水新建設株式会社
富山県富山市
会社概要
「環境に真心をこめ 地域社会に 潤いと豊かさを」、創業40年を超える水新建設株式会社は、土木・解体工事・産業廃棄物リサイクル業を主に展開しており、富山のインフラ基盤を守る地元建設会社として、安心・安全に住むことができる街づくりに貢献している。直近の施工実績には国土交通省発注の道路改良工事や、農水省、富山県発注の農地整備工事などがあり、これまでに多数の表彰を受けている。
Solution Linkage Mobile
ダンプトラック30台の土砂運搬 運行管理を用いた創意工夫
岩木新地区道路改良その3他工事は、大沢野富山南道路の整備を行うための工事の1つだ。運搬経路は交差点が連続し、慢性的な交通渋滞と追突事故が発生するため、それらを減らすことが本工事の目的だ。
水新建設は本工事で盛土工を実施、複数の地区から盛土用の土砂を搬入することとなった。現場付近は交通量が多い上に、盛土箇所から土取場まで20km以上離れているところもある。ダンプトラックが土取場から戻ってくるまで重機オペレータは別の作業にあたることとなるが、ダンプトラックの到着タイミングを正確に見通すことは困難であり、余分な待ち時間が発生する恐れがあった。
手間を抑えつつ、ダンプトラックの運行管理と土砂運搬作業の効率化が図れないか、施工管理を担当した土木部の山本氏は日立建機日本からダンプ運行管理ソリューションSolution Linkage Mobile (以下SL-Mobile)」の提案を受けた。
SL-Mobileはスマートフォンや車載専用GPS端末の位置情報を活用することで、現場の管理業務を効率化するソリューションだ。前者は専用アプリを起動するだけで、後者はダンプトラックのシガーソケットに差し込むだけで利用できる。現場関係者は常に重機やダンプトラックの位置を確認できることに加え、あらかじめ進入通知エリアを設定することで、重機オペレータにダンプトラックの到着を通知できる。
山本氏は、ダンプトラックに車載専用GPS端末、重機オペレータと警備員にスマートフォンを持たせることで、現場にいながらリアルタイムに運行状況を把握できる環境を整えた。
「SL-Mobileを導入して一番よかった点は、重機オペレータと警備員の待ち時間がなくなったことだ。ダンプトラックの到着タイミングが読めることで、それまで安心して他の作業にあたったり、休憩を計画的に回したりすることができた。」と山本氏は振り返る。
SL-Mobileは、人件費削減にもなったという。「導入後は警備員の交替要員を用意する必要が無くなった。交代要員を含めた170人に対して実働人員は136人となり、人件費 を20%削減できた。」と経済性への効果を教えてくれた。
同社は、福居地区道路改良その2工事でもSL-Mobileを活用し、約30台のダンプトラックの運行管理の効率化に成功した。導入を決めた中島氏は、「ダンプトラックのうち、先頭・中間・末尾を走る車両に車載専用GPSを設置することで、ダンプトラックがいつ現場に戻ってくるのか見通すことができる。費用対効果をみて選択できるのがよかった」、「現場見学会で発注者や同業者に運行管理の画面を見せたところ、大変好評だった」と話し、導入のメリットを強調した。
Solution Linkage Survey
ほ場整備の土量収支予測 ~スマートフォンで表土剝ぎ後の土量計算~
水新建設の創意工夫は土砂運搬に留まらない。富山県農林水産部から、ほ場整備工事を請け負った同社は、土量計測作業を簡単にする方法を探していた。ほ場整備工事では、表土剝ぎで集積した土量を常に把握し、後工程で土量が不足しないかを確認する(土量収支を計る)必要がある。仮に土量が不足する場合、基盤掘削で帳尻を合わせることとなり、発注者や協力業者との調整に時間を要することとなる。上記を予防するために、頻繫かつ正確な土量計測が求められ、その作業に時間を要することが予想された。
このような背景から土量計測を簡単に行う手段を探していた藤井氏は、日立建機の土量計測ソリューションSolution Linkage Survey(以下、SL-Survey)に注目した。SL-Surveyはスマートフォンで計測対象を撮影するだけで土量計測ができるソリューションだ。撮影した動画をもとにクラウド上で3次元データを作成し、土量計測や計測結果のレポート出力ができる。従来の計測方法とは異なり、あらかじめ土山を整形する必要がなく、500㎥ほどの集積土であれば15分程度で計測可能だ。
SL-Surveyを利用した藤井氏は、導入前後の変化を教えてくれた。「検証用に集積土を1つだけ整形し、従来の計測方法とSL-Surveyで計測した土量を比べたところ、差がないことが確認できた。その後は整形せずSL-Surveyで計測した」「1つの山を15分くらいで計測できるのでとても便利だった。夏場の計測は体力的につらいのでとても助かった」
藤井氏はさらに続ける。「従来の計測方法と比べて測量の人工が1日あたり2人から1人で済んだ。重機で整形を行う必要もないため燃料費も削減でき、費用面でも大きく貢献してくれた。土量収支の過不足も起きず、発注者から高く評価いただいた」
土量計測はときに勘や経験にも左右される難易度の高い作業であるが、ICTを活用することで簡易にできることを教えてくれた。
ICT活用がもたらす土木業界のイメージアップ
水新建設のめざす未来の建設現場とは?ほ場整備で土量計測作業を効率化した藤井氏に伺った。「若手や女性が働きやすい環境を整えることで、昔の土木のイメージを変えていけるはず」、「その鍵となるのがICTの活用であり、当社はレーザースキャナーなどのICT機器への投資や、ICT人財の育成を進めている」という答えが返ってきた。常に創意工夫を忘れない同社。今後も富山地域に根付いた会社として、業界のイメージアップとインフラ整備を牽引してくれるだろう。