株式会社尾花組
和歌山県田辺市
代表取締役
谷口 庸介 氏
建設業はあらゆるスキルが必要な仕事。私自身、現場で学ぶことで人間的にも成長できたと実感しています。
土木部課長
松田 孝雄 氏
日立建機のICT施工により工期短縮と精度向上が実現しました。現在、3次元設計データの作成は測量メーカーにお願いしていますが、工事に急な変更が発生すると、データの変更も必要になり時間がかかります。いずれは、自社でデータ作成までできるようにしたいですね。
株式会社尾花組は、和歌山県南部を拠点とした建設会社で、優良工事等施工者をはじめ、数々の賞を受賞している。同社の大きな特長は、技術者を自社で育成するとともに、工事で使用する建設機械のほとんどを自社で所有している点にある。その理由を、代表取締役の谷口庸介氏は次のように語る。
「もしも大きな災害が起きたら、いち早く被災地に入って復旧活動にあたることが、私たち建設会社の責務の一つです。すぐに稼働できる建設機械とオペレータを自社で抱えているからこそ、素早い対応ができるのです」
2017年には、国土強靱化貢献団体として政府からレジリエンス認証を県内で初めて取得。2011年に紀伊半島を襲った台風の際は、土砂災害被災地に真っ先に入り、短時間で道路を補修して救援車両が通行できるようにした。
尾花組は将来を見据え、国土交通省がi-Constructionを提唱する以前から施工におけるICT対応に取り組んできた。
日立建機のICT建機を導入したのは、2017年3月に始まった田辺西バイパス工事からである。以前から、日立建機の機械は、熟練オペレータからの評判がよかったのだという。
「足回りがしっかりして長持ちし、操作もしやすいというのが現場の声でした。そんな日立建機の機械が、ICT施工に本格的に対応したということで導入を決めました」(谷口氏)
迅速なサポートに加えて円滑なコミュニケーションが高評価
災害時の交通確保などを目的に工事が進められている紀伊半島南部の「すさみ串本道路有田東地区改良工事」。この現場で尾花組は、2019年3月から道路土工(掘削・盛土)などの施工を担当している。現場では日立建機の油圧ショベルZX200X-5Bとマシンガイダンスを搭載したZX200-5B、他社製のブルドーザー1台、ロードローラー1台の計4台のICT 建機が稼働。ブルドーザーとロードローラーには、マシンガイダンスを後付けで搭載。位置情報や設計データが確認でき、オペレータの操作をサポートしている。
「従来工法と比べて、ICT施工は丁張が不要なため、測量や設置の手間が減りました。また、のり面整形作業では、頻繁にオペレータが降車して目視確認をする必要がなくなったので、工期だけではなく、安全性も向上しました」。こう語るのは、現場で指揮をとる土木部課長の松田孝雄氏である。
しかし当初、山間部にあるこの現場では、衛星電波の受信状態が安定しないという問題を抱えていた。その対策として日立建機の担当者は、衛星の数を増やすなど工夫を重ねた。「困ったことがあるときに、迅速にサポートしてくれるのがありがたいですね。よく現場に顔を出して困ったことがないか聞いてくれるので良好なコミュニケーションを築けています」(松田氏)
ICT施工の今後の方向性について、谷口氏は次のように語る。「ICT施工の目的を、単に効率化や合理化に置くのでは地域の活性化は望めません。むしろ、地元の雇用を守り、地域活性化につなげていく手段になってほしいと願っています」
ICT施工は経験が浅い人でも、簡単に正確な作業ができる。若い人たちにも土工工事が身近なものになれば、谷口氏の願いも実現できることだろう。