丹澤建設工業株式会社
山梨県市川三郷町
丹澤 勇貴 氏
保坂 裕也 氏
会社概要
創業は大正8年3月、丹澤工務所として開業。昭和22年に丹澤建設工業として設立した。102年間、山梨県富士川の河川改修工事や、武川村、白州町、韮崎市を中心に砂防工事を展開、道路や橋梁の建設工事も手掛ける。砂防ソイルセメント工法(CSG工法)の開発にも関わり、建設発生土削減とコスト低減、環境対策にも大きく貢献。また伐採木を炭焼きして、現場から発生する水の水質改善に利用するなど、現場での創意工夫も評価されている。地域に根差す守り手として、町や人の生活・生命・財産を守ることを社是とする。
丹澤建設工業のICT施工の取り組みは、4年前に手掛けた転圧回数などを記録する「転圧管理」から始まった。受注者が希望してICT施工を工事に取り入れる「施工者希望型」で、地上型レーザースキャナーを使った切り出し面の位置出しや、3次元設計データを使ったICT建機による施工などに取り組んでいる。現在、ICT施工経験は4件だ。同社の受注構成は、国の直轄発注が3割、県発注が5割、市や町・民間などが2割で、ほかに建築分野で営繕工事も手掛ける。
現況把握にSolution Linkage Point Cloudを活用
今回、丹澤建設工業がSolution Linkage Point Cloud(以下、SL-PC)を導入したのは、山梨県北杜市の山中で施工する「R2大武川工事用道路法面対策工事」だ。現場は大武川沿いの斜面で、法面を切土してアンカーを300本以上打ち、法枠工を行う。
「着工に際して現場の現況を把握する必要があったが、災害で法面が崩れており、従来方法だと計測に3人工で2日間はかかると見込んでいた」(丹澤氏)という。
丹澤建設工業は、すでに自社でUAV(ドローン)を保有していた。しかし、主に現場の空中写真を撮影することに使っており、UAVによる写真測量の経験はなかった。一方で、3次元の点群を処理するソフトウエアは自社で保有していて、点群を作成できれば、それを生かす環境は整っていた。「そんなときに、ちょうどSL-PCに出会った」(丹澤氏)のだ。
手軽に使える3次元点群を生成
一般的なUAVを使った空中写真測量は、写真撮影後に高性能なパソコンや、高価な「点群生成ソフト」を使って解析する必要があり、初期費用が高額になる。また、せっかくUAVを現場で所有していても、単に高所からの写真を撮るだけに使っているケースが多い。
SL-PCは、UAVを使って施工者自身が現場の空中写真を撮影すれば、専用のパソコンや「点群生成ソフト」を購入せず手軽に3次元点群を生成できるサービスだ。
早速、自社保有のUAVを現場に持ち込んで、現場に対空標識を設置、標識中心の座標計測を行って写真を撮影した。撮影した写真を、計測した座標ファイルと共にSL-PCのクラウドにアップロードし、現場の現況点群が生成された。
丹澤氏は、「標定点を計測するのが少し手間だったが、標定点の自動認識機能があるので、座標を入れてしまえば通常の写真測量よりは楽になっている。点群の生成時間は、早く感じた。気軽に使えていい」と評価する。
完成した3次元の点群データは、施工エリアの面積算出に利用した。施工範囲が決まっていなかったので、法枠施工エリアを決めるために活用した。すでに工事は完了しているが、同社では「今後もICTを積極的に活用して、現場の作業を効率化していく」と意気込む。