株式会社丸高
山形県酒田市
土木工事部 土木課 課長
佐藤 拓己 氏
土木工事部 土木課 技術主任長
小松 洋平 氏
会社概要
昭和21年10月初代社長が建設業に進出して70年以上の歴史がある同社は、山形県酒田市にて国土交通省や県発注の土木事業および建築事業を経営基盤とし、数々のプロジェクトを成功に導いている。また土木課の佐藤課長は、令和2年にはみちのくi-Construction奨励賞を受賞した。
経営理念である「丸高精神」は、常に「人格の向上」と「技術の研鑽」に励み、社業を通じて、社員と社会の「今の幸せと未来の幸せ」を創り出していくことを経営の目的として、時代に合わせたさまざまなチャレンジを行い地域の発展に力を傾注してきた。
最上川下流河道掘削事業
平成30年8月、前線の影響により東北地方の日本海側で激しい降雨となり、累計雨量は多い所で300㎜を超過、山形県を流れる最上川においては氾濫危険水位を超える出水となった。最上川下流部において「防災・減災、国土強靭化」のため、洪水氾濫による著しい被害を防ぐため、河道掘削を実施し安全性の向上を図っている。
事務所からの施工管理で現場に赴く時間が削減、重機周りの危険箇所も把握
同社が請け負った「最上川下流遊摺部地区河道掘削工事」では、掘削土量8,200㎥の掘削・運搬を担っており、水中の不可視部分の施工を行うにあたり、出来形管理を考慮しICT建機を取り入れた。施工は、3次元設計データをICT建機へ入力し施工を進めたが、現場内ではたびたびオペレータと工事関係者との作業の確認が行われ、場合によっては現場事務所から現場に駆けつけることもしばしばあった。日立建機日本からの提案で、車載カメラ映像をいつでもどこでもクラウドで閲覧可能なSolution Linkage Work Viewer Cloud(以下 SL-WVC)の紹介を受け、佐藤氏は現場から離れた事務所で利用できるとピンときた。佐藤氏は「車で現場と現場事務所の距離は約10分、現場管理の観点で効率化が図れると思った。ICT建機を活用して、施工性・安全性・管理の部分で楽になったが、人手不足で事務作業も多い。現場に行かなくても施工・作業の状況が把握でき、離れた場所から状況を確認できるのは良いアイデアだと思う」と話す。「事務所から一歩も出れない日もあり、そんな時はタイムラプスで一連の流れを確認する」と語るのは小松氏。現場では、朝礼の場で一日の工程を確認するが、場合によっては勘違いや思い違いで別作業をすることも少なくない。「打ち合わせに無い行動は事故が多発する傾向にある。SL-WVCを利用すれば、不安全行動や、決めごと通りに行えているか確認できる」現場では定点カメラを使って現場管理を行っているが、細部や物陰に隠れた部分が見えないことがある。SL-WVCではオペレータの視線で施工部分を見ることができるので、より多くの情報を得られることが利点だ。
本工事による創意工夫提案
公共工事は、請負工事を適正かつ効率に施工し、工事に関する技術水準の向上と、請負業者の適正な選定および指導育成を図ることを目的に、工事成績評定が行われており、工事成績評点で高得点を取ることにより、優良な業者だと認められるメリットがある。丸高は創意工夫という観点からSL-WVCを取り入れた。佐藤氏は「以前ヘルメットにカメラを付けて録画することはやったことがあったが、リアルタイムで見られなかった。重機にカメラを付けてリアルタイムで現場状況を確認できると聞き、作業員が危険エリアに入った場合、事務所から注意喚起できると考え、現場の安全面や生産性の向上で活用した」
佐藤氏は「今後も、ICTの可能な工事であれば、発注者と協議して積極的に導入していきたい。人手不足を実感しており、特にオペレータの担い手が不足している。新入社員も多く入るが定着率が低いので、ICTや最新の技術を活用し、施工性・安全性・管理の部分で活用していきたい」と語る。同社は、今後も新しい技術を活用しさまざまな創意工夫を図っていくだろう。