行や掘削の試験も行っています。
稼働試験では、実際に使われる現場と同じような環境下で長時間稼働させ不具合が発生しないかをテストします。また、自分でも運転することで乗り心地や操作性が設計通りになっているかも確認しています。操作性などは工場の敷地でもある程度は試せるのですが、実際の現場のように土ボコリが舞ったり路面がデコボコだったりという環境条件は浦幌じゃないと試せませんから。浦幌試験場へ来て改めて、実際に乗って使ってみないと分からないことがたくさんあるんだなあ、ということを実感しますね。
入社した時から、建設機械の設計で大事なのは「安全と健康」と教えられています。お客さまにとって安全なのはもちろん、つくる私たち自身も安全で健康が第一という意味も含まれます。最近の製品が乗り心地を重視しているのも、そうした考え方の一環だと思います。
“机上の確認だけでは本当の品質は分からない”
入社以来、鉱山で稼働する超大型油圧ショベルやリジッドダンプトラックの設計開発業務を長く担当してきました。現在はダンプトラックカレントグループに所属しています。カレント設計というのは、主に現在市場で稼働している製品で発生した不具合への対応や品質向上などに取り組む業務で、お客さまに機械が渡った後の品質をサポートする仕事とも言えますね。
メーカーにおける品質については、大きく「設計品質」と「製造品質」に分けて語られることがあります。設計品質に関しては、もちろん設計が主導となって品質の改善、向上を行っていますが、製造品質においても、想定した品質を製造段階で担保するのが困難な場合には、設計変更も含め、設計・製造・品証で連携して対処しています。
現在、海外のお客さまからのリクエストに対応するためにリジッドダンプトラックの実機を用いた試験を、浦幌試験場で行っています。近年は解析ツールの性能向上や解析技術の高度化によって、机上での性能確認の精度も向上していますが、実際に動かしてみないと分からない性能や品質もあります。浦幌試験場での実機テストは、壊れない製品を市場に送り出すための重要なプロセスと考えています。
中手 洋平
マイニングビジネスユニット
開発統括部 ダンプトラック設計部
主任技師
櫻井 正寿
マイニングビジネスユニット
開発統括部 ショベル設計部
主任技師
“性能も大事だけど「止まらない」がより重要”
現部署では、超大型油圧ショベルの設計に構想段階から携わっています。新しいモデルの開発では、自ら現場に出向いてオペレータやメンテナンスの担当者、管理部門の人たちなどに要望や意見を伺うこともありますが、これもお客さまが満足する製品を生み出すためには重要なプロセスと考えています。
私が担当する超大型油圧ショベルの場合、多くは海外で使われています。しかし、品質に対する考え方の本質は海外も国内も同じです。我々がつくっているのは産業機械なので、お客さまが望むのは自社の利益に貢献してくれる機械であること。それは、たくさん掘れるとかいろいろなことができるとかの性能も大事ですが、故障や不具合で想定外に止まってしまわないことがより重要なのです。
製品開発においては、複数の部門間で設計内容について確認するデザインレビューを行いますが、品質保証部門が保有する過去に市場で起こった故障やトラブルのデータも設計にフィードバックしています。最近のモデルでは機械のさまざまなデータを収集できるので、実際に現場でどんな使われ方をしているのかを詳しく把握できるようになりました。今後もそうした取り組みを重ねて、より高い品質の製品を提供していきたいですね。