小澤建設株式会社
長野県駒ケ根市
土木部 部長
古瀬 渉 氏
会社概要
昭和15年に創業。以来半世紀以上にわたり住宅建築・建設・土木工事などを中心に、創業80周年を迎えた。同社は、信州カラマツを使った「ウッドハウス・健康住宅」を始め、別荘、ペンションの建築に至るまで、あらゆる建築設計・施工を行っている。住宅だけでなく、土木や不動産業務も行っており、豊富な実績と経験で、幅広いアドバイス・プランニングを行っている。地域の自然素材を活用した「地域循環システム」や「CO2削減」にも積極的に取り組んでいる。
ストックヤードで手軽に計測
古瀬氏はいま、長野県伊那市の美和ダム上流で、大雨でダム湖に流入した土砂の搬出工事を担当している。美和ダムは、近年の度重なる大雨でダム湖に大量の土砂が流入してダム機能が低下しており、土砂搬出で機能を復活させる工事だ。現場では、Solution Linkage Survey(SL-Survey)のAdvanced版を使ったストックヤードの土量計測を導入している。
導入の経緯は、「ストックヤードがダム湖の中に位置しているため、大雨などでストックヤードに出水したときに、せっかく浚渫して運び出して溜めた土砂が流されてしまうことがある。出来高をとる前に流されてしまうと、仕事量としてカウントできなくなってしまう。そこで発注者と協議をして、大まかにでも出来高を記録するためにSL-SurveyのAdvanced版を採用した」という。
「現場では、ドローン(UAV)を使って現況を把握することも考えたが、ドローンでは広範囲に標定点を計測する必要があったり、雨が降ると飛ばせないなどの制約が多かった。一方、SL-Surveyなら、夕方から天気を見て計測するかどうか決めることもできる。計測中も、30分間重機を止めるだけなので、現場の負担も小さい。発注者からも、土量計測の頻度を上げて仕事の成果をきちんと残してほしいという要望もいただいている」と、SL-Surveyのメリットを話す。
精度については、「発注者から計測精度を確認してほしいという指示で、実際に成形したストックの山を従来手法で計測した結果と、成形せずにSL-Surveyで計測した数値の差が約4%に収まっていた。測量で土量計測すると時間と費用が掛かるが、SL-Surveyは概略の数字をつかむためには十分なので、引き続き利用したい」と感じている。
「現場の作業員も、すぐ土量が計算できるのがわかっているので計測する機会が増えている。また作業途中でも計測できるので、残りの土量も現場全員で把握できる。何より測量用具でなく、一般的なスマホで土量を測れるところが魅力になっている。計測者が斜面を登らなくていいので、経験の浅い若手や女性作業員にも向いている」
また古瀬氏は、「SL-Surveyは、災害時にも有効だと考えている。例えば土砂崩れなどが起きた時にこれで計測できれば、土砂搬出に必要なダンプトラック台数や必要な重機のあたりをつけられる。また現場の状況も点群で把握できると思う」とほかの用途でも可能性を見出している。
全社的にICTへ取り組み
「初めてのICT施工は、まだ情報化施工と言われていた7年前、基礎の裏込めの転圧管理に挑戦した。現場の位置関係でGNSS電波が入らず苦労した思い出がある。i-Constructionが始まる前から、現場代理人はICT関連の講習会を受講するようになった」
「受注する工事は発注者指定型のものが多いが、会社としてできることはやっていくスタンスで取り組んでいる。現状では、現場代理人や監理技術者が少ないため、ICTの長所である省力化が実現できるように進めたい。現場で出来形データをきちんととれる人間を育てていきたい」
最後に古瀬氏は、「日立建機は、丁寧に教えてくれるし、現場に対応した提案を出してくれる。今後も一緒にICTに取り組んでいきたい」と話している。