品質管理
品質管理についての考え方と体制
日立建機グループは創業以来、日立製作所の「落穂拾いの精神*」を軸にした顧客第一主義の品質保証体制の構築に努めています。
1995年9月にISO9001の認証を取得し、土浦工場の品質方針と品質マネジメントシステムを確立しました。また、日立建機グループの品質保証を推進する統括組織として、マザー工場である土浦工場の品質保証本部が、グループ各社の品質保証部門に対して実質的な情報共有、指導、啓発を行いグループ全体の品質保証体制の強化を図ってきました。
2016年4月には「グローバル品質保証推進グループ」を発足させ(現在は品質管理戦略部グローバルサポートグループ)、海外グループ各社における品質保証業務の標準化に向けての支援体制を一層強化しました。ISO9001の認証については、2016年10月に、規格改正された2015版を取得更新しています。さらに2019年4月からは、これまで開発生産部門の傘下にあった品質保証本部を、社長直轄の組織としました。品質保証に対するガバナンスをさらに強化することを目的としています。
品質保証本部が、国内外すべてのグループ会社の品質保証業務を統括することで、グループ全体の品質レベルの標準化・向上に取り組み、世界同一品質の実現をめざしています。
お客さまからのご意見、ご要望や、営業・サービス現場からの声、製品に関する不具合情報などは、各ビジネスユニットのサービス関連部門や各グループ会社の品質保証部門を通して品質保証本部の品質保証統括部に集約されます。これらの情報は、月に1度、執行役社長臨席で開催される製品改善会議に報告され、内在する原因を追究した上で、再発防止対策を検討・立案し、全製品に水平展開しています。
*ミレーの絵画「落穂拾い」になぞらえ、発生した事故や不具合を1つひとつ拾って、失敗から得られる教訓を学び再発防止の徹底を図る考え方。日立建機グループでは、失敗を生かし、学ぶことを通して、技術を発展させる日立伝統の「技術の進化方法」である「落穂拾い」の活動に取り組んでいます。2023年度は、日立建機に加え、国内グループ会社5社、海外グループ会社9社で実施しました。
製品の安全性確保に関する指針
優れた自主技術・製品の開発を通じて、社会資本の充実、民生向上に寄与していくことを基本理念とし、国内外のニーズに的確に即応する安全な製品および信頼される技術をお客さまに提供するよう努めます。
製品安全確保の取り組み
日立建機グループでは、製品安全の確保のため、各部門において、さまざまな取り組みを推進しています。
設計部門
- 公的な安全基準、工業会の安全基準の遵守
- 国内外の安全水準把握とそれらを上回る水準の確保
- 製品安全設計基準の維持向上
- 潜在する危険性の摘出と評価
- 仕様外使用、予見可能な誤使用、故障に対する安全性
- 据付、保守点検、運搬、いたずらなど、運転以外での安全性
- 予見した危険性に対する、設計面での本質的安全確保
- 残った危険性に対する警告ラベル、取扱説明書などで危険の存在、回避方法の明示
- 製品安全上必要な部品の指定
- デザインレビュー、PS(製品安全)チェックシートによる安全性評価
品質保証部門
- 公的な安全基準、工業会の安全基準による検査、試験、評価の実施と記録の保存
- 製品安全に関する検査、試験基準の維持向上
- 耐久試験などの各種信頼性試験による危険要因の摘出と評価
- 運転支援装置や衝突被害軽減アシスト装置などの機能安全検証
- 製品安全上必要な指定部品に対する検査方法の決定と実施
- 取扱説明書や警告表示内容が十分かつ具体的、実用的であることの検証と評価
- 納入後も含めた製品や部品のトレーサビリティ(追跡可能性)の確保
- 購入先、外注先に対する製品安全の観点からの管理指導
- 製品安全に関する市場不具合情報の入手と関連部署への展開と製品改善の推進
- 各種検査/試験のDX化(自動判定化)による品質コンプライアンスの強化
- DX化による業務品質と効率向上および取引先との検査情報の共有
- 二酸化炭素(CO2)排出の抑制(SDGs達成への貢献)
- (1)試験ベンチでの動力回生による消費電力削減
- (2)恒温試験棟の冷凍機効率向上による消費電力削減
- 顧客満足度調査の実施
- 品質コンプライアンス遵守に関する各種活動推進(監査、教育他)
製造部門
- 作業基準書、作業指示書に製造上の製品安全に必要な項目の明示
- 製造変更点に対する製品安全面からの検討
- 製品安全性に関わる計測器、製造設備の管理保全
- 製造工程内での品質管理の徹底とトレーサビリティの確保
- 作業員に対する製品安全に関する意識高揚
- 外注先に対する製品安全の観点からの管理指導
調達部門
- 取引先における調達、設計、製造、検査、設備などに対する指導の取りまとめ
- 取引先に対する製品安全確保の観点から必要な措置の明示と要求
- 購買品の欠陥により製造物責任問題が生じた場合の責任分担を契約にて明示
生産管理部門
- 保管・輸送中の製品への影響を特定し、工場出荷時と同じ品質をお客さまに保証
- 梱包および出荷形態に対して、輸送中の取り扱いにおける危険防止の考慮
- 輸送における法規制の遵守
万が一製品に、安全性に関わる欠陥が判明した場合には、以下の対策を講じます。
- 品質保証部門は、製品を出荷または引き渡し後に製品の安全上の欠陥が判明した場合、対策責任部署と連絡を取り、お客さまに対して危険の回避方法を知らせるとともに、在庫品、納入品を含めた当該製品の修理回収など、適切な処置を講じます。
- 品質保証部門は、製品の安全性に関わる不具合が市場で発生した場合、対策責任部署と共同でその原因究明を行うと同時に、法務部門、サービス部門などの関連部署と連携を取り、被害の拡大および類似事故の発生を防止する措置を講じます。
製品安全の管理体制(全社PS委員会)
日立建機グループは、製品安全の管理体制として全社PS委員会を設置し、より安全で信頼性の高い製品をお客さまに提供する活動を推進しています。
全社PS委員会の体制
委員長:品質保証本部長
委員 :設計(各製品ごと)、製造、生産技術、品質保証、ドキュメント作成部門、法務、サービス部門および各グループ会社より1名
活動内容
- 定例会の開催
- 委員会組織下のプロジェクト、分科会による活動報告(火災防止、安全運転教育など)
- 社内外のPS/PL(製造物責任)情報の共有
- 各製品および全製品に共通したPS/PL問題の審議
- サービス部門から報告された安全に関わる不具合情報への対策方針の承認
- 製品安全に関する規則の制定見直し
- 各生産拠点の各部署(設計・製造・品質保証)に対するPS診断(製品安全業務監査)の実施
品質管理に関する従業員教育
世界各地のグループ会社における品質保証レベルの均一化を図ることを目的に、さまざまな従業員教育を実施しています。
「品質管理講座(初級&中級)」、「信頼性工学講座」、「PS/PL講座」といった品質管理に関する一般的な知識を身に付ける教育講座をはじめ、海外グループ会社から研修生を受け入れ、土浦工場の品質管理業務を学ぶ「グローバル品証技術者育成プログラム」では、これまで39名の修了生を送り出し、2024年度は7名*の研修生が1~3年の期間で土浦工場の品質保証各部門で研修中です。
*ここ数年はコロナ禍で実習生の受け入れを中止していましたが、2022年度下期から再開しています。
また、2008年から行っている「グローバルモノづくり診断」では、土浦工場から組立・機械加工・製缶・塗装・品質管理の各診断員が、全世界で生産を行っている13のグループ会社をすべて訪れ、診断を通して各社のモノづくり技能や品質管理体制の弱点を「見える化」し、その改善支援を通じて、世界同一品質の実現をめざします。2021年度に続き2022年度も新型コロナウイルス感染防止のため海外への出張が制限されていたことから、生産現場の診断を遠隔で実施しました。2023年度からは、品質コンプライアンス監査を主軸に実施し、その中で弱点があれば、分野や項目を絞ってグローバルモノづくり診断をスポットで実施する予定です。
各分野のシニアや現役のエキスパートが、業務遂行の考え方や失敗体験、技術のノウハウなどを、現役最前線の技術者に伝承する「かたり部講座」では、2023年度は、本社やグループ会社を含め46講座を開催し546名が受講しました(WEB聴講含む)。2024年度も、新講師や新講座を設けて約80講座の開催を予定しています。
また、海外グループ会社の品質管理体制をサポートするグローバル品質管理戦略部グローバルサポートグループでは「品質情報ナビゲーション」という情報リンクを作り、英訳した品質管理の教育資料、土浦工場の品質管理プロセスや、品質管理業務の詳細にわたるマニュアルや記録様式を収集・公開し、海外グループ会社の品質保証部門スタッフがそれらを容易に閲覧できるようにしています。2020年度からは土浦工場から情報を発信するだけでなく、グループ会社からも情報を提供、公開できる「グローバルQA情報管理システム」というコミュニケーションチャンネルを構築しました。グループ会社の優れた品質保証活動を共有し、グループ全体の品質レベルの標準化・向上に取り組んでいます。
また、2019年度から品質コンプライアンスに関するe-ラーニングを国内外の生産工場の設計、製造、品質保証部門を中心に実施しています。今後もコンテンツの内容を国内外グループ会社と共有し、日立建機グループとして、品質コンプライアンス遵守のさらなる徹底を図っていきます。
製品情報の適宜開示
お客さまに製品やサービスに関する情報を速やかに提供することは、お客さまとの信頼性向上に欠かせません。そのため、日立建機グループはWebサイトなどで、さまざまな媒体を通じた情報発信を行うとともに、お客さまへのリコールに関する情報の周知も徹底しています。
例えば、公道を走行するお客さまの車両系製品の品質・安全を確保するために、販売後の不具合情報の収集・調査・分析を行い、その不具合が保安基準に不適合あるいは不適合の恐れがあると判断した場合、ただちに国土交通省にリコールを届け出て無償にて修理を行うなど、道路運送車両法で定められたリコール制度を遵守する体制を運用しています。
また、製品の故障を未然に防ぐ予防保全やアフターケア、サービスキャンペーン情報なども随時、正確に提供していきます。