戸邊建設株式会社
工事部長
森 竜児 氏
工事部
嶋村 真一 氏
アール・エイチ興業株式会社(茨城県龍ケ崎市)
渡辺 康平 氏
会社概要
戸邊建設の創業は1946年、本社は千葉県野田市で、「野田市に根差し地域に貢献する企業」を掲げて営業している。国土交通省の直轄工事も数多く受注しており、ICT施工の経験も長い。現場事務所にも「地域密着型企業宣言」というパネルを張り、工事を進めている。地元の歴史や情報に強い地域密着型の会社をめざしている。いち早く、月給制も取り入れ土日休みの週休2日を実践している。
ICT建機(Solution Linkage Assist)が導入されたのは千葉県市川市の江戸川左岸で施工した高潮堤防整備工事(施工延長は約600m)で、高潮に対する安全性を確保するためのものだ。工事は、鋼矢板(基礎コンクリートの基礎矢板)を打設して基礎コンクリートや笠コンクリート(鋼矢板の上部に設置)を構築、その後、盛土と法面保護のためコンクリートブロックを張り、土砂を覆土し、坂路や通路を施工して完成する。
現場では、ZX200X-6、ZX135USX-6のICT油圧ショベル2台と、サイトコンパクター(転圧管理システム)、ICTブルドーザー、そして、PATブレードマシンコントロール(MC)仕様のミニショベルZX35U-5Bが活躍した。戸邊建設(株)がICT施工を行うのは、ここで10現場目となる。
取材当日は、堤防坂路の舗装路盤をZX35U-5Bで施工していた。現場を監督する嶋村氏は「PATブレードのMC機能は、幅員の狭い舗装路盤の施工にとても使いやすい。従来は必要だった上層路盤施工での丁張が不要で、高さの指示を何度も繰り返すことも無くなった。隣接する工区と比較しても、施工スピードの速さを実感している」とICT施工のメリットを語る。
また、「若いオペレーターに操作を任せているが、すぐに慣れて自分でPATブレード用のトータルステーションの据え付けから施工までこなしてしまう」と、若い世代のオペレーターとICT施工の親和性を実感している。
協力会社も効果実感
実際にPATブレードMC仕様機の操作を担当しているアール・エイチ興業(株)の渡辺氏は「粗の敷き均しは、慣れれば1回で終わらせることもできる。手元作業員の人数も減らせるので、人手の手配が楽になる。また、ICT建機全般として大きい土構造物や法面などの施工に適している」と感じている。
また嶋村氏は「以前よりも効率は上昇し、若い人に作業を任せられるようになった。若い人はゲーム感覚で建機の操作を覚えていき、自分なりの方法で扱えるようになっていく。各現場の人員が削減できることによって、新規の受注など、より多くの現場を請け負うことができるようになる。ICT施工のありがたみは、やってみればすぐにわかる」と力説する。
加えて「ICT施工により手元作業員が削減され、その分別の作業を進めることができ、現場全体として作業効率が上がる。従来は丁張設置作業や施工状況の確認に多くの時間を費やしていたが、ICT施工で現場管理の時間が大幅に削減され、そのぶん、書類作成などほかの作業を進めることができる」と話す。
本社から見たICT施工
戸邊建設全体のICT施工を担当する工事部長の森氏は、自らも3次元設計データを作成しながら、現場からの相談に対応している。
森氏は、「当社は2016年に、起工測量を含めた全工程にICT施工を取り入れた。ICT建機のブルドーザーと油圧ショベルを導入し、法面整形などの工事を行ってきた。当初は慣れていなかったので、発注者への対応やICT施工計画書の作成、現場での建機キャリブレーションなどで苦労した。その後も河川堤防工事を中心に積極的にICT施工を続け、今回の現場で10件目と導入工事が増えてきた」
「会社に在籍する技術者も全体的にICT施工には慣れてきているが、3次元設計データ作成は、まだ敷居が高いと感じている人が多い。3次元設計は面倒だが、データを作ってあげれば皆が使いだす。外注してデータを作ってくれる会社もあるし、壁に当たった時は、自分で苦労しながら覚えて解決していくことが肝要。そういった面で日立建機グループは、ともにICT施工を進めるイメージでサポートしてくれる」と話している。
「ICT施工は、一度やれば大丈夫」。森氏は、この部分を強調する。「最近の国発注の工事では、受・発注者ともにICT施工に慣れてきているので、協議や手続きもスムーズになってきている。逆に自治体ではまだ浸透しておらず、従来通りの施工が多い。施工者としては、どんどんICTを取り入れて自分のものにし、メリットを存分に享受すべき」と語る。
ICT施工は、取り組めば理解が進み、自分でできる部分が増えてくる。外注していた部分も自分でできるようになり、コストも減らせるのが魅力だ。