国土開発工業株式会社
神奈川県厚木市
関東地方整備局ICTアドバイザー
ICT担当技術課長
田巻 友和 氏
土木本部土木部
村尾 香穂 氏
会社概要
昭和48年6月に日本国土開発株式会社から重機土工部門が分離独立する形で誕生。同社の伝統である重機土工のDNAを活かしながら建設機械の製造から施工、維持管理まで一貫して「安全で安心な建設サービス」を提供する総合建設企業として社業の発展を通じて社会に貢献することを目標に企業活動を展開している。
ICTについても、ICT施工、BIM/CIMの内製化や、建設DXを活用した生産性向上を積極化させており、技術系女性社員の登用を始めとした働き方改革にも取り組んでいる。
国土開発工業はこれまで、ICT土工における施工計画書作成、UAVによる起工測量から3次元設計データの作成を始め、ICT建機での施工、UAVでの出来形計測から電子納品一式の内製化などを一貫して進めてきた。自社の保有機械は、ICT油圧ショベル15台、ICTブルドーザー10台、転圧管理システム4台に加え、GNSSローバー3台や測量用のドローン7台にのぼる。
一方、日立建機は、専用の自動認識対空標識とUAV付属の自動撮影ソフトを使って空中写真を撮影しアップロードすれば、クラウドで点群データ等を生成することができる「Solution Linkage Point Cloud(以下、SL-PC)」サービスを提供している。
実施工現場の現況取得に活用
今回、国土開発工業の田巻氏は、実施工現場の現況取得にSL-PCを活用し、クラウド型点群生成と従来の点群生成との比較を行った。導入のきっかけについて「日立建機日本から製品の説明を受け、作業の効率化、人手不足の解消と、高スペックPC等の追加システムの購入が不要なことから導入させていただいた」と説明する。
同社はすでに、SfM(ストラクチャー・フロム・モーション)ソフトウエアを導入済みで、自社による空中写真測量を行っている。作業は主に村尾氏が担当しており、生成した点群については、別の点群処理ソフトを使ってノイズ除去や不要物除去などを行っている。
SL-PCは、クラウド上で点群生成処理を行うため、利用者がSfMソフトウエアを自身で購入する必要がなく、解析に必要な高性能パソコンも不要。また、専用の自動認識対空標識を利用すれば、SL-PC内で標定点・検証点を自動判別して写真と紐づけるため、時間のかかる標定点調整作業を省略できる。
村尾氏は「写真1枚ずつ標定点・検証点の位置合わせを行う必要がないのが一番楽。解析する手間が少ないので工数が少なくなるほか、自分のパソコンに大量のデータが残らないので、ハードディスクの容量も節約できる」と評価する。
作業効率が大幅アップ
一般的な空中写真測量の点群化手順は、現場で撮影計画を作成してマーカー(対空標識)を設置し、座標を計測する。設置が完了したらドローンで飛行・撮影し、SfMソフトウエアで写真を解析、点群モデルを出力する。その後、完成した点群のデータ解析・処理という流れになる。
村尾氏は、「SfMソフトの作業時間はトータル約80-90分ほどかかる。ソフトで解析を行うと写真の枚数によってはかなり時間がかかり、他の作業ができなくなるため効率が下がってしまう。また高スペックなパソコンでしか作業ができないため、当社では1台のみで解析をしている」という。
SL-PCの場合は、写真の取り込み・CSVデータの取り込み行い、そのデータをアップロードすれば、クラウド上で自動解析が始まる。自動解析中は作業が不要で、解析が終わったらデータのダウンロードをして終了となる。
村尾氏は「実際に作業するのは、トータルで約15-20分ほどになり、アップロードしてしまえばほったらかしでいいので、拘束時間が格段に減り、他の作業ができることで、効率がアップする」と、評価している。
Solution Linkage Survey
また田巻氏は、現場仮置き土の土量算出に「Solution Linkage Survey(SL-Survey)」も活用した。道路新設における直轄工事の現場で、仮置き土の土量算出を行い、比較対象としてUAV測量と結果を比較した。
GNSSローバーで仮置き土の法尻を計測して計測結果を基に基盤面を作成、その基盤面を基に盛土体積を算出してSL-Survey、UAV写真測量のデータを比較した。
田巻氏は、「約530m³程度の盛土だったが、ドローンでの写真測量の結果と比べて、SL-Surveyは較差1m³弱になる。今回はドローン計測と同じぐらいの精度を確認した。経験豊富な管理者は歩測、目測による土量算出が出来るが、経験が少ない若手管理者にとって根拠のある測量ツールの一つになる。SL-Surveyを使用することで土量計測や日々の進捗状況が把握できるし、TS計測やドローンを飛ばす手間なく簡単に確認することができるので、作業の効率化が図れる。今後計測技術の一つとして活用したい」と話している。