株式会社河野建設
代表取締役社長
宇野 貴哉 氏
当社では小・中学生の建設機械の試乗体験会を通じて、将来の担い手となるファン形成を図りつつ、地域との絆を深めています。
工務部長
芦田 伸一 氏
今回の工事は、正確で安全な掘削はもちろん、土砂搬出のダンプトラックの運行状況や積込量、運搬量などの正確な把握が重要でした。ICTによる「見える化」が、パワーを発揮しましたね。
京都府の京丹波町に本社を構える河野建設は、創立70年の歴史を誇る。自治体やゼネコンが発注する公共土木工事において、「一つ一つの仕事に全社一丸となって取り組む」という姿勢に沿った丁寧な仕事には定評がある。
代表取締役社長の宇野貴哉氏は、こう語る。
「社員一人ひとりが、現場監督を担えるスキルの高さが当社の自慢です。その反面、若手不足や技術継承の面で問題を抱えていたのも事実。そこで、少ない人数でより大きな仕事を安全かつ高精度に進めるために、早い時期からICT施工に取り組んできました」
京都北部では政府の国土強靭化地域計画の一環として、十年来の懸案事項だった由良川水系での洪水被害対策が進行。実績が評価され、同社が川幅拡張と土砂除去による河川改修工事を受注した。「国土交通省直轄工事では、ICT施工が必須条件ですが、今回は特に3次元設計データに基づく現場施工はもちろん、土砂搬出のダンプトラックの運行状況や積載量管理、土砂仮置き場での土量計測や収益把握まで、『工事の上流から下流を貫く見える化が図れないだろうか』と吟味を重ねました。その結果、Solution Linkageによる一気通貫体制がベストプランだという結論に達したのです」
スマートフォンやPCの画面上で全工程のプロセスを把握
現場にはICT油圧ショベルのZX200Xと荷重判定装置LOADRITETM ※を搭載した油圧ショベルZH200を投入。さらに、ダンプトラックにはSolution Linkage Mobileを搭載。スマートフォンやPC上でどこからでもリアルタイムな運行状況が確認できる体制を築いた。
現場の総指揮を執る工務部長の芦田伸一氏は、その選択は大正解だったと力説する。「実は、日立建機とのお付き合いは初めてでしたが、そもそも油圧ショベル自体が乗りやすく、オペレータからの評価も高い。ICT建機は丁張り等の付帯作業や人員も要らず、のり面形成なども3次元設計データに沿って正確で迅速に施工できます。土砂の積み込みは、LOADRITETM ※による計測に若干の時間を要しますが、過積載などの心配もなくコンプライアンスと成果の見える化が図れました」
また、従来多くの工数を要していた土砂仮置き場の土量計測では、スマートフォンで周回撮影するだけで計測できるSolution Linkage Surveyを導入。
「これまで土砂の山を測量し、その結果を基にCADで処理していた手間が、周囲をぐるりと撮影するだけで完了するのですから、大助かりです。他社の人たちからも『すごい!』とうらやましがられているんです」(芦田氏)
併せてAR機能で現場の見える化をサポートするTrimble SiteVisionを導入。これにより土砂仮置き場では地形変化を時系列で確認したり、施工現場では図面データと現状を重ね合わせて整合性を確認するなどの活用も図られている。
今回の取り組みは、大きな生産性を上げるとともに、社員の負荷や工数が大きく軽減された。宇野社長はこう続ける。
「すべてのソリューション間で、一貫した連動体制ができており、現場スタッフも日常使い慣れたスマホで確認できる点が決め手となって、Solution Linkageを採用しました。導入の敷居の低さと操作性と機能性が合わさることで、今後のICTの推進や普及を加速させると確信しています」
同社は、2020年に高校を卒業した新入社員を2名採用。ICT機器への興味や最新施工への憧れから、さらに若手の採用へとつながるものと期待している。
※LOADRITETMはTrimble Inc.の商標です。