株式会社ニシノ
岐阜県白川町
会社概要
株式会社ニシノは、昭和10年の創業以来、より「快適で豊かな生活空間の創出」をめざして、土木、法面、舗装などの事業を展開する、地元密着型の建設業者だ。2013年に「岐阜県子育て支援エクセレント企業」、2017年に「ぎふ建設人材育成リーディング企業」として認定されるなど、柔軟な働き方ができる環境の整備や、人材育成にも注力している。
Solution Linkage Survey
ほ場整備の土量収支予測 ~スマートフォンで表土剝ぎ後の土量計算~
久室ほ場整備工事
株式会社ニシノの安江氏が今回、担当するのは、区画整備を通じて水田の面積を広げる工事だ。地域の方々が大型の耕作機械で効率的に農作業を行えるようすることが、工事目的の1つである。33枚の田んぼを11枚の田んぼにする計画で、同社は耕作土の掘削から整地、排水工などを担う。ほ場整備工事は現地に元々ある耕作土や土砂を使用する必要があり、過不足が発生しないように調整する必要がある。この作業は勘や経験が求められる非常に難易度が高いものでで、ほ場整備を初めて担う安江氏に大変な労力がかかった。耕作土に過不足が出ないよう都度、土量計測をしたいが、正確に行うには時間と人手がかかる。可能な限り簡易かつ正確に土量計測ができる技術はないのか。そんな疑問を抱いていた安江氏は、日立建機日本から土量計測ソリューションSolution Linkage Survey(以下、SL-Survey)の紹介を受ける。
SL-Surveyはスマートフォンで計測対象を撮影するだけで土量計測ができるソリューションだ。撮影した動画をもとにクラウド上で3次元データを作成し、土量計測や計測結果のレポート出力ができる。従来の計測方法とは異なり、あらかじめ土山を整形する必要がなく、1,000㎥ほどの集積土であれば1人で30分以内に計測できる。SL-Surveyを使用した安江氏は、導入前後の変化について教えてくれた。「従来、1山の土量を出すために、耕作土を台形に整形(約1時間半)し、そこからテープ測量(3人×30分)と写真撮影(約30枚) を行う。さらに、耕作土は含水比が高いことから整形前に数日かけて乾かす必要があり、テープ測量もその間は待つ必要があった。」「一方でSL-Surveyなら整形の手間が省ける上に、1人で計測できるため非常に楽だった。1か所計測するのに30分ほどで済む。」「計測作業が楽になったことで、耕作土の不足を早期に把握できた。その結果、不足分の工面について発注者と早い段階で協議できた。」と安江氏は新しい土量計測方法を評価する。
導入にあたって発注者とどのような取り組みをしたのか。発注者との試験施工に立ち会った富永氏は「試験施工にあたって、きれいに整形した土山を用意し、従来のテープ測量とSL-Survey双方で土量を計測。結果を比較し、大きな差はないことが認められ、以後SL-Surveyで出力される計測結果(PDF・CSVファイル)を報告書にまとめて提出した」と話す。従来の写真撮影も不要となり、従来のテープ測量と比較して、土量計測時間を86%短縮することに成功、生産性が大幅に向上したという。
新技術の活用と社内への浸透~将来の人手不足に備えて~
新技術を活用して土量計測作業の効率化を図った同社。今後数年にわたって同様の ほ場整備工事が発注される見通しだという。それに対し、今後どのようなことに取り組もうとしているのか、総務部長の錦戸氏が教えてくれた。「ICTなどの新しい技術に興味がある。若手をはじめ社内で積極的に活用することを応援していきたい」「若手が使用している姿を周りの社員もみることで、社内全体に新技術の活用が広がり、長期的には人手不足対策にもつながるはず」、錦戸氏は続ける。「従来のテープ測量が必ずしも精度が高いとは限らないし、高さの計測などどうしても1人では難しい場面もある。従来と新規の手法を比べて、費用や手間の折り合いがつくものを選べるようになればいい」と話す。
新技術に前向きな若手と経験豊富な人材が揃う同社。従来手法を当たり前とせず、創意工夫しつづけることで今後も地域の発展を支える存在でありつづけるだろう。