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 世界それぞれの地域で豊かな世界を作ることと、GDPの総和には一定の関係性があります。長期的なスパンにおいて世界各地で豊かな街を創ることを推進するため、建設機械の需要はこれからも増大が予想されます。需要は一時的に減少する時期があり、2024年度もその可能性が高いと予想していますが、建設機械業界は全体として長期的な成長産業です。  それと同時に、サステナブルな成長のためには限りある資源を有効活用することが必要です。ここに、我々の存在意義があり、ビジネスチャンスがあると考えます。我々は建設機械というハードを使いながら、お客さまの課題の中で環境対応を含めたカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現へ貢献していきます。この展開にはDXとアライアンスが重要であり、当社グループは、その知見の獲得に努めてまいります。  我々はお客さまの車体稼働年数を1.5倍にするという、一見メーカーの利益に逆行する方針を打ち出しました。これは長期的な成長を睨みながら、お客さまへソリューションを提供する、地球環境的なソリューションとしてのサーキュラーエコノミーを打ち出す当社の戦略として、お客さまに受け入れられることと確信しています。稼働台数から収益が上がってくるもの、それがバリューチェーン事業です。稼働台数を増やすために新車の販売が必要ですが、よりバリューチェーンを重視した事業展開を図ることで、稼働台数と関与できる捕捉率を引き上げます。毎年の新車販売に加えて、市場で稼働する車体稼働年数を1.5倍にすると部品販売やオーバーホールなどのターゲットとなる稼働台数も1.5倍と利益の源泉が増えるため、この状況をめざしていきます。これは、サーキュラーエコノミーにもつながります。また、純正部品でメンテナンスされる自社レンタルを行うことで、高い中古価格の維持が可能になります。バリューチェーンの各プロセスで高い捕捉率が獲得できれば、業績が安定し、ブランディング効果から新車にもプラスになります。新車の需要環境は景気に影響されやすいためバリューチェーン事業を強化することが大事です。  当社のサステナビリティ活動は、ビジョンである「豊かな大地、豊かな街を未来へ 安全で持続可能な社会の実現に貢献します」への寄与が最も重要です。外部環境の変化に伴う主なリスクと機会のもと、マテリアリティの実現をめざしています。例えば、「気候変動に挑む製品・技術開発」は建設機械を電動化することなどがあり、「資源循環型ビジネスへの転換」は再生事業を含むバリューチェーン事業を拡大しながら、車体稼働年数を延ばすと同時にサーキュラーエコノミーに貢献することなどです。「グローバルガバナンスの強化」はグローバルにサプライチェーンを高度化して、ここで人財活用することにより、地域社会へ貢献することです。すべてのマテリアリティが我々のビジョンと深くつながっていますが、ここでは世界共通の目標であるSDGsのもと、すべてのステークホルダーとの価値協創が必要です。  従業員とのエンゲージメントは個人個人の活動や成果がどのようにお客さまの課題解決につながっているのか、お客さまの不満だけでなく喜びの声をどう伝えるのか、などが重要と考えています。これが、ソリューションプロバイダーの考え方につながります。  お客さまとの関係は、上下関係ではありません。我々は、お客さまにとって課題を解決してくれる、無くてはならない存在になり、お客さまと日立建機グループがお互いを必要とする関係になることが究極のあるべき姿です。代理店や取引先を含むパートナー企業も同様で、協創関係が実現できることです。協創関係の中で、お互いの企業価値が高まっていくことが重要であり、その姿を理想として追い求めます。なお、調達パートナーもお客さまと考え方は同じです。  地域社会については、企業活動には地域の理解と協力が必要です。多くの人財が必要な各地域の販売、サービス、開発、生産、それぞれの拠点において活躍しています。各メンバーにはそれぞれの価値観、会社人生を通じて実現したい個人目標があります。そのベースは家庭であり、家庭を取り巻く地域環境です。労働の対価としての報酬を得るだけでなく、企業活動を通して本人が成長し、家庭がより豊かになり、ひいては地域環境に貢献できる、そのようなステークホルダーとの関係を創っていきたいと思います。  企業の源泉はいつの時代も人財です。未来世代においてもそれは変わりません。AIやDXを使いこなして付加価値を上げるのも、お客さまの課題に共感し、寄り添って半歩先の解決策を作り上げるのも、一人ひとりのパワーです。地域社会に認められる会社であるからこそ、そのような素晴らしい人財が集まる、そんな会社にしていきます。特に、高校生や大学生などの未来世代に当社の活動を理解してもらい、近い将来にKenkijinになりたいと思っていただける会社にしたいと考えます。その理解を得る行動として、工場や会社のオープンデーを作る、出張授業をする、インターンを受け入れる、そのような活動をしていきます。

 IR活動などを通して、私が株主・投資家の声を伺うと、現中計で掲げたKPIを評価いただいていると感じます。現中計の策定時、深い議論の中でKPIを設定しましたが、その内容が適切であったと自信を深めています。提示したKPIの達成に全社一丸となって向かう中、その施策の一つがビジネスユニット制の進化です。各ビジネスユニットが顧客の支持としての売上収益を求めて、同時に連結ベースで調整後の営業利益を最大化する施策を展開する事が必要です。今年度からビジネスユニットごとの ROICを評価することをはじめ、目標値を定めながら各施策と連動させることに挑戦しています。  2023年3月に東京証券取引所から「資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応」が発表されて、自社の株価に対する議論が社内で増えています。私は現在の株価に関して満足していません。PERやPBRも相対的に低い上、株主や投資家との対話において、我々への期待値はもっと高いところにあると感じています。中長期的に、我々への期待値を高めていただくには、成長ストーリーを明確化して、対話・エンゲージメントで伝える必要があります。企業価値の源泉をどこに置こうとしているのか、顧客価値のどこを本質的に高めようとしているのか、それを明確にご判断いただいた先に、当社へ投資していただけるということです。同時に、説明責任と結果責任を果たすことが必要だと認識しています。これらの活動を通して、当社全体の資本効率向上に努めることで、株主・投資家に認められる企業となり、さらなる株価を意識した経営につなげたいと思います。