東急建設株式会社
東京都渋谷区
所長
小川 正男 氏
会社概要
東急建設の原点は、多摩田園都市をはじめとする渋谷や東急沿線の街づくり。同社は、この原点に立ち、企画提案から新築、リニューアル、建て替えに至るまで、街のライフサイクルに末永く関わっていくことによって、建物ひとつひとつではなく、お客様や生活者の視点で“まち”全体を考え、常に新たな価値の創造に努めている。
そのために、「安心感のある快適な生活環境づくり」を事業領域と定め、今後ますます多様化する価値観に対応し、生活者にとって価値のある商品・サービスを提供し、お客様一人ひとりの夢を共に育み、美しい環境とそれを支える技術、価値観を次世代へつなげ、遺していくことを理念としている。
日立建機は、国内の主要な生産拠点の再編と開発リソースの集約を進めている。その一環として、土浦工場(茨城県土浦市)の「事務管理棟」と「エンジニアリング棟」、龍ケ崎工場(茨城県龍ケ崎市)の「総合棟」をそれぞれ新設している。
このうち土浦工場の「事務管理棟」建設の基礎工事では、日立建機のICT油圧ショベルZX200X-6の3次元マシンコントロール(3DMC)機能を活用した。施工を担当したのは東急建設で、現場を担った小川正男所長に話を聞いた。
東急建設では、建設現場の働き方改革と生産性向上、安全・品質の確保を同時に実現することをめざし、ICT施工の取り組みを進めている。小川氏は「東急建設としてのICT施工は、これまでにも造成工事などの現場で採用されている。また、建築分野でも物流倉庫などで複数の実績もある。自分の現場でICT施工を取り入れたのは初めてだが、良い経験になった」という。
ICT建機で施工したのは、建物の基礎を入れる部分を掘削する「根伐」といわれる工程だ。建築工事の際に基礎梁や柱を収める場所を掘削するもので、一般的には建築根伐の平面図をもとに、掘削位置を手元作業員が水糸やラインマーカーを使って地面に白線を描き(墨出し)、オペレーターはその白線を目印にして掘削する。
一方、掘削する深さは、手元作業員がレベル(水準測量用の機器)などを使って計測してオペレーターに指示を行う。この方法だと、掘るごとに計測するために油圧ショベルのバケット周辺に作業員を数人配置することになり、細心の安全確認が必要になる。
「事務管理棟」の建設現場では、3DMC油圧ショベルに建築根伐の平面図を取り込み、運転席のモニターにリアルタイムに表示される平面図上のバケット位置を確認して掘削することで、手元作業員のラインマーカーによる指示をなくした。また掘削する深さについては、根伐図面に指示されている掘削深さを、地表面からのマイナス方向の目標値として3DMC油圧ショベルに入力して掘削した。
小川所長はこのICT施工について「実際に、施工を目の当たりにすると、墨出しが不要でCAD図面だけで進められることが分かった。機械への図面の取り込みに手間がかからないか心配だったが、計画の途中でも2、3日で3DMC油圧ショベルへの図面取り込みまでできたのがよかった」と評価する。
精度についても「これまでの施工とやり方が違うので、始めは不安もあった。運転席内の3DMCモニターの表示を見たあとに、確認の意味で床付け面(仕上がった面)や釜場の寸法を実際に測定してみたら、かなり高い精度で施工できていることが分かった。3DMCだと掘り過ぎることもなく、施工地盤の直接基礎の載荷地盤面を傷つけないという品質面でもメリットを感じた。」と話す。
今回の施工で最もメリットを感じたのは安全面と工期面だという。「実際に稼働させてからは、通常必要な1、2人の手元作業員がいらず、最終的に監視員1人だけになった。一番安全に注意すべき場所に人が立ち入らなくなったので、安全管理面でも効果がある。手戻り防止やダンプ待ちの時間短縮もあり、見込み工期から3割程度の短縮ができたと思う。3DMC油圧ショベル用の衛星補足などの現場条件が合えば、今後担当する現場でも、ICT施工を取り込んでいきたい」と小川所長は話している。