平岩建設株式会社
埼玉県所沢市
技士長
三池 誠一 氏
会社概要
昭和21年の創業以来、所沢市を拠点として事業を拡大し、ゼネコン部門とサブコン部門を併せ持つ総合建設会社として、建築、土木、リニューアル工事を手掛けてきた。地域のトップランナーとしての豊富な経験と実績を基に、「安全・安心」「高品質」「より早く」「より安く」を追求している。建築工事では、文化・教育施設等の官公庁施設から工場、倉庫、医療施設に至る民間工事まで、様々な建築物の建設を手がけている。
建築根伐に3次元マシンコントロール(3DMC)
土木工事の世界では利用が浸透してきたICT建機。自機やバケット爪先の位置を3次元で把握し、設計データ通りに掘削する。丁張を大幅に削減できるほか、手元作業員も不要になる。
このICT建機を建築の根伐工事で活用しているのが平岩建設だ。根伐工事とは、建築工事の際に基礎梁や柱を収める位置を掘削する工事だ。従来は、建築の根伐平面図をもとに、掘削位置を手元作業員が水糸やラインマーカーを使って地面に白線を描く。オペレーターは、その白線を目印にして掘削し、掘削深さは手元作業員がレベルなどを使って掘るごとに計測してオペレーターに指示をしている。
この方法だと、バケット周辺に作業員が数人つくため、細心の安全確認が必要になる。地面に描いた白線は、建機が移動するときに踏んで消えてしまい、引き直すこともある。
平岩建設では、こうした現場の課題を解決するために、建築根伐に3DMCを導入した。3DMCに建築根伐の平面図を取り込み、運転席のモニターにリアルタイムにバケット位置が表示されるようにした。根伐図にはその場所の掘削深さが表示されるので、その深さを入力して3DMCで掘削すると、平面図どおりに施工が完了する。
現場では「オペレーターが単独で掘り進めていけるため、2割増しくらいのスピードで作業できていると思う」「これまで使用してきた中で、間違いが起きたことはなく、手戻りの仕事がないので労務費的にも助かっている」と評価する。
実際、重機周りに作業員がいないので安全性は向上し、労務費の削減や掘削精度の向上にもつながる。また余掘り量が減り現場搬出土の削減が可能になる。
導入プロセス
具体的に、建築根伐工事にICT施工を導入するプロセスを見てみよう。
まず、人工衛星を利用して建機の現在位置を把握するため、現場にGNSS(全地球測位システム)の基準局と工事基準点を設置する。
一般的に建築の施工では建物内部の位置関係が重要で、外部敷地との位置関係は設計図に表示されていない。ICT施工では、建機の現在位置をGNSS衛星から取得するため、緯度経度情報と建築の設計図面との位置関係を紐づけする必要がある。この作業がGNSS基準局や工事基準点の設置だ。
次に建築設計図面のうち、柱や基礎梁を作るための掘削場所を示した「根伐図」を使って、ICT建機に搭載する平面図データを作成する。このデータはICT建機の運転席にあるモニターに常時表示され、バケットの位置、深さも重ねて確認できる。根伐図には、非常に多くの線がCADで描かれているので、施工に必要な線や数値だけを残してデータ化する。データはUSBメモリなどを使ってパソコンからICT建機に取り込む。
これらの準備が終われば、いよいよ掘削に入るが、毎日の施工前に、現場にあらかじめ設けておいた位置精度確認用の基準点にICT建機の刃先を当てて、位置情報が正しいかを確認する。
このプロセスで、ICT建機を建築根伐工事で活用できる。
これからの展開
今後の展開について技士長の三池氏は、「作業員の高齢化や技術者不足などから、建設業界は担い手不足が懸念されているが、ICT建機の機能を活かすことで、未来にとって前向きな機械になってくれると思う」と話している。
これまでICT建機は、土木中心に使われてきたが、建築の現場でも活用することで、安全性の向上や精度の高い施工による生産性の向上につながっていく。
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