池田建設株式会社
長野県伊那市
会社概要
池田建設株式会社(代表取締役社長:池田 幸寛)は、長野県伊那市に本社があり、創業は昭和34年であり、2024年に65周年を迎えた。生産性向上のために社内でDX推進の専門部署を設置し、魅力ある建設現場をめざす新しい取り組みであるi-Constructionを積極的に導入している。ドローン、レーザースキャナを用いた測量や、AR・VRを用いた現場の3次元化などの新技術を取り入れて施工し、「令和3年度 国土交通省中部地方整備局長表彰」をはじめ、数多くの表彰を受賞し高い評価を受けている。
Solution Linkage Survey
流木処理における体積計測を簡素化
今回、池田建設がSolution Linkage Survey(以下、SL-Survey)を導入したのは、長野県伊那市の一級河川・天竜川水系三峰川に建設された美和ダムにおける「令和5年度 美和ダム流木処理災害復旧工事」である。美和ダム湖内に流れてきた流木を「回収・集積」して「処理」する工事を実施している。
豪雨や大型台風によってダム上流の樹木が大量の流木となってダム貯水池へ流入している。流木は放流設備の損傷や放流出口を塞いでしまう要因となり、河川の浸水被害を軽減するための洪水調節に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
このようなリスクを軽減するために定期的に貯水池に流入した流木・ゴミなどの処分を行っている。頻発する自然災害によってダムの治水機能がさらに注目されるなか、流木処理の重要性はますます高まっている。
従来の計測方法における課題
従来の流木収集の出来高計測は、集積された流木を定型に積み上げた体積(空隙を含む)を、巻き尺等で直接計測を行っていた。通常の土工における土山の整形作業とは違い、形状が複雑な流木を積み上げて定型にするには、土山の整形よりも、計測「角」や「ライン」を出すには流木の重ね方を変えるなど、バックホウオペレータの技術が必要である。また、計測をするために「角」に釘などの目印を付けるなど、手間や時間がかかっていた。さらに、巻き尺などで直接計測を行うには、足場が不安定な集積された流木の上に登る必要があり、計測作業者の怪我のリスクもあった。
こうした課題を解決するため、日立建機日本からスマートフォンを用いた土量計測ソリューションのSL-Surveyを提案され、導入することを決めた。
従来の事前準備を省いて、流木の体積計測を可能に
SL-Surveyは、スマートフォンで位置情報を取得しながら計測対象物のまわりを一周し動画撮影することで、体積計測が可能となるソリューションである。計測対象を整形することなくそのままの状態で計測できるため、従来の整形作業と計測工数を大幅に簡素化できると考えた。計測前の角出しにおける複雑な作業も削減し、効率的な体積計測を可能とした。
体積計測工数を削減し、積まれた流木に登る危険な作業も不要に
従来の巻き尺などで直接計測する方法では、3人で約4時間かかっていた。整形作業にも約4時間、写真撮影の約4時間も含めると、体積計測するまでに合計20時間ほどを要していた。
SL-Surveyを導入したことにより、1人で約2時間30分で整形作業から体積計測までを完了することができ、約1/10の工数で作業完了することができた。また、発注者への提出用の写真は32枚から2枚に削減することができた。さらには複雑な木材の整形作業も最小限になり、木材の上に登っての危険な作業も排除できた。
立ち会い検査準備と重機作業停止が2日から半日に削減
発注者の立会検査を行うためには前日の午前中までに整形作業を終え、午後に巻き尺を用いて計測が必要だった。その後は図面を作成し体積算出までを行うと、立会検査は午後になり、重機作業が翌日にならないと再開できなかった。整形作業から含めると最大で2日間も重機作業が出来なくなることもあった。
SL-Surveyを導入したことで、午後から簡単な整形作業を実施し、30分で計測・体積計測を行い図面の作成も無くなった。次の日の朝に発注者の立会検査を1時間で終えることが可能になり、半日の重機作業停止のみにすることができた。稲村氏は、「いままで巻き尺を用いての直接計測は時間もかかり、めんどうな作業が多かった。SL-Surveyを導入してからは、すべての工程ですごく楽になった。こういったICT技術を覚えたら、もう今までのやり方には戻れない。」と導入効果を振り返る。
「環境・ひと・まち」をテーマに質の高いものづくり
「創業以来堅実な経営」をモットーとし、様々な環境の変化を乗り越えながら一歩一歩前進している。官公庁を主な取引先として、目立たないが地道な活動を続け、安定的かつ順調に業績を拡大し、幾多の優良工事の表彰も受けてきた。「私たちの仕事は夢とロマンのある、しかも創造の喜びと完成の充実感を最も得られる仕事ではないかと思っている。」と池田社長は話す。
人の和を大切にし、自由な人間性豊かな社風の中で、個人の感性と創意が生かされる環境づくりに努め、社員一人ひとりの幸せを考え事業を展開している。今後も長年築き上げてきた信用と実績を大切にし、未来へ向けて自社変革を行い、魅力ある建設業をめざして新たな飛躍発展を図っていく。