我々は米州の独自展開と資本構成の変化を成し遂げ、さらに企業価値を上げて成長するチャンスを迎えています。Kenkijinがグループアイデンティティを実践した結果、「日立建機と仕事をして良かった!」と言われる企業をめざします。
代表執行役 執行役会長兼取締役 CEO
平野 耕太郎
日立建機グループのビジョンは「豊かな大地、豊かな街を未来へ 安全で持続可能な社会の実現に貢献します」であり、非常にシンプルな言葉ですが、成し遂げるためにさまざまな取り組みが必要です。我々の基本的な考え方は、代理店を含む「お客さま本位」にあり、「我々本位」 ではありません。機械が稼働する現場にはさまざまなビジネスのヒン トが隠されており、課題が横たわっています。ただ単に性能や品質の良い機械をお届けするだけでなく、それを使っていただく中でお客さまに満足していただくことが必要です。そして、お客さまがメンテナンスの行き届いた我々の機械を駆使し、道路や下水道などのインフラを造ることでそこに住む人々の生活が豊かになり、またひとたび大きな災害が起これば、復興に取り組む。そのことで「豊かな大地、豊かな街を未来へ」の実現に進んでいきます。
お客さまの課題は、環境問題も含めて今後も変化が予想されます。我々は機械の性能を環境に優しくするだけにとどまらず、「現場での機械稼働をもっと効率化できないか」「機械の状態を維持したままで、10年ではなくて15年使い続けられないか」、さらに「15年使った機械から部品を再生できないか」などお客さまの課題変化にアンテナをはり巡らせて、対応する必要があります。ここで信頼を獲得するためには、我々がメーカーを超えた存在にならなければいけません。
日立建機グループは米州の独自展開と資本構成の変化を成し遂げて、さらにグローバルで成長するチャンスを迎えています。我々は、コーポレートステートメントであるReliable Solutions(私たちは、お客さまの課題をともに解決する、身近で頼りになるパートナーです)をグローバル全従業員でさらに浸透させることが重要です。
こうした成長を創り出すのは、従業員一人ひとりのモチベーションに掛かっています。我々は「お客さま本位」のスタンスでグループ全体が同じ方向に向かい、成長戦略である「革新的ソリューション」を提供できる会社をめざしていきます。そして、最後に「日立建機(で)と仕事をしていて良かった。楽しかった。充実していた」と言っても らえるような会社になるよう、挑戦しています。
日立建機の歴史の中で、会長と社長のポジションはありましたが、 CEOとCOOの体制になったのは初めてのことです。従業員には予め2人の役割を決めて、会議体もどちらが中心になるのかなど、明確化しました。CEOの主な役割は、アイデンティティの浸透、企業経営の立案、人財の強化になります。それぞれが始まったばかりで、成果が十分出たとは言えず、取り組むべきことが山積みです。
我々がグループアイデンティティをもとにして、お客さまにとってメーカーを超えた存在になるため、日立建機グループが今後において「変わるべきこと」と「変わってはいけないこと」があると思っています。そして先崎社長が「変わるべきこと」を実務面で推進し ています。
「変わるべきこと」の1つ目は、経営のスピード感を上げることです。資本構成が変化し、日立グループから離れて独自色が強まることで、我々がフリーハンドでできる経営部分が増えました。これまでは投資やM&Aも社内で決めたことを親会社に相談し、決定まで時間がかかっていました。新しい株主との調整も必要ですが、いろいろな経営判断が我々の意志決定で速やかに行えるようになりました。先崎社長が就任した2023年度以降、お客さまの求めるソリューショ ンを提供できる会社になるようさらなる変革をめざしており、役割分担としてCOOに事業推進を任せています。
2つ目は、お客さまの意識変化への対応です。今までの建機・マイニング事業は、性能や品質に優れた製品を供給することが我々メーカーに求められた使命でした。しかし、お客さまの課題やニーズが変化しており、性能や品質の優れた製品を供給するのはもちろんのこと、お客さまの課題~現場の安全、生産性の向上、燃料費などのコスト削減、資産の適正化、環境対応などに応えられるメーカーが生き残れる時代を迎えています。そのような事業環境においてお客さまに認められるポイントは、機械を「納めた後」が重要となります。一つの施策として、我々は 2017年度にバリューチェーン事業(部品・サービス、レンタル、中古車、再生)を改めて定義し直し、中期経営計画にて深化・強化を図ってきました。バリューチェーン事業の売上収益を重視し、新車販売を中心としたビジネスモデルからの変革において、社内の発想転換に6~7年を要しました。また昨今では、工事現場の環境対応が強く意識される中、バリューチェーン事業深化の先にはサーキュラーエコノミーへの対応が求められると思ってい ます。我々が重要視するのは、販売台数に基づいた市場シェアでなく、市場での稼働台数です。つまり、現在グローバルで稼働している約30万台の機械のメンテナンスをしっかりと行い寿命を延ばすことが、将来の経済価値につながります。お客さまに認められることはイコー ル、社会課題に応えられることと認識しています。米州の独自展開を始めたことで、これを我々が世界中で展開できる意義は大きいと思います。
建設機械のオペレータは慢性的に人手不足の状態が続いています。また機械の機構も複雑になり、自動運転機能や遠隔運転支援装置などを搭載することで価格も高額になり、投資額が大きく、使いこなせるか不安を持つお客さまも多く見られます。こうした変化の中でお客さまが求めるのは、資産(機械)を効率的に使いこなすことです。今後は、例えば機械10台を保有しているお客さまに対して、新車販売だけではなく、レンタルや中古車の買い取りなど、お客さまの工事内容に合った機械の保有を提案する、まさに資産管理までをメー カーが行うなど、ニーズが多様化することも予想されます。
一方で「変わってはいけないこと」の強化も私の重要な役割と考えています。それは、2022年に新たに策定したグループアイデンティ ティをもとに、日立建機グループの全従業員が「豊かな大地、豊かな街を未来へ」というビジョンをしっかり認識することです。お客さまが我々の機械を使用して道路を作り、水道管を埋設することで、その地域の発展や住環境の整備に役立っています。ひとたび大きな災害が起きれば、その復旧にも機械の力が必要です。我々の機械が そのような役に立っていることに従業員は誇りを持つと同時に、お客さまの課題に十分に貢献できる製品とバリューチェーンを提供する必要があります。まさしく、これがReliable Solutionsです。
なかでも私は、新しく市場展開を始めた米州でグループアイデンティティの浸透を強化する必要があると考えています。米州は従業員が急激に増えるとともに多様化も進んでおり、新しい代理店も多く存在します。アイデンティティは我々だけが認識するものではな く、その市場のお客さまや代理店と共有することが大事です。