株式会社宮本組
兵庫県姫路市
代表取締役
宮本 活秀氏
重機車両部 ICT施工課 課長
目抜 義晴氏
会社概要
業界の中でも早くからICT施工に取り組んできたのが株式会社宮本組だ。2015年12月には、国土交通省による「i-Construction」の推進に先立ってICT施工課を設置している。
ICT施工のいち早い導入の背景には、土木建設業界を取り巻く課題解決への期待があった。「1つは、熟練オペレータの不足です。ICT施工で操作が半自動化できれば、さらに若手や女性に門戸を開くことができます。もう1つは、安全性の向上です。作業の確認など施工現場で人が関わる場面を減らすことで、事故を防止できると考えたのです」と代表取締役の宮本活秀氏は語る。
前例のない取り組みは困難の連続だった。それでも、全てを建設機械メーカーに任せるのではなく自社で行うという路線を貫いたのは、ノウハウを蓄積することで、ICT施工が会社の強みになると考えたからだ。ドローンでの測量やCAD操作からはじめて、実用的な3次元データ取得や点群処理ができるようになり、なんとか軌道に乗ったのは2016年半ばだった。
「測量に入ることもなく丁張もないので、最初のバケットを入れるときは正直心配でした。しかし、きれいな“R”を描いたのり面を見たとき、これはすごいと感じました」と宮本氏は回想する。
独自路線のICT施工をバックアップ
現在、宮本組によるICT施工導入現場は年間約10カ所。メガソーラーや高速道路建設の造成工事がメインだ。日立建機のマシンコントロール対応の油圧ショベルZX200Xを7台所有している。
「自社で設計データを作成し、基地局も自分たちで設置。データを入れた機械を現場に持ち込んで施工しています。日立建機とは、機械を使いながら要望を出したり改善してもらったりと、協力してICT施工の技術を磨いています」とICT施工課の目抜義晴課長は説明する。
先行投資が実を結び、これらのICT施工の取り組みが評価され、顧客各社からの受注につながっているという。
「現場は広域にわたりますが、日立建機は丁寧にフォローしてくれるのがありがたいですね。先日も、山奥のダム工事の現場で、基地局の機械が夕方4時に故障したことがありました。通常ならば翌朝からの対応になり、昼まで作業ができないところですが、スピーディーに当日中に付け替えてもらえました」(目抜氏)
コスト削減に加え安全性も向上
ICT施工によって、業界が抱える課題の解決も進んでいる。
「これまで、のり面成形については熟練オペレータの感覚に頼る部分が大きかったのですが、今ではある程度の技量を身につければ、若手にも安心して任せられるようになりました」(目抜氏)
ICT建機は半自動制御で高精度なため、バケットの入り方などを機械から降りて度々チェックすることが不要となった。ロスタイムがなくなり作業は大幅に効率化。もちろん、機械から降車することによる事故のリスクや、危険な場所で測量するリスクも大幅に減少し、ICT施工の安全面での貢献は大きい。
「日立建機とはICT施工でもいい関係を築いています。将来的にはミニショベルなど、ICT施工の対応機種を増やしてもらい、土工全てにおいての完結型サポートを期待しています。さらに、官公庁に提出する電子データをICTでパッケージ化できるようになれば、土木建築業界にとって大きな進歩になることでしょう」(宮本氏)