丸福建設株式会社
監理技術者
瀬口 貴弘 氏
会社概要
同社は昭和24年の創業以来、長い歴史と伝統により培われた高度な技術力、発想力、組織力を強みに、道路、河川、砂防、港湾、ダム等公共施設の建設や高層住宅、公共建築物の建設など、安全・安心な社会基盤整備や快適な街づくりに広く貢献してきた。
建設事業を通じた社会貢献を第一に考え、お客さまの満足と信頼、社会からの高い評価を獲得し、技術と経営に優れた企業として永続的な存続をめざしている。
今後も全社一丸となって「技術の向上」を図り、「和」の精神とともに『丸福建設ならではの技術力』を生かした『プラスのもの創り』をめざす。
鹿児島県の桜島は、現在も活発な火山活動を続けており、火口周辺の浸食や噴火に伴う火山灰等の堆積によって、土石流が発生している。丸福建設はこの地で「令和3年度黒神川除石工工事」を九州地方整備局から受注し、日立建機のICTソリューションを活用して、ダンプトラックの運行管理やICT建機による施工を進めている。
この工事は、黒神川下流域の民家や道路を保全するため、黒神川貯留地で安全な場所まで土石流を導くための工事を行うほか、土石流によって河川内にたまった土砂をとりのぞき、土石流の氾濫を防ぐ。とりのぞいた土砂は、ダンプトラックを使って黒神川堆砂地と有村溶岩展望所近くの有村土捨場に搬出している。
ICT建機とSL-Mobileを導入
取材当日の現場は、マシンコントロール仕様の油圧ショベル1台、マシンガイダンス仕様の油圧ショベル2台とダンプトラック24台が稼働していた。工事の掘削土量は約7万m³に上る。1回の土石流でこれくらいの土量が動くため、毎年同様の工事が発注されているという。今年はお盆前後に季節外れの長雨が発生し、雨による土石流も多く、負担が大きくなっている。
現場を統括する瀬口所長は、「受注時は、ICT対象工事ではなかったが、受注後に発注者と協議してICT施工を採用した。ダンプトラックの運行管理については、日立建機日本から安全に運行管理できるSolution Linkage Mobileを提案いただき、過積載防止に生かしている」と話す。
ICT施工の魅力
瀬口所長の感じているICT施工の魅力は、「3次元のマシンガイダンス・マシンコントロールを使えば、掘削断面の丁張設置がいらないのが大きなメリットだ。職員の仕事が軽減できるし、従来と比べてかなり楽になっている」とのことだ。
ほかにも、施工が進んで出来形が整ってきている場所に、新たな土石流が流れ込むことがある。その時は、再度、流れ込んだ土砂の現況を計測して施工数量を計算し、発注者と協議して変更していた。
「これまでは断面管理だったため、雨雲が近づくと作業をやめて断面測量を行い、発注者の立ち合いを経て数量変更を行っていた。だが、自社でUAVを使った空中写真測量を取り入れ、点群処理ソフトで数量計算をするようになって、この部分が非常に楽になり手間は半減した。従来だと20mごとの管理断面で計算していたが、点群処理であれば1mピッチで正確な数量把握が可能になった。これまでに空中写真測量による変更協議は2回行っているが、順調に協議は進んでいる。」
運行管理と過積載防止
ダンプトラックの運行管理については、「以前から過積載の対策は必要だった。これまでは自重計を利用したり、ダンプトラックの荷台に積み込み限界の線を引いたり、移動式トラックスケールを導入して総重量を測っていた」という。
今回の現場では、Solution Linkage Mobileで運行管理を行っているほか、油圧ショベルに取り付けるサイテックジャパン(株)の荷重判定装置「LOADRITE」で、積み込み量を管理している。オペレーターが油圧ショベルの運転席から、ダンプトラック1台ごとの積載量をチェックしている。
瀬口所長は「積み込み重量のチェックについては、車検証記載の数値を確認するなど厳重に管理している。油圧ショベルオペレーターは、積み込む前に重量の確認、調整ができるので手戻りも少なくなる」とメリットを強調する。
運行管理面では、「地域住民からスピードを落としてほしい、と要望いただいた場所に制限速度を設定し、ダンプトラック運転手にアナウンスが流れるような設定をしている。実際に運転手の行動を確認したが、管理者が不在でも、ちゃんとエリア内では速度を落として運転してくれていることが嬉しい」と話している。
瀬口所長は、「ICTの活用は、働き方改革にもなり次回入札にも役立つ。ほかの社内現場は外注している点群処理だが、この現場は初めて内製化にチャレンジしている。ここで育った職員が、会社全体にICTを広めてくれると思っている」と、若手の職員に期待を込める。