株式会社毛利組
島根県浜田市
会社概要
昭和43年の創業以来、「技術と信頼」をモットーに地域社会の発展に貢献してきた毛利組は、島根県浜田市に本社を構える建設会社だ。多くの施工実績の中で、その技術力や創意工夫が評価され、国土交通省から工事成績優秀企業として複数回認定を受けている。ICT活用にも前向きな同社はICT建機を自社保有するなど、ICT施工の内製化にも積極的に取り組んでいる。
株式会社毛利組 隅田 勝幸 社長
現場代理人 佐渡村 誠 氏
令和3年度福光・浅利道路吉浦東地区第1改良工事
島根県内の福光・浅利道路は、島根県大田市と江津市を結ぶ延長6.5kmの自動車用道路だ。国道9号の上記区間は、急カーブや坂道による交通事故が多発しており、地域の生活に与える影響は少なくない。この課題を解決するために福光・浅利道路の整備が進められている。毛利組が施工した令和3年度福光・浅利道路吉浦東地区第1改良工事は、路体盛土工とカルバート工を含む道路改良工事である。本工事は起工測量からデータ納品まで一貫して3次元データを用いるICT施工が採用され、日々の作業進捗を把握するためにドローンによる空中写真測量が検討された。しかしその計画は「高圧電線」に阻まれることとなった。
レーザスキャナ×スマートフォンによる3次元データ作成
現場代理人を務めた佐渡村氏は、当時の状況を振り返る。「当初はドローンを用いた現況把握を試みたが、高圧電線を考慮して断念。代替案として地上型レーザスキャナも検討したが、一度に計測できる範囲が限られ、ドローン空中写真測量よりも時間がかかることがネックだった。」新たな解決策を探していた佐渡村氏は、株式会社原商からの紹介で日立建機のSolution Linkage Survey (ソリューションリンケージサーベイ)と出会う。
Solution Linkage Surveyはスマートフォンで計測対象を撮影するだけで土量計測ができるソリューションだ。撮影した動画をもとにクラウド上で3次元データを作成し、土量計測や計測結果のレポート出力ができる。3次元データを作成する別の手段として、レーザスキャナが挙げられる。レーザスキャナは一度に広範囲を3次元化することができるが、計測からデータの処理までに2~3日程かかるため小規模な計測には向かない。一方で、Solution Linkage Surveyは仮置土など小規模なものであれば30分程度で計測可能だ。
佐渡村氏はレーザスキャナで施工範囲の大部分を計測し、Solution Linkage Surveyで細部を補完、2つのツールを組み合わせることで、「高圧電線対策」と「時間短縮」を両立させた。
3次元データのさらなる活用
毛利組の3次元データ活用は、現況把握にとどまらない。福井コンピュータ(株)が提供するデータ共有クラウドサービス「CIMPHONY Plus(シムフォニープラス)」とSolution Linkage Surveyを連携させることで、現場で作成した3次元データをその場でCIMPHONY Plusにアップロード、遠隔地の関係者とリアルタイムに共有することで、意思疎通を円滑にした。佐渡村氏はCIMPHONY Plusを活用したことで、「手元の3次元データがいつ、どこで作成されたものかが明確になり、管理の手間が省けた」、「切土・盛土の数量把握も容易となった」と話す。
他工種への応用
3次元計測ツールやデータ共有サービスを使いこなし、無事に竣工をむかえた毛利組。今回活用した技術を、圃場整備や浚渫、構造物設置といった他の作業にも応用できないか。その視線はすでに次の現場に向けられている。ICT施工のさらなる内製化を図る同社から今後も目が離せない。