ナガヤス工業株式会社
埼玉県草加市
代表取締役
大根田長政 氏
工事部
大根田康仁 氏
会社概要
ナガヤス工業は昭和51年の創業以来、埼玉県草加市を中心に建設工事を通じて地域に貢献できる会社であることを心掛けてきた。昨今では、地震やゲリラ豪雨など自然の脅威に対し、災害に強い街づくりが求められている。同時に、建設工事に求められるニーズも変化し多様化してきた。
同社は、ICTや多能工を始めとする新分野に積極果敢に挑戦し、経験や知識を積み重ねて技術力を向上させてきた。人々から信頼され必要とされる企業をめざし、良質な社会基盤の整備に社員一丸となって取り組んでいく。
体力と根性では長続きしない
「昔から建設業では“体力と根性、技は見て覚えろ”といわれてきた。しかし現在は若い人が入職せず入社しても長続きしない。今後はさらに人口自体も減少するので、業界を維持するためにはやり方を変えるしかない」
大根田長政社長は、自社だけでなく建設業界全体の行く末について考えている。
大根田社長が社内で進めている具体策は多岐にわたる。まずは週休2日制の実施。年間104日間の休日を社内カレンダーを整備して取得させている。今年のゴールデンウイークには10連休を実施した。
「日々疲れていては新しいことも頭に入っていないし、その気力も湧かない。他産業並みに週休2日制を実施してモチベーションを上げる」と、業界では異例の制度を導入している。またさらに日給月給制も改め、完全月給制を導入、10年以上前から社会保険にも加入させた。
大根田社長は「経営的には大変だが、若い人が希望を持てば必ず結果は出る」と考えている。
ICTは待遇改善の原資
「これらの取り組みは元請け直営だからこそできる。しかしこの制度を維持するには、これまでより5%以上の売上確保が必要だ。その原資がICTの導入だと考えている」
大根田社長は、ICTの導入で施工の効率を上げ、従業員一人ひとりの生産性を向上、売上や利益率を改善して建設業の魅力を底上げしていくというスパイラルアップの考え方を実践しているのだ。
ICT施工は丁張・水糸をなくし、現場監督の仕事を効率化する。手元の検測員も不要で、場合によっては監督が施工もできる。
さらに「ZX35U-5B PATブレード MC仕様機」は、複雑な操作が必要な排土板の操作が自動で、車両系の特別教育・技能講習を終えれば熟練者でなくても整地が可能だ。
「展示会で製品を見たときに衝撃と可能性を感じた」と大根田社長は振り返る。
PATブレードMC仕様
PATブレードは、 Power Angle Tiltブレードのことで、排土板(ブレード)を通常建機の上下動作に加えて、チルト、アングル動作も可能にしたブレードだ。このブレードを、トータルステーションでリアルタイム半自動制御し、施工目標面の仕上げで効率的な作業を実現する。運動場の施工、生活道路などの小規模舗装工事の上層路盤整地に威力を発揮する。
多能工という考え方
この機体には、ブルドーザーの施工経験がない現場監督が搭乗した。搭乗した現場監督は「自分にはブルの経験がないが、設計データを入れれば目標となる高さに施工ができた。自分は現場を監督する立場だが、今後オペレーターと監督との垣根がなくなってくるかもしれない」とコメントする。
ナガヤス工業では「多能工」という取り組みも進めている。大根田社長は「当社は、下水や水道、フェンス、舗装、型枠、左官も側溝も自社の社員で施工できるのが強み。それぞれの社員の本業を1として、他の職種を担当すると8割の出来高になったとしても、外注で発生する待ち時間が短縮されたほうが効率は上がる」と説明する。
「今後は働き手が減ってきて、間違いなく人件費は上がってくる。そうすると工事費全体は膨らんでくるので、ICTの機材代金は相対的に薄まってくるはずだ。今のうちにICTを習得しておく必要がある」
大根田社長が抱くのは「社員にとって、土木を面白い仕事にしていきたい」という思いだ。