株式会社マツナガ
埼玉県春日部市
代表取締役
松永 純一 氏
重機土木部
鈴木 翔 氏
松永 純一 氏のコメント
「若い人財が夢をもてる会社、魅力的で自慢できる仕事」にしていかなければ、業界の明るい未来はありません。ICT施工を推進し、業界革新への契機にしていきたいと願っています。
株式会社マツナガは埼玉県東部の春日部市に本社を構え、関東一円での土木工事を担う。環境保全を重視する同社は、建設工事に伴う発生土の有効活用に取り組み、再資源化を積極的に進めている。代表取締役の松永純一氏は「国土を活用する仕事だからこそ、環境には特に気をつかうべきだ」と語る。環境保全に対する思想は、社名頭文字の「M」が、中心にある地球を守るという意を込めた同社のロゴマークにも表現されている。
現場で稼働する建設機械においても、低燃費でCO2排出削減に有効なハイブリッド油圧ショベルを導入している。「日立建機がハイブリッド油圧ショベルを出した2014年から、開発にも協力しています。当時の建設業界は現在のように環境課題の認識が浸透しておらず、SDGsも知られていない時代でした。ハイブリッド機導入に早い段階で踏み切ったことが、結果としてお客さまに選ばれる強みにつながりました」
安全意識の向上と仕事への誇りを根付かせるために
マツナガの社員の平均年齢は38歳。高齢化が進む建設業界で、若手が多い理由を次のように明かす。
「建設現場には危険が伴いますが、1%でも安全に近づくならその投資は惜しみません。全ての機械に、作業者の接触事故を防止するための人感センサーカメラを取り付けています」
安全性向上に向けた開発に注力する日立建機が、2020年に発売した「エアリアルアングル ステップⅢ」( 物体検知+動作制限システム ) も同社では導入済み。現在、受注を開始している最新機種、 ZX200X-7には障害物を検知し機械をストップさせる機能を搭載した、「エアリアルアングル ステップ Ⅳ」がオプションとして搭載されており、この最新機種も導入予定だ。
さらに、オペレータ1人に1台、新車を提供しているのも同社の特徴だ。「自分の愛機だ」という意識が生まれ、日常的な洗車や清掃、メンテナンスも徹底。仕事もより丁寧になるなどの効果がでているという。
「社員には自分の会社に、そしてこの仕事にプライドをもってもらいたい。業界のイメージアップや改革は、そこから始まるのだと思います」
建設基礎工事におけるICT施工の有用性を実感
同社は現在、建築ICT施工に力を入れ、施工実績を重ねている。i-Constructionは、土木工事での実績は多いが建築での施工はまだ少ない。特に民間工事では普及が進んでいないのが実情だ。
「公共工事はICT施工が定着しつつある一方で民間工事はまだこれからです。まず当社が先行事例を築き、普及加速の契機になればと考えました」
もちろん、その背景にはデータに基づく正確な施工や効率化、作業中の機械まわりの人員を減らすことによる安全性向上など、業界の働き方改革を加速させたいという思いがあった。 2018年にZX200Xを導入して以来、都内のスポーツ施設や物流倉庫などにおける建築根伐りののり面掘削にあたった。現在は、日立建機の龍ヶ崎工場の社屋増設工事で建築ICTの施工を進めている。作業内容は、平面図CADをICT建設機械に取り込み、機械のタッチパネルディスプレイに表示された通りに掘削するというものだ。工期や安全性、コストともに、仕上がり精度アップが実感できたと語る重機土木部課長の鈴木翔氏はこう続ける。
「免許取得から日の浅い25歳の新人と中堅のオペレータで、2Dマシンガイダンスを搭載した ICT建設機械と従来機の比較試験を実施しました。双方遜色ない結果で、ICT施工の魅力が体感的に理解できました」
ICT施工の過渡期の現段階では、ノウハウの蓄積や定着のためにも、2Dガイダンスで素地づくりをしてから、段階的に3Dマシンコントロールに進むのも有効だと同社は考えている。
「別の現場でも平面のCADデータを生かしながら、高さだけはオペレータが任意設定する工法を採りました。建築基礎の場合、土工に比べて図面変更が多いのですが、修正済みの平面図の入れ替えだけで対応可能です」。鈴木氏はデータの扱いの容易さを評価する。「2Dガイダンスで簡易的な ICT施工を取り入れるなど、小規模施工で使う良さも理解して、まずはICT施工の普及を促すべき」と松永氏は締めくくった。