拝啓・現場小町 vol. (27)
各方面の現場でイキイキと輝く活躍する女性にその醍醐味や将来の目標などを伺いました。
文/編集部 写真/関根則夫
福田 晶さん
福田建設工業株式会社
取締役兼ドライバー
2016年に経理担当として入社。ダンプトラックの免許を取得し、ドライバーとしても活躍。
福田 聆さん
福田建設工業株式会社
常務取締役兼現場監督
2021年に入社。2023年からはICT技術を活用し土木の進化をめざす、株式会社MIEZ(ミエズ)を起業。
考え方が違うから互いに補い合える
京都市を拠点とする福田建設工業株式会社は、商業施設や道路の建設・整備、土木工事、産業廃棄物の収集運搬などを請け負う総合建設業だ。
二代目社長でもある父、福田明さんとともに同社を支えているのが、娘の聆さん、晶さん姉妹。姉の聆さんは現場監督と営業などの渉外関係、妹の晶さんは10tダンプトラックのドライバーと経理をそれぞれ兼任している。
「現場では主に発注者との渉外や、現場の工程管理、下請け先との調整を担当。ほか、公共工事の入札業務や、経営方針の策定なども手掛けています」(聆さん)
「私が担当するのは、会社に関わる事務作業のすべて。日中はドライバーとして現場に出て、帰社後に事務の仕事、という流れが多いです」(晶さん)
連携しながら仕事に取り組む二人だが、現職に至るまでのいきさつは対照的だ。幼少期から父の仕事に興味を持っていた晶さんは、会計事務所などで経理と法務のキャリアを積み同社へ入社。一方、家業への関心が薄かった聆さんは、コンサルやPRなどの仕事に就き、国内外を飛び回っていたという。
そんな聆さんが家業に入ることを決めたきっかけは、コロナ禍で実家へ戻ったときに土木建設業界のアナログさに衝撃を受けたことだった。
「重要な書類がFAXで届くことや、作業報告書や見積書を手書きで作成している様子を見て、『このままでは技術の革新に乗り遅れる』と危機感を覚えたのです。でも、今から私が変えていけば、業界の先を行けるかもしれないと思ったんです」(聆さん)入社後は社用メールアドレスのドメインの取得、コーポレートサイトの刷新、作業報告アプリの開発など、業務のIT化を推進していったという聆さん。だが、最初の一年半ほどは、新しいやり方を取り入れるたびに晶さんと衝突を繰り返したという。「私がデジタル音痴なこともあって、『何でやり方を変えるの?』って抵抗感があったんです。でも慣れたら『こんなに楽なんだ!』って」(晶さん)「晶が現場の声を率直に伝えてくれるから、運用への課題が見えるし、思考の整理もできる。新しい取り組みへの共通認識を持ってもらうことは難しいですが、晶が現場とのバランスをとってくれるので心強いです」(聆さん)
現在の課題は他社との差別化と、若い人材の確保。その打開策として模索しているのがICTの活用だ。「遠隔施工などが実現すれば、働き方の可能性が広がって、人も集まりやすくなると思うんです。ICT建機の操作からシステムの管理までを一括で行えるようになれば会社の付加価値にもなる。実現するためにも知識を身につけ、率先して現場を回せるようにスキルを磨いていきたいです」(聆さん)
福田姉妹のオフタイム
家族でゴルフへ いろいろな感情を発散
一緒に写っているのは父・明さん。二人とものんびり楽しむというよりは、自分との闘い。「部活並みにストイックになりすぎて、結構泣いたりします」(聆さん)。「そんなに練習していないくせに、うまくいかなくてイライラしたり悔しがったり。そんな自分がちょっと面白い」(晶さん)。
福田建設工業株式会社 ICT事業部 齊藤大輔さん
常に元気でポジティブな二人は、職場のムードメーカー。仕事の取り組み方もストイックで、細かい部分への目配りができるところも尊敬しています。帰社時の「おかえり」の声にも癒されています。