大畑建設株式会社
島根県益田市
会社概要
「人の力が、未来をつくる。」 大畑建設株式会社は、昭和42年の創業以来、地域社会の発展と安心・安全な街づくりに貢献している島根県益田市の建設会社である。「ものづくり」は「ひとづくり」から始まるという考えのもと、技術の向上に加えて精神的な高みをめざせる会社として、全職員の継続的な成長と育成に注力している。2017年に健康経営優良法人として認定を受けて以来、8年連続で本認定を受けている。
工事概要
大畑建設が施工した「令和4年度三隅・益田道路遠田地区第6改良工事」は、山陰自動車道の延伸を目的とした益田市内の道路改良工事で、1年かけて約5万m3の土砂運搬を行う大型の土工事である。本工事では、土質改良した土砂をダンプトラック10台で、大畑建設が別工事として盛土工を行っていた道路改良現場に搬出する必要があった。
ダンプトラックの運搬実績集計に課題
大畑建設では従来、当日の運搬実績をもとに翌日の配車計画を組むために、作業後のダンプオペレータから運搬管理表(紙)を事務所で回収し、夕方以降に約1時間かけて集計を毎日行っていた。本工事では1年間、10台のダンプトラックを管理する必要があり、集計作業の手間に課題を感じていた佐々木氏と豊中氏は、建設機械のリース・レンタル業を営むオーケーリース株式会社(島根県出雲市)からダンプ運行管理ソリューション「Solution Linkage Mobile(以下、SL-Mobile)の提案を受けた。
SL-Mobileを用いた運行管理
【SL-Mobile概要】
SL-Mobileは位置情報を活用することで現場の管理業務を効率化するソリューションである。スマートフォンは起動するだけ、車載専用GPS端末はダンプトラックのシガーソケットに差し込むだけで利用できる。現場関係者はダンプトラックの現在地や走行速度、ルート、駐車位置などの状況をリアルタイムに把握することができる。あらかじめ進入通知エリアを作成することで、交通誘導員や重機オペレータはダンプトラックが現場に到着するタイミングを読みながら作業を進められる。
佐々木氏は、ダンプトラックに車載専用GPS端末、重機オペレータと交通誘導員にスマートフォンを配布。現場事務所のモニターにSL-Mobileの管理画面を投影して、運行状況の把握と運搬実績の管理を行った。
リアルタイムな運行管理による作業効率向上
現場全体の取りまとめを行った佐々木氏は「車載専用GPS端末はシガーソケットに挿すだけで使えるので、運用が非常に楽だった」と話す。「現場にくるダンプトラックは日々変わるので、ダンプオペレータに端末を配布する際は、端末ごとにあらかじめ定めた通し番号と緊急連絡先を記録して管理した。事務所のモニター上で運行状況と運搬実績をほぼリアルタイムに把握できるので、予定外の動きをしているダンプトラックを見つけた際は、迅速に連絡できるようになった」という。同氏はさらに、SL-Mobileの通知機能が交通誘導員や重機オペレータの作業効率向上につながったことを強調した。「スマートフォンをもつ交通誘導員と重機オペレータは、ダンプトラックの接近通知を受けることで作業の中断が減ったり、休憩を計画的にとれるようになったりと、作業効率があがり喜んでいた」と当時の様子を振り返る。
データ活用による現場マネジメント
佐々木氏と共に現場の管理に携わった豊中氏は、SL-Mobileで得られたデータの活用例について教えてくれた。「SL-Mobileはダンプトラックの運転日報をワンクリックで作成できるので、運搬実績の集計にかかる時間を短縮できた」と話す。従来は集計に1日1時間ほどかかっていたが、導入後は1日5分ほどになったという。
豊中氏のデータ活用は集計作業の効率化に留まらない。「SL-Mobileはダンプトラックの走行履歴と1往復ごとのサイクルタイムを確認できる。これが現場のボトルネックを探すことにつながった。データを見れば、道が混んでいたのか?積込に時間がかかっているのか?タイヤ清掃に時間がかかっているのか?などのあたりをつけることができた」。豊中氏達はSL-Mobileのデータをもとに翌日以降の配車計画について話しあった結果、ダンプトラックの台数見直しを行い積込作業の待ち時間削減に成功した。
大畑建設と今後の展望
SL-Mobileを用いた創意工夫で土砂搬出に関わる多くの作業を効率化した大畑建設。今回の事例は同社のICT活用の一端であり、運行管理の他にもICT施工や3次元測量の内製化など取り組みは多岐に渡る。佐々木氏と豊中氏に今後取り組んでみたいことを尋ねると、日立建機の土量計測ソリューション「Solution Linkage Survey」の名前があがった。本ソリューションを用いた転石の体積計測や災害復旧現場での現況データの取得など、新たなアイデアが次々と挙げられた。大畑建設が技術の向上と精神的な高みをめざす会社であることが、その様子にも表れていた。