歯車の再利用可否の判定手法を共同開発
2021年5月20日
日立建機株式会社(本社:東京都台東区、執行役社長:平野 耕太郎/以下、日立建機)と国立研究開発法人物質・材料研究機構(所在地:茨城県つくば市、理事長:橋本 和仁/以下、NIMS)は、このたび、建設機械の部品の一つである歯車について再利用可否の判定手法を共同で開発しました。
本手法を活用することで、再生部品を製造する工程において、歯車の再利用可否を定量的な基準に沿って判断できるようになります。これにより、これまで廃棄(スクラップ)していた歯車が減少するため、CO₂排出量の抑制および産業廃棄物の削減が可能となり、循環型社会の実現に貢献します。
日立建機の部品再生事業は、お客さまの使用済み純正部品(油圧シリンダ、油圧ポンプ、走行装置など)を修理や定期交換時に回収し、分解・整備後、新品同等の機能保証付きの再生部品として、お客さまにリユースいただく事業です。
再生部品を製造する工程で、例えば減速機の場合は、複数の歯車の組み合わせで構成されているため、分解後に各部品の再利用可否や、どの程度の加工・修理を行うべきかを判断する必要があります。歯車の再利用可否は、表面の傷、摩耗の度合いなど、目視などによる外観上の検査で推定寿命を判断していたため、定量的な基準を設けることが課題となっていました。
本手法は、日立建機 ライフサイクルサポート本部 再生事業部とNIMS 構造材料研究拠点環境疲労特性グループが共同開発したもので、2019年から取り組んできました。さまざまな稼働時間の建設機械から取り外した減速機の歯車にX線を照射して、表層組織の変化を測定する試験を重ね、疲労の蓄積による金属組織の変化と残留応力*1の変化に相関関係があることが分かりました。
この相関関係に着目しながら、表層組織の変化を定量的に測定するNIMSの技術と日立建機の再生部品に関するデータや知見を組み合わせることで、歯車の損傷の有無を定量的な基準で定め、再利用の可否を判定できるようになりました。なお、本手法を用いた場合、超大型油圧ショベルでの部品の定期交換*2において、1台当たり約14トンのCO₂排出量の低減が見込まれます。
本手法は、日立建機の土浦工場と常陸那珂工場において、2021年1月より試験的に導入を開始しており、2021年度中に本格的な導入を予定しています。将来的には、再生事業を行っている日立建機グループの海外拠点への導入も計画しています。日立建機とNIMSは、これからも共同開発を継続し、再生部品のデータベースとAIを組み合わせて、より高精度かつ迅速に歯車の再利用可否を判定する手法の開発をめざします。
*1:歯車の生産過程で内部に残留する金属組織の形態と応力(ストレス)のこと。使用負荷により大きさや分布が変化する。
*2:対象を超大型油圧ショベルEX2600-6とし、平均稼働時間内の定期部品交換に再生部品の使用を想定して試算。
関連情報
- 日本金属学会誌
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