株式会社中筋組
内田 貴弘 氏
会社概要
昭和29年に設立以来、事業の多角化と分社化を積極的に進めており、現在ではグループ7社で建設業を中心に、石油販売や車両整備、リサイクル事業や情報産業にも進出している。ICT施工にも積極的に取り組み、通算で30現場もの実績を持つ。
大きな波にもまれる建設業界の中で、優れた会社として生き、そしてより良い未来を創りあげていくために、経営と技術の最先端を追い求めている。「社会のために存在し、社会と共に繁栄する」が、中筋グループ共通の理念だ。
工事用車両と作業ヤード確保がカギ
島根県大田市で建設が進む山陰道の静間・仁摩道路。中筋組が担当しているのは「令和2年度静間仁摩道路五十猛地区西部第5改良工事」だ。高規格道路を通すための掘削工や路体・路床盛土工による切り盛り土量は延べ5万m³を超え、残土処分量は4万5000m³に上る。
山間部を一直線に切り開く工事のため現場が細長く、工事用車両の通行と作業ヤード確保の両立が、施工管理の肝となっている。
この現場では、搬出土量が多く、最盛期では8台ほどのダンプトラックがフル稼働するが、谷間現場のために掘削工による建機の作業ヤードと工事用道路の位置関係が被ってしまう。さらに現場の奥では別の工事が動いているので、別工区の車両も通行する。そこで盛土先行施工と工事用道路付け替えで作業ヤードを確保し、落石防止用の大型土のうを設置して車両通行帯をつくり、自工区、隣接工区ともに工程への影響を抑えることに成功した。
現場管理を省力化
こうした環境で活躍しているのが、ダンプトラックの運行管理ソリューション「Solution Linkage Mobile(SL-Mobile)」だ。
SL-Mobileで利用しているのは、スマートフォンタイプ3台と車載端末タイプ5台で、これらの端末から送られてくるダンプトラックや建機からの位置データをクラウドに送信し、現場事務所にある大型モニターの地図上で、リアルタイムに位置を把握している。
事務所の大型モニターには、画面の右半分にSL-Mobileの運行管理画面、左半分には現場に据え付けたライブカメラ映像が映し出される。
現場の監理技術者である内田貴弘氏は、「定点カメラとSL-Mobileを併用して、場内・場外の運行管理を行っている。このおかげで現場まで出かける回数が大幅に減らせた。1日0.5~1時間は節約できるし、全体では1~2割ぐらいは工数が減っていると思う。浮いた時間は内業で行う書類作成などに使えるので残業を減らせる」と、働き方改革にもつながっていることを強調する。
「今回でSL-Mobileの利用は二現場目となるが、過積載の抑制につながるし、ダンプトラック運転手の安全運転意識も向上する。今後もシステムを積極的に活用したい」と、メリットを話す。
元請の管理いらずの現場へ
中筋組全体でもICTへの取り組みは進んでいる。すでに30を超える現場で取り組み事例があるが、「ICT機械が現場に行き渡っていくのは、熟練のオペレーターがすんなりICTを受け入れているからだと思う。ただマシンコントロール(MC)機となると13トンクラスからなので、もっと小さい機体でもMCを使いたい。オペレーターの年齢は40-50代が中心だが、同一の設計データを複数の建機に入れておいて様々な大きさの建機でどんどん施工できるようになったらいい。元請の管理もなしでオペレーターが自ら設計通りに仕上げるような世界になれば理想だ」と、内田氏は考えている。
ICTを活用した未来の現場の姿がそこにある。