第一石産運輸株式会社
東京都千代田区
生産管理部課長代理
橋口 篤 氏
会社概要
同社は、大正14年(1925)初代社長である越智喜三郎氏により創業、90有余年にわたり一貫して砂利・砂・砕石などの骨材の生産販売業を営み、業界のパイオニアとして今日まで安定した発展を遂げてきた。
骨材は、社会資本の整備・豊かな暮らしに不可欠な基礎素材であり、経済動向を見据えたインフラ需要に確実に応えるべく、限られた資源を有効に活用することが国家的な課題となっている。
同社は、常に骨材資源の開発、リサイクル、品質向上、安定供給に全力を傾けてきたが、さらに新製品開発、関連事業の推進・海外展開などさらなる企業努力を続け、全社員一丸となって改善と改革に取り組み、日々前進している。
今後も与えられた使命の重要性を認識し、社是である「商道を貫き誠を尽くして地域社会に奉仕する」を信念として、誇りと責任と誠意をもって歩んでいく。
工場の効率改善へ
第一石産運輸は、全国各工場の効率改善活動を進めている。骨材・土木・建設等、各業界で顕在化する、担い手不足による人員減少、今後の市場動向といった課題解決に向けた活動だ。
この一環として、埼玉県深谷市にある「埼玉事業部・花園工場」では、取扱製品ごとの原価計算を徹底することにした。骨材業界では、製造業のように、工場内の個別製品ごとの建機消耗品費にまで踏み込んだ原価把握は行っていない場合が多いと思われる。この活動は、原価を定量的に把握して採算性を高める取り組みだ。
花園工場では、主に再生骨材、洗砂、粒度4号から7号までの砕石などを製造・仕入れ・出荷している。製造にあたっては、油圧ショベルやホイールローダーなどが活躍するが、こうした建設機械の損料や、使用する燃料や尿素、バケットツースなどの消耗品費用を製品ごとに詳細に把握できれば、どの製品の利益率が高いかを判断できる。
橋口氏は「建機は工場内のどの仕事にでも対応するのが当たり前なため、製品ごとに工数を振り分けるのは難しい。原価計算をするために、まず工場内を再生原料、洗砂、粒度調整、仕入れ、その他に設定したエリアに分割し、どの建機が何分間滞在して作業を行ったかを記録してエリアごとに割り振り、工場の経費を原料に割り当てたかった」と話す。
作業の記録ができるソリューション
一方で、工場内を走り回る5台の建設機械の作業内容を記録することは簡単ではない。そこで白羽の矢が立ったのが、Solution Linkage Mobile(以下、SL-Mobile)だった。
「工場内で稼働する3台の油圧ショベルと2台のホイールローダーにSL-Mobileの車載端末を搭載して、春の閑散期と冬の繁忙期ごとに、3カ月間の稼働データを記録した。どの製品エリアに何分滞在したか、稼働時間のうち何%を費やしたかを表にして、燃料・油脂費などを製品に案分した」(橋口氏)。
SL-Mobileは、建設機械やダンプに車載端末を取り付ければ、10秒に1回のペースで地図上に履歴を記録する。結果はCSV形式ですべてダウンロードが可能なので、1日の稼働が終わった時点で、その車両の仕事内容が判断できる。
定量化が原価把握のカギ
橋口氏は、「これまでも、どの製品に手間がかかるかはオペレーターの体感的にわかっていた。しかし定量化しなければ原価がわからない。改善できる場所すらわからないのでは、改善につながらない」と、この取り組みの重要性を語る。
今回の原価把握の取り組みで、小さなロットでの出荷が向かない製品が明らかになったという。社内の営業部署に、できるだけ大きなロットで発注してもらうよう働きかけたり、売れない粒径の骨材を売れる粒径に変更するなどの方策も可能になる。
SL-Mobileは、ダンプトラックの運搬回数管理に利用されることが多いソリューションだが、今回の第一石産運輸の取り組みは、生産管理という場面でも活用が可能だと証明してくれている。