Solution Linkage 通信簿
【Solution Linkage MG編】 梅田土建株式会社【京都府船井郡京丹波町】
日立建機のICT・IoTソリューション「Solution Linkage」を導入したことで
現場はどう変わったか、経営にどんな影響を与えたか――。お客さまの評価をレポートする。
取材・文/斎藤 睦 撮影/関根則夫
今回のポイント
少人数の小さな会社こそ
新しい技術に挑戦すべき
デジタルやツールの活用が
作業効率向上の大きな武器に
最初に手間やコストが掛かっても
後の工程が抜群に楽になる
代表取締役 山田 潤氏
我々のような小さな会社こそICTなど新しいことに取り組むべきだと思います。施工効率や省人化だけでなく、安全にも大きく貢献してくれますから、ぜひトライしてほしいですね。
新しいことへの飽くなきチャレンジ精神でめざすのは企業規模の拡大ではなく少数精鋭
「とにかく少人数で効率的に業務を進めたい、それがICTに取り組む理由ですね」。そう語るのは、1969(昭和44)年に創業し京都・京丹波町に本社を構える、梅田土建の代表取締役・山田潤氏だ。
山田氏が梅田土建に入社したのは2005年。土木建設業界全体が景気低迷していたころだ。祖父が創業、父が会社組織にした家業の経営を、その時点では引き継ぐつもりはそれほど強くなかったという山田氏だが、「このままではマズイ」と感じたそうだ。「ウチのような小さな会社では人もなかなか増やせないし仕事も増えない。何とかしなければと思いましたね」。
そんなころに導入したのが、手元作業員を使わずに1人で測量や出来形管理ができる自動追尾型のトータルステーションだった。「この時にツールの活用や工夫次第で、少ない人数でやろうと思えばできるということに気付けました」と山田氏。その後CADや3D点群処理システムなども積極的に導入。ICT施工に欠かせない設計図の3次元データの制作など、施工に関わるほとんどの業務の内製化を図っている。
「ただ、3DもICTも最初はその効果に懐疑的だったんです。勉強してなかったせいもあるのですが、本当にそんなにうまくいくのか、と。でも実際に使ってみると、これが非常に便利でした」(山田氏)。現在では受託工事のほとんどをICT施工で取り組んでいる。
ICTとチルトローテータが少人数・効率化の強力な武器に
大阪・交野市の郊外、急傾斜に盛土された頂上で、建設機械が土砂の掘削・搬出を行っている。この現場は急傾斜のがけ地を解消し、広場を造成する工事で、実際の施工を梅田土建が担当している。ここで稼働している油圧ショベルには、普段見慣れたバケットとは違う部品が取り付けられていることに気付く。これが山田氏にとって少人数・効率化のもう一つの武器であるチルトローテータだ。
これは、油圧ショベルのアームの先端に装備するアタッチメントで、バケットなどを左右45度傾けたり、360度自在に回転させて作業できる。国内でこれほどまでに導入しているのはめずらしい。車両本体を掘削する向きに正対させる必要がなく、狭小地での作業が大幅に効率化できる。さらには、従来は掘り残し部分を手元作業員が人力で掘削することもあったが、それもなくなる。
「最初はレンタルで試してみました。社員にも使ってもらったのですが、なかなか使いやすいということで、早速導入しました」と山田氏。現在では保有機材のほとんどにチルトローテータを装備している。「特に小規模・狭小の現場では非常に有効なツールです。なにより、作業員の負荷が大幅に減るのが最大のメリットですね」。
交野市のこの現場にはもう1台、注目したい油圧ショベルが稼働している。それが、日立建機が2024年5月より販売を開始したSolution Linkage MGを組み込んだ、20tクラスの油圧ショベルだ。Solution Linkage MGは、日立建機の油圧ショベルに後付けできる3Dマシンガイダンスキットだ。3次元設計データとバケットの位置情報を比較してその差を運転室内のモニタに表示・ガイダンスさせる。ここではレンタルでの導入だが、既に山田氏をはじめ社員が実際に現場で作業に使っている。
「まだレンタル機を導入してから間もないのですが、誤差が1~2㎝と高精度だしレスポンスもいい。これでチルトローテータが付けば言うことなしですが…」(山田氏)。同社にとってICTとチルトローテータなどのツールは、事業を回す両輪になっているようだ。今後も新機能や新技術はどんどん試して取り入れていきたいという。
とはいえ、デジタル化や新しいツールの導入は、特に小さな企業では負担が大きいのではないか。「確かに最初は手間もコストも掛かるかもしれません。しかしその後が抜群にラクになるんですよね」。会社を大きくすることはめざしていないという山田氏。少数精鋭で未来の土木建設業界を切り拓いていく山田氏の飽くなき挑戦はこれからも続いていくのだろう。
2024年6月、山田氏は梅田土建本社がある京丹波町に労働局の認可を受けた技能講習教習所「丹波トレーニングセンター」を開設した。ここでは建設機械の運転や操作の資格取得だけでなく、ICT施工やチルトローテータなどの講習も行う。未経験者も受け入れているため、若い受講者も少なくないそうだ。なかなかDXが進まないと言われるこの分野だが、デジタルネイティブ世代が増えることで、土木建設業界の進化が期待できる。
同社の事業方針が、とくに各地域で土木建設業界を担っている中小企業のロールモデルにもなるだろう。
Solution Linkage MGは精度が高くモニタも見やすくて操作性はいいですね。特に法面の施工などでは使いやすいと感じました(山田司氏)。日立建機に乗り慣れているせいもあると思いますが、新しい機種でもすぐに馴染みます。社長も話していましたが、これでチルトローテータが使えれば鬼に金棒ですね(田中氏)。
梅田土建株式会社
土木部長
山田 司氏
梅田土建株式会社
テクニカルアドバイザー
田中 志音氏
Solution Linkage MGは精度が高くモニタも見やすくて操作性はいいですね。特に法面の施工などでは使いやすいと感じました(山田司氏)。日立建機に乗り慣れているせいもあると思いますが、新しい機種でもすぐに馴染みます。社長も話していましたが、これでチルトローテータが使えれば鬼に金棒ですね(田中氏)。