超大型油圧ショベルEX2000-7を発売
2020年10月22日
油圧回路を刷新して、作業量を維持しながら燃料消費量を最大19%低減
日立建機株式会社(本社:東京都台東区、執行役社長:平野 耕太郎/以下、日立建機)は、超大型油圧ショベルEX1900-6をモデルチェンジし、作業量を維持したまま燃料消費量を最大19%低減したEX2000-7を2021年10月より発売します。
EX2000-7は、現在発売中のEX-7シリーズで実現した構造物の耐久性の向上、ICTやIoTの活用による修理・点検でのサポート機能に加え、油圧回路の刷新や作業モード選択機能の追加などにより高い燃費性能も実現しました。大幅な燃料消費量の低減により、環境負荷とライフサイクルコストの低減に貢献します。
1979年に超大型油圧ショベル第1号となる「UH50(運転質量159トン)」を発売して以来、日立建機の超大型油圧ショベルは世界中の鉱山現場で稼働しており、作業能力や信頼性、耐久性などの面で高い評価をいただいています。また、安全性と生産性の向上やライフサイクルコストの低減といったお客さまの課題解決のため、ICTやIoTを活用した鉱山機械や鉱山運行管理システムなどのソリューションの提供も行ってきました。
EX2000-7は超大型油圧ショベルの中でも比較的小さいクラス(運転質量193トン)で、特に燃費性能に対するニーズが高い中・小規模鉱山などでの需要が見込まれます。
EX2000-7の主な特長
1.燃料消費量を最大19%低減
- 操作パターンやフロント姿勢に応じて、作動油流量を制御
操作パターンやフロントの姿勢条件に応じて油圧バルブ内部の作動油流量を制御するシステムを新たに開発し、日立建機の超大型油圧ショベルに初めて採用しました。
油圧ショベルは掘削した鉱物資源などをダンプトラックへ積み込んだ後、次の掘削に向けてバケット先端の位置決めを行うため、オペレータはフロント(ブーム、アーム、バケット)と車体旋回のそれぞれの動作の速度を操作レバーで微調整します。その際、従来の油圧回路では、油圧ポンプが供給する作動油のうち余剰となる分は作動油タンクに戻しており、エネルギー効率の面で改善の余地がありました。本システムを適用し、油圧ショベルが掘削・旋回・放土を繰り返す動作パターンやフロントへの負荷のかかり具合に応じて、フロントの各シリンダーや旋回モータにつながる作動油流量をそれぞれ個別に制御し、エネルギー効率を改善することで、燃料消費量を抑えることができます。
- 電子レギュレータで油圧ポンプの吐出流量をきめ細かく制御
EX-7シリーズでは、車体に搭載する油圧ポンプの全てに電子レギュレータを装備し、操作レバーの操作量とエンジンの稼働状態に応じて、油圧ポンプの吐出流量を適切に制御します。
オペレータによる操作レバーの操作量の調整や機械にかかる負荷の変化に合わせて、油圧ポンプの吐出流量を個別にきめ細かく制御することで、燃料消費量の低減に寄与します。
- 現場の状況に応じた3つの作業モードの選択機能を採用
中・小型の油圧ショベルに搭載している作業モード設定機能を採用しました。現場の状況や作業内容に応じて「HPモード」「PWRモード」「ECOモード」に切り替えることができます。
① HP(ハイパワー)モード:硬い岩盤の掘削など、重作業を行う際に使用します。EX2000-7の最大の作業量を発揮します。
② PWR(パワー)モード:通常時に選択する作業モードで、HPモードより作業量を1割程度抑え、燃料消費量を低減します。
③ ECO(エコノミー)モード:負荷の少ない作業時に選択します。PWRモードより2割程度作業量を抑え、燃料消費量をさらに低減します。
上記の通りエネルギー効率を改善することで、作業量を維持したままエンジンサイズを最適化することができました。その結果、前モデルであるEX1900-6に比べて、燃料消費量を最大19%低減*1し、CO2排出量を1台あたり年間460トン*2抑制することができます。
2.耐久性や信頼性、メンテナンス性の向上
- フロント構造の強化
フロント構造物のブームとアームの接合部分および車体フレームを、超大型油圧ショベルの上位クラスと同じ構造にしました。ブームとアームの接合部分は、250トン以上の超大型油圧ショベル同様、接合ピンを2本に分割して大幅に軽量化*3し、強度も向上しました。これにより、点検・メンテナンスにおいてピンを交換する際の安全性や作業効率が向上し、ライフサイクルコストの低減に寄与します。また、車体フレームは、従来モデルの稼働データから負荷条件を分析して、さらなる改善を進めました。作業中の負荷を分散させることで、耐久性の向上を図ります。
- ファンを適切に制御するオイルクーラーとラジエータにアップグレード
EX-7シリーズでは、作業の負荷による作動油の温度の上昇に比例して、オイルクーラーのファンの回転数を増やし、作動油の温度を下げます。同様に、機械の周囲温度とクーラント(エンジン冷却水)の水温に応じて、ラジエータのファンの回転数も制御します。これにより、油圧機器のシールの熱による劣化や、内部の部品の熱膨張による亀裂や焼きつきを予防し、油圧ポンプ、シリンダー、モータの信頼性を向上させるとともに、エネルギー効率も改善し、燃料消費量の低減にも貢献します。
3.将来にわたり鉱山現場を支える機能を拡張
EX-7シリーズは、IoTとAIを活用し、鉱山現場の課題解決に貢献する「ConSite® Mine」(2021年中に提供開始予定)を適用することで、機械のダウンタイムの抑制と安定稼働の維持をめざします。さらに、2021年度から実証実験を開始する超大型油圧ショベルの遠隔操作や運転支援システム、自律運転機能の後付にも対応しており、将来的にはダンプトラック自律走行システム(Autonomous Haulage System:AHS)との連携で、鉱山現場の自律型オペレーションによる高い安全性と生産性の両立を図っていきます。
日立建機グループは、今後もお客さまの身近で頼りになるパートナーとして、お客さまの課題である「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト低減」に貢献していきます。
主な仕様
項目 | EX2000-7 | |
エンジン | メーカー | カミンズ |
型式 | QST30-C | |
定格出力(kW/min-1) | 746/1,800 | |
バックホウ | 運転質量(kg) | 193,000 |
標準バケット容量 新JIS (m3) | 12.0 | |
最大掘削力(バケット)(kN) | 701 | |
最大掘削力(アーム)(kN) | 628 | |
ローディングショベル | 運転質量(kg) | 192,000 |
標準バケット容量 新JIS (m3) | 12.0 | |
最大掘削力(バケット)(kN) | 737 | |
最大掘削力(アーム)(kN) | 700 | |
標準小売価格(バックホウ) | 見積対応 | |
標準小売価格(ローディングショベル) | 見積対応 |
注)単位は、国際単位系(SI単位)による表示。
*1:HP(ハイパワー)モードでの動作に基づく。
*2:エンジンの定格出力や燃料消費量および負荷率から単位時間あたりの燃料消費量の差を算出し、年間のCO2量に換算したもの。
*3:BE-フロント(バックホウ型の重掘削仕様)のみ対応。
商標注記
- ConSiteは、日立建機株式会社の登録商標です。
関連情報
- 2018年7月5日発表 ニュースリリース
- 2020年7月16 日発表 ニュースリリース
- 2020年9月30日発表 ニュースリリース
以上
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