株式会社大島組
新潟県上越市
会社概要
「豊かな自然、地域を愛する心、積み重ねた技術、これからも地域とともに」をモットーに、お客様の立場にたったものづくりを目指している大島組。昭和13年の創業以来、生産施設や商業施設、住宅をはじめ、官公庁の建築・土木工事を通じて、地域社会の発展に携わってきた。大嶋正寛社長は、「良いものをつくるには、いい作り手が必要。作り手を育てることこそが自分の使命」と話す。時代や自然環境の変化に伴ってお客様のニーズが多様化・高度化するいま、経営理念である『確かな技術とまごころでお客様満足の追求』という思いを第一に、技術と人を磨き、持続的に成長する企業を目指している。
大島組は2021年度、国土交通省北陸地方整備局発注と新潟県発注の2件のICT施工にチャレンジした。これまで未経験だったICTの活用は、現場を担当する技術者には大きな挑戦だったが、見事に完遂した。
挑戦した工事は、北陸地方整備局発注の「上沼道鶴町地区軟弱地盤改良その2工事」と、新潟県発注の「令和02年度一般県道横畑高田線地域づくり基盤道路改良工事」の2件。鶴町地区工事は、田地野氏、澁谷氏、磯貝氏が、横畑高田線工事は藤村氏がそれぞれ担当した。
北陸地方整備局は、大島組を鶴町地区工事の実績から「ICT活用工事成績優秀企業」として認定、加えて、ICTの向上を目的に講習会を実施して人材育成に努めた企業を「令和4年度ICT人材育成推進企業」として新たに19社認定、大島組もその1社として選ばれた。大嶋正寛社長は受賞について「ICTに関する人材育成を積極的に行ったことを評価いただいたが、これは日立建機日本のメンバーが何度も現地に足を運んでご教授いただいたことが大きな要因だ」と話す。
上沼道鶴町地区軟弱地盤改良その2工事
鶴町地区工事では、施工ヤードの盛土と地盤改良工にICTを導入した。地盤改良工事に着する前に、地盤改良機が施工しやすいよう基盤面の土工にICT土工を導入。ICTブルドーザーとICTバックホウを使って施工した。またその後の地盤改良工にも、杭の位置出しや杭の施工管理、品質管理にICTを採用した。
基盤面のICT施工では、直営のオペレーターが操作を担当した。田地野氏は「オペレーターからは、始めの一週間に“始めは切り出しの目印がないと困る。モニターだけだと心配で仕方がない”と不安を伝えられた。その後施工を進め、盛土の仕上げに入るころには、オペレーターが丁張レスに慣れてきた」と話す。
土工部へのICT導入は、「生産性チャレンジとしての取り組みだったが、今後、正式な土工の現場に入るときに必ず役に立つ」と思っているという。
基盤面の施工が終了して着手した地盤改良は、「施工履歴を活用するICTとして工事希望型でトライした。地盤改良は道路建設の基礎部分となる。次の土工工事発注もICT活用工事で出てくると思う。監理技術者として一度経験しておきたいという思い」があった。(田地野氏)
ICTを活用した地盤改良工では、平面のXY座標で改良機の先端を掘削位置へ誘導、高さとなるZ値は従来の管理手法で取得した。オペレーターは、改良機のキャビンについている従来の機器操作モニターと、ICT管理用のモニターを併用しながら施工を行う。
田地野氏は「実際の施工では、朝の一本だけ位置出しを確認のために従来の手法で計測した。また外周部だけは、機械の移動がスムーズになるよう従来管理で位置出しを行った」と話す。
また、約300本に及ぶ深層混合処理体についても、掘削時の電流値、昇降速度、スラリー吐出量を記録して管理し、それぞれの改良体の3次元データに帳票を連動して記録した。いわば「独自のBIM/CIM管理」を取り入れている。
施工の位置出しだけでなく、出来形管理でもメリットがあったという。「出来形管理のときに、施工場所の掘り起こしが一切ない。従来方式だと4本分の杭頭を傷つけないように慎重に掘り起こす作業がある。これまでの出来形管理だと、3、4か所で10日程度かかる作業だが、この作業がないことで現場の工程管理に大きく寄与する」と振り返る。
また、この現場では日立建機のスマートフォンを使った土量計測ソリューション「Solution Linkage Survey」を導入、仮置き土や盛土の計測に活用した。この技術は、現場で開催された発注者向けの見学会でも技術紹介された。
横畑高田線地域づくり基盤道路改良工事
一方、新潟県発注のICT施工は、「一般県道横畑高田線地域づくり基盤道路改良工事」で、工事希望型でICT建機施工のみのエントリーで受注した。ICT施工計画書では、ICT土工の5段階のうち、建機施工のみで出来形は従来管理とした。
藤村氏は、「この現場は急なカーブが多く、ICT建機施工は非常に便利だった。工事を進めるにあたり、線形、断面が非常に複雑で、丁張をかけると考えると非常に苦労すると思ったが、3次元設計データを使ったICT建機施工で非常に助かった」と振り返る。出来形計測は、面管理を使わない断面管理を採用したため、従来通りのレベルとテープメジャーを使った計測を行ったという。
実際にICT施工に取り組んでみて「施工計画書、見積もりの作成なども初めてだったため手探りで、ICT活用範囲も建機施工のみだったが、次の工事に向けて少しずつトライする範囲を広げていきたい。細かい話になるが、設計データは舗装までの完成出来形として作成した。だが年配のオペレーターは、自分で路盤、舗装の厚みを考えて土工完成面までの掘削をモニターで行った。最後には、技術者の自分がモニターの使い方を教わるようになっていた」という。
ICT施工は、現場の就業時間にも大きな影響を与えた。「現場事務所には2人が常駐していた。通常の施工現場であれば、現場技術者は日中現場に出て丁張をかけるために、杭を運び、指示をして、事務所に帰ってきてから内業をこなす。だが、ICT施工を採用してからは、丁張かけなどが不要になるため、日中から内業を行える。ICT施工でなければ、ものすごい残業時間になっていたはずだ」と藤村氏は考えている。
大島組は、この2件の現場でICT施工の礎を築いた。現場の品質管理の向上だけでなく、現場の残業時間削減という働き方改革にもつながった。今年度もICTを活用した現場が、大島組を待っている。